夜も更けて参りました。こんばんは、松下です。
記事があんまり隠れっぱなしもさみしいので、たまには全年齢対象のレビューもやってみようと思います。
今回レビュー対象にいたしますのは、
ライトノベルと聞いて当ブログ一回目のTS/TSFレビューを想起した方には警戒しないでいただきたいのですが、こちらは戦闘破壊学園ダンゲロスのような命が軽い方のライトノベルではなく、気軽に読める方のライトノベルです。軽い気持ちで行ってみましょう。
あ、そうそう、本日よりレビュー記事概要ページに全レビュー記事の評点順一覧、TS/TSF記事概要ページにTS/TSFレビュー記事の評点順一覧を掲載してあります。宜しければご利用ください。
とは言っても、まだTS/TSF以外のもののレビューをしていないので、現段階では「全レビュー一覧=TS/TSFレビュー一覧」なのですが。
基本情報
作品概要 | |
---|---|
作品名 | 魔王様げ~む! |
著作 | |
販売元 | 学研パブリッシング |
レーベル | メガミ文庫 |
作品形式 | 文芸、小説、ライトノベル |
流通形態 | 商業、現物販売 |
原画 | |
シナリオ | |
刊行数 | 現在2回戦まで刊行 |
初出 | 2009年11月 |
対象年齢 | 全年齢対象 |
TSF要素概要 | |
TSキャラの役 | 主人公、レギュラー、準レギュラー、敵、端役、モブ |
変化の方向 | 女性化 |
変化の方法 | 単体変化 |
変化の持続性 | 非可逆 |
変化後の人格 | 元のまま |
視点 | 同一型、対面型 |
組み合わせ | 身体的異性、身体的百合 |
復元願望 | 必然、強硬、中庸、希薄 |
性的要素概要 | |
状況 | セクハラ、ハーレム、入浴 |
行為 | 抱きつき、乳揉み、尻揉み |
衣装 | 全裸、半裸、下着、メイド服 |
性対象概要 | |
種別 | 人間 |
性別 | 女、TS |
立場 | 部下、敵、勇者、王侯貴族 |
容姿年齢 | 若い |
背丈 | 普通 |
体型 | 標準 |
胸 | 美乳、巨乳 |
尻 | 美尻 |
人格 | ノーマル、男前、反抗的、前向き、真面目、貧乏性 |
経験 | 処女 |
相手概要 | |
種別 | 人型異種族 |
性別 | 男 |
名前 | あり |
顔 | あり |
容貌 | 美形 |
人格 | 変態・淫乱、男前、前向き、不真面目、情熱的、温和、気障、貧乏性 |
物語概要
貧乏貴族の三男で槍さばきだけが自慢のレイモンド・スピアマンは、家の事情から厄介払いも兼ねて勇者として魔王討伐に向かうことになる。しかし力及ばず倒れたレイモンドは魔法で女に変身させられた上、メイドのレモンとしてその魔王に仕えることになってしまうのであった。
ライトノベルらしいストレスフリーの作風
本作品は第1回メガミノベル大賞の銀賞受賞作同タイトルを改稿して出版されたもので、
最高に面白いと褒めちぎるほど面白いわけではないものの、キャラや展開に不愉快に感じる部分がほとんどなく、最初から最後まで明るく楽しくほんわか気分で読めるのは特筆すべき長所だと思います。言うなればライトノベルの見本のような作風ですね。
イラスト担当はぷちえう゛ぁ~EVANGELION@SCHOOL~で作画を担当されている
当初続刊については全く触れられていませんでしたが、この作風がウケて結構売れたのか、約半年後の2010年5月25日に第2巻となる「魔王様げ~む! 2回戦」が刊行されるに至りました。
明るく前向きなキャラクター
近年増えている気がする「勇者と魔王の物語」設定で、丁度CROWDの世界を征服するための、3つの方法と真逆の立場になりますね。あちらは魔王が質素で勇者が超強く、こちらは勇者が質素で魔王が超強い。一方で、魔王が「魔界の王」であって別段悪しき存在ではない、というところはほぼ同じです。
主人公レイモンド・スピアマン改めメイドのレモン。このレモンのキャラが案外よく練られており、貴族にもかかわらず肩身の狭い三男で贅沢に縁のない貧乏キャラという設定が十分活かされています。
