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松下響の天輪返し

TS/TSFレビュー : らんま1/2

夜も更けて参りました。こんばんは、松下です。
今回はTSFレビューをやるには避けて通れないTSFの最大手、表の立て看板とも言うべき「らんま1/2」についてレビューをしたいと思います。
とはいえ、最大手と言われるだけあってメディア進出の幅が広く、原作漫画から始まってTVアニメシリーズ、劇場版、OVA、ゲームまであります。流石に全部網羅出来てはおりませんが、真っ先にはまったTVシリーズを中心としてあれこれ触れたいと思います。

基本情報

  • らんま1/2
作品概要
作品名らんま1/2
著作高橋留美子
販売元小学館ポニーキャニオン
レーベル少年サンデーコミックス
作品形式ゲーム、映像、漫画、アニメーション、TVシリーズ、映画、OVA
流通形態商業放送現物販売
放送局フジテレビ系列
原作高橋留美子
製作多賀英典、伊地智啓
制作フジテレビキティ・フィルム
動画制作スタジオディーン
企画落合茂一
プロデューサー中尾嘉伸、松下洋子、久保真、石原隆・金田耕司、 中川順平、長谷川洋
監督芝山努、澤井幸次、西村純二
人物デザイン中嶋敦子
作画監督中嶋敦子、後藤真砂子、遠藤麻未、工藤柾輝、数井浩子、杉山東夜美、井上容子、響良い子、磯野智、白鳥あずさ、はしもとかつみ、工藤裕加、鰻原妙一郎、斉藤哲人、山根理宏
シリーズD望月智充
シリーズ構成浦沢義雄、井上敏樹、戸田博史、井上敏樹、柳川茂
音楽森英治、川井憲次、松浦晃久
撮影監督吉田光伸
録音監督斯波重治
美術監督三浦智
美術設定佐藤正浩
色彩設定田高浩一
編集坂本雅紀、片山理恵、森田清次
出演
早乙女乱馬 :山口勝平
早乙女らんま :林原めぐみ
天道あかね :日高のり子
天道なびき :高山みなみ
天道かすみ :井上喜久子
天道早雲 :大林隆介
早乙女玄馬 :緒方賢一
九能帯刀 :鈴置洋孝
響良牙 :山寺宏一
久遠寺右京 :鶴ひろみ
シャンプー :佐久間レイ
ムース :関俊彦
九能小太刀 :島津冴子
八宝斎 :永井一郎
コロン :小林優子
刊行数原作漫画38巻、TV第1期18話、TV第2期143話、OVA21話、劇場版3編、ゲーム14本
初出1987年
対象年齢全年齢対象
TSF要素概要
TSキャラの役主人公
変化の方向女性化
変化の方法単体変化
変化の持続性突発可逆
変化後の人格元のまま
視点同一型対面型
組み合わせ身体的異性精神的異性
復元願望必然
性的要素概要
状況窃盗盗撮撮影セクハラ痴漢入浴露出
行為抱きつき接吻乳揉みぱふぱふ尻撫で
器具触手
衣装全裸半裸下着水着ワンピース水着バニースーツ学生服
性対象概要
種別人間
性別TS
容姿年齢若い
背丈低身長
体型標準
美乳巨乳
美尻
人格ノーマルナルシスト男前反抗的熱血負けず嫌い高飛車外道
経験処女

物語概要

無差別格闘早乙女流の二代目、早乙女 乱馬(さおとめ らんま)は、武者修行で父とともに中国呪泉郷(チョウチュアンシアン)に寄った際、娘溺泉(ニャンニーチュアン)に転落してしまい、それ以来、水をかぶると女になり、お湯をかぶると元に戻るという変身体質になってしまった。一方父の早乙女 玄馬(さおとめ げんま)熊猫溺泉(シュンマオニーチュアン)に転落したことでパンダに変身するようになってしまった。
その後、中国での修業を終えた二人は日本に帰ったが、玄馬は乱馬をその許嫁である天道家の娘に会わせるため強引に天道道場へと連れていく。生憎天候が雨だったため二人はパンダと女の子という姿で天道道場を訪れるはめになり、色々と誤解を生じたものの、結局許嫁の件は年齢が同じという安易な理由で当人同士が納得しないまま三女の天道あかねに決まってしまい、乱馬はあかねと同じ学校に通うことになったのだった。

…ていうか、これめちゃめちゃ有名なんで、あらすじ要りませんよね。

その偉大な実績

原作漫画は週刊少年サンデーに長期連載して全38巻を刊行、更にTVアニメとして第1期18話、第2期(熱闘編)143話という長期にわたって放映された人気作品で、OVA版や劇場版も制作され、ゲーム化本数は貫禄の14本、近頃はパチンコにさえなっています。TSF作品としてそのメディア露出は他に並ぶものが無く、ゆえに最大手、立て看板として万人に知られています。TSFという言葉を知らない人でもらんま1/2は知っていることが多いはず。
そしてこの作品が多くの人の目に触れたことで、多数の潜在的TSF好きの起動スイッチを押してしまったことは疑う余地が無いでしょう。

画期的変身システム

この作品の肝となるのは、呪泉郷の存在。つまりは「水をかぶると変身し、お湯をかぶると元に戻る」という誰にでもわかりやすい変身システムでしょう。しかも変身の要因が外部トリガーなので、水やお湯さえあれば本人の意志で変身できる一方、水は何処にでもあるので、突発的な変身事故がいくらでも起こり得ます。変身コメディの要素としては一つの発明とも言っていいレベルの、画期的発想だと思います。

ただ、私のように早乙女らんま(女)に極端に肩入れしている真性のTSF嗜好の人間からしますと、本人の意向も含めて簡単に元に戻ってしまうということはらんま君の出番が減るというデメリットになるわけで、らんま君の出番が短い、或いは全くない話は何とも言えない肩透かし感を感じたものでした。
逆に総身猫舌(そうしんマンツオ)のツボや止水桶(チースイトン)で男に戻れなくなってしまうとらんま君の男女比率が強制的に女100%になりますので、そんな展開では瞬きも忘れて見入っていたものです。
ちなみにこれは本編を見る前に見分ける方法があって、最初にエンディングから見てエンディングクレジットに林原めぐみさんの名前が無かったらアウト、山口勝平さんの名前が無かったら当たり…かもしれません。いやらんま君がずっと女でも話自体が面白いかどうかは分かりませんし、男女両形態出てて面白い話ももちろんあるわけで。

魅力的なキャラクターと大衆向けの限界

今更宣言するまでも無いですが、私がこの作品で一番好きなキャラは早乙女らんま(女)です。この作品でどころか、他の作品を合わせて考えてもトップクラスに好きなキャラです。元が男だというのに、特にアニメ版の絵柄では、あの愛くるしさと言ったらたまらんものがあります。ギャップ萌えという言葉は比較的最近出来たような気がしますが、一種のそれかもしれません。

他に私が好きなキャラを挙げますと、九能帯刀、三千院帝、早乙女乱馬(男)、響良牙、早乙女玄馬、天道早雲あたりになります。ええ、男ばっかりですね。しかしそうなるのも半ば必然で、九能先輩はキャラそのものも好きですが、三千院帝と併せて、「らんま君に言い寄る男」という意味でも非常に重要です。何故なら私はTS娘のモテ描写が大好きだから。そういう意味では格闘茶道の千太郎君は街で出会ったらんま君を花嫁にしようとさらったところまでは極めて高評価だったのですが、体質を知った途端に手のひら返して邪険にし始めたのが心底ガッカリでした。

一事が万事そんな見方をしておりましたので、らんま君以外の女性キャラには残念ながら毛ほども興味がありません。むしろ女性陣が存在するとらんま君を男に戻そうとする方向に話が行ってしまうので、場合によっては邪魔でさえあります。
というか乱馬君、男の状態で約束した女の許嫁があんなに沢山いるなら、女の状態で約束した男の許嫁が一人くらいいてもいいんじゃないかと思ってしまうわけです。
しかし公式では主人公が早乙女乱馬でヒロインは天道あかねとその他許嫁の方々という、人数的にはおかしいのに性別だけはノーマル死守という状態になっており、概ねそのような方向で話が進みます。格闘能力も全般的に男の状態の方が優れていることになっているので、強敵に打ち勝つにはまず男に戻ることが第一条件とされ、騙し打ちなどを除き女の状態で活躍することはありません。更にラブコメ要素も九能先輩などごく一部の例外を除き殆ど女性陣との絡みになり、相手の女キャラも乱馬君が男であることを望んでいるので、折角魅力的ならんま君がすっかりデメリット、厄介者扱いです。これが肩透かし進行やらんま君出番なしの原因の一端にもなっている気がします。
ただ、元々ニッチな市場のTSF嗜好者向けではなくてもっと広い間口で大衆向けに作られた作品ですので、ある程度ノーマルな要素を残すのも仕方なかったのかもしれません。TSF的満足度というフィルターを外せばかなりレベルの高いコメディ作品であり、商業的にはむしろこの方向で正解であったと言ってもよいでしょう。

そんな中で、らんま君のファーストキスを奪って泣かせた三千院帝は殊勲賞ものの大活躍だと思います。よく頑張った、感動した。
ところで三千院帝は根っからの馬鹿の九能先輩と違って基本的に気障でいけすかない奴ですが、上記の大活躍に加え、「僕の頭の中はそういうことで一杯だ!」発言のお陰で、私の評価はすこぶる高いです。そこまでいけばむしろかっこいいよ三千院さん。