レモンは生きることの厳しさを知っているせいか生きることに前向きで、望まず女にされたあとでも「己の境遇を嘆く前に、まずは拾った命で何ができるか考えよう」と割り切り、いつか魔王を倒して男に戻ることを夢見て、慣れない体に戸惑いながらも腐らず真面目にメイド職をこなしていきます。そういった姿勢に非常に好感が持てます。TSFは主人公に魅力があってナンボですので、このあたりは非常に重要です。加えて、味覚音痴を超えた味覚貧乏ともいうべき設定もナイスだと思いました。特に私のような貧乏キャラ好きにはたまらんものがあります。
また、男時代のレイモンドの不遇ぶりはある意味涙を誘うほどなのですが、女になってメイド職についてからも真面目に頑張って、その仕事ぶりを周囲に評価されて、それまでにない充実感を感じるレモンの姿には、何やら感慨深いものがあります。やはりどう考えても、レモンは無理に家に帰って冷や飯食わされるより、このまま魔王城で働いた方がよっぽど幸せになれると思います。
その分、2回戦で真面目に仕事しないラミーレスに自分の仕事を邪魔された時のイライラは痛いほどよく分かります。
対する魔王ディンゴも「最強無敵の女好き」という基本設定が徹底しており、キャラがぶれません。
自分の贅沢には興味がないので魔王のくせに善政をしいていて、魔法の平和利用で民の生活を豊かにし、目指す野望は全世界ハーレム化。有能な女を次々スカウトして勢力を強化しつつ、たとえ自分の命を狙った男であっても女になって自分に仕えるなら全てを水に流して愛をそそぎ、愛するレモンといちゃいちゃするためなら面倒な執務も頑張って片付け、味覚貧乏のレモンが作った殺人料理ですら一口ごとに気絶しながら気合で平らげる。それを止めようとしたレモンに対して曰く、「何を言う! 愛する女が俺のために作ってくれた手料理だぞ! 丸ごと綺麗に平らげずして何が男かァッ!」
これほどの男なら、100人のメイドに慕われるという無茶な設定にも積極的に納得したくなるというものです。
本作には名前のある男キャラはほんの数人しか登場しないため、主人公のモテ描写は控えめかと思いきや、100人のメイドに慕われる魔王ディンゴが主人公にベタ惚れなので、それだけでも十分とも言えます。まあ独り占めは嫉妬という大きなリスクを抱えてしまうのが難点ですが。
戦闘描写はヌルめ
戦闘になるとみんな即死級の攻撃をばんばん繰り出しているように見えますが、基本的に死人が出ません。
例えば冒頭のレイモンド対近衛メイド隊の戦闘では、結果的に死人が出なかっただけで、レイモンドは隙だらけの幼女[1] を槍で突き殺そうとしてましたので、ポリシーで殺生厳禁を守っているわけでもなさそうです。
つまり基本的には両者本気で殺そうと思って戦ってるのに全く死人が出ないという不自然な状況になっています。
ただまあ死人が出ると折角の楽しい空気がぶち壊しですので、いかんせん誤魔化し気味とはいえ、結果的にこの方向性でよかったのかもしれません。
男の娘…?
2回戦のオビから急にこの「男の娘」というフレーズが踊り始めたんですが、実際はこの作品中に一般的な意味の男の娘(=女装少年)は全く登場しません。どうも「元男のTS娘」のことを男の娘と表現しているようで、一般的な意味からかけ離れているので紛らわしいことこの上ありません。
一般的な意味の男の娘好きの人は、読んでガッカリしないようにご注意ください。
総評
最初に述べました通り、最高傑作ともてはやすほどではないものの、気軽にストレスなくスラスラ読めるというライトノベルの長所に特化したような作品です。
したがってあんまり極端に高い点数をつけられる類のものではなく、今回は以下の評点を奉納いたします。
これまでにレビューしたものと比べるとあまり点数が高くはないので念のためフォローしておきますが、当レビューでは500点以上を境に「面白い」と区分しています。つまり600点以上をマークしている魔王様げ~むが面白くないなんてことは全然なくて、これまで紹介したもののレベルが高すぎるだけです。
- ※近衛メイド隊の炎の魔術師エルビラ。幼女だけどかなり強い [↩]
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