怪しげな格闘技の数々

乱馬君の流派は無差別格闘早乙女流、つまりどんな流派の勝負も受けるという立場であり、それゆえに様々な流派の相手と勝負をします。
しかしその相手は格闘新体操に始まり、格闘スケート、格闘茶道、格闘ディナー、格闘チアリーディング、格闘出前など、現実に存在しないキワモノがぞろぞろと登場します。また、一見まともそうな流派や技が相手の場合も、実は土木掘削用の技だったり、コソ泥と強盗を発想の原点にした拳法だったりと、大半がまともではありません。そういった奇想天外な相手とルールをどう攻略していくか、というのも本作品の醍醐味の一つでしょう。

高橋流言葉遊び

よく「早乙女らんまが身籠って男に戻るとどうなるのか」、などという命題を目にしますが、これを議論するのに生物学的な見地から見るのはナンセンスと言えるでしょう。
何しろ人間が子豚になって少女の手のひらにちょこんと乗る世界ですから、質量保存の法則もあったもんじゃありません。科学や医学のほとんどは無意味です。

同様に拳法や奥義の勝負もフィジカルや技能がどうとかという問題ではなく、概念的に相性で上回ってしまえば勝ち、という頓知(とんち)バトル的な要素が多く見られます。分かりやすい例としては、心情的な「寒気」や「冷静さ」を物理的「冷気」と置き換えている飛竜昇天破、「気分が重い」から「気の重量」で相手を押しつぶす獅子咆哮弾、「強気」でさえいれば「強力な気弾」を放てる猛虎高飛車などがあります。あくまで概念の勝負ですので、これを物理的にどうだとか言うのも野暮なものでしょう。

そんなわけで冒頭の命題に対する回答は、どう変化するかを回避して「そんな事態になれば泉の呪いの力で男に戻れなくなる」に一票を投じたいと思います。

豪華声優陣

アニメ版の話ですが、声優陣には今の基準で見ると有り得ないくらいのオールスターがずらりと並んでいます。しかし当時から全員既に大御所だったわけではなく、有望な新人や人気上昇中の人が集められてこの作品が出来た結果、その後名だたる面々になったというお話ですね。
演技のレベルの高さは今見ても大満足です。
ただその、私が大好きな九能先輩の声はもう新録できないという現実がですね。ああ鈴置さん…本当にお疲れ様でした。

原作との絵柄の違い

私はTVシリーズ第1話からはまった口ですので、ある程度そのせいもありますが、アニメ版の絵柄は原作漫画版より二次元的デフォルメが強く、そういう意味ではメリハリが効いているので、絵柄だけ見ると断然アニメ版の方が好みです。
そんなわけで、ここではほぼアニメ版の方の印象で語っております。
ただ原作なくしてアニメ版は存在しえないので勿論嫌いなわけがなく、原作についてはむしろ好き嫌いというより感謝の気持ちで見ていると言った方が近いかもしれません。

伝説の劇場版「決戦桃幻郷! 花嫁を奪りもどせ!!」

あまり世間に知られていないような気がするのですが、らんま1/2には劇場版が3つも存在します。そのうち最後の「伝説の鳳凰」は原作漫画を元にした短めの内容ですが、第1作「中国寝崑崙大決戦! 掟やぶりの激闘篇!!」と第2作「決戦桃幻郷! 花嫁を奪りもどせ!!」は劇場版オリジナルの内容で、らんま1/2のアニメ版ファンに特にお勧めなのが劇場版第2作「決戦桃幻郷! 花嫁を奪りもどせ!!」です。
と言いますのもこの作品、当初のシチュエーションとその後の作戦行動のためらんま君が女でいる時間がかなり長く、しかも微妙に胸が増量しているのか、薄着でめっちゃ揺れます。まあ終盤はやっぱり男に戻って戦うんですが、そこは仕方ないとして、前半~中盤は映像レベルの高さも相まって「らんま君及びその他女性陣プロモーション映像集」と言っても差し支えない出来です。ちょっと今DVDなどが手に入りづらいのが難点ですが、機会があれば是非一度ご覧あれ。

総評

総じて、TSキャラであるらんま君の魅力レベルが強烈に高く、作品自体の質も高いものの、性倒錯よりコメディ要素やノーマルなラブコメ要素などを優先して大衆向け作品として仕上げられた結果、そのらんま君の出番が減ったり男との絡みが殆ど無かったりするので、重篤なTSF嗜好者にはやや食い足りないものになってしまっていると言わざるを得ません。
などと色々ないものねだりをしましたが、しかしそういった部分は一部の二次創作で補われていたり、或いはその足りない部分をメインに据えた新しいTSF作品が後年続々と作られていたりします。それもこのらんま1/2の商業的成功がなかったら存在していなかった可能性が高く、この作品は今なお非常に重要なポジション、ものさしの基準点にあると言って差し支えないでしょう。
そういった功績や多くの個人的肩透かし話などを差し引きしまして、以下の点数を奉納いたします。

満足度 800/1000

高橋留美子先生の偉大な業績に感謝。

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