徹夜でしょうか早起きでしょうか、兎に角おはようございます、松下です。
近頃進捗報告が滞っていますが、当サイトの制作中TSF作品「響 2nd Season」のプロローグから序盤にかけてのテキストが一応の体をなしてきましたので、作風のサンプルとして公開しておきます。
- 暫定の内容であるため、最終的に作品公開されるものとは大きく異なる可能性があります。
- 最終的にADV形式に落とし込む予定ですので、小説形式と台本形式の中間のような体裁になっています。
- 性行為の内容は脱衣3回、自慰1回、前戯2回、疑似性交1回だけです。まだ本番に至っていません。
- 内容は18禁ですが、テキストのサンプルなので、絵が全くついていません。
- まだ序盤ですが、文章量が8万文字ほどあります。この時点で一般的なライトノベル1冊の8割程度の長さです。
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TSヒロインは無敵だ。
女の身体に男の性欲。ヒロインでありながらヒーロー。それを併せ持つのがTSヒロインという存在だ。
可愛らしく、妖艶で、かっこよくて、やりたい放題。
そんなTSヒロインに、私は憧れてやまないのだ。
瞼に突き刺さる陽光に意識を揺さぶられる。
何だかおかしな夢を見ていた気がする。今週を乗り切れば期待の新作TSFゲームの発売日だから、多分そのせいだろう。正直起きるのは面倒くさいが、それを考えると多少のやる気も出てくる。人生という物語の主人公は、毎日やることが一杯だ。33年と数箇月、独り身ではあるが幸いそれほど退屈せずにやっている。今日も楽しく無益な一日の始まりだ。
それにしても今日の朝日は元気すぎではないか。目覚まし時計と格闘した記憶がないのだが、また無意識にアラームを切ってしまったのだろうか。納期が近い案件は昨日納品したからまだ余裕はあるはずだが、とりあえず時刻を確認せねばなるまい。
目覚まし時計を確認すべく、左腕を伸ばす。空振り。全く手応えがない。はて?
状況を確認すべく、抵抗に逆らって気だるい瞼を開く。どうもサイドテーブル自体が無いようだ。そもそも枕が違う。周囲の清潔な雰囲気はまるで病室のようで…ああそうか、ここは病室なのだ。
状況を概ね理解した。
思い起こしてみれば、昨日は普通に寝た覚えがない。原因不明の唐突な頭痛・腹痛・嘔吐感、おまけに平衡感覚もガタガタで手足が殆ど言うことを聞かないという未だかつてない危機的症状に見舞われたため、自宅から何とか救急車を呼んで、玄関前でぶっ倒れたところまでは覚えている。確か玄関を開ける前に力尽きた筈なんだが、こうして無事でいるところを見ると、何とかこじ開けて救出してもらったようだ。流石は日本の救急隊員だ。後で礼を言っておこう。
ぼちぼち起きよう。確認すべきことが二つできた。悪い予感と良い予感が一つずつある。
悪い方の予感は日時だ。あれほどの事態で昏倒したのだから、一日以上経過している可能性がある。とすると納期が危ない。確か直近は3日後だったはずだ。だがこちらの確認は後回しだ。
良い方の予感、より重大なことは身体の違和感だ。いや、体調が悪いわけじゃない。おかしいほどに絶好調だ。
意識がはっきりしてきて分かったのだが、布団の中で身じろぎするだけでも、その感触が普段と全く違う。具体的に言うと、胸が圧迫されていたり股間が物足りなかったりするわけだ。さっきから色々考えながら空いた右手で色々触ってみているわけだが、これは明らかに私が知っている33歳独身男の体つきではない。それに、眼鏡をつけていないのに周囲の物がやたらはっきり見える。
勢いをつけて上体を起こす。胸が揺れる。まあそれは今は置いといて、室内を見渡す。個室で、他に人はいないようだ。入口の反対側に鏡つきの洗面台。これだ。
ベッドから立ち上がり、服をはだけながら洗面台の前に立つ。看護の都合か、入院着の下に下着は着けていなかったので、あっという間に全裸になった。
まあ案の定、33歳でも男でもない、見たこともない女がそこにいるわけだ。
鏡に映るその女を食い入るように見る。なるほどこれは…
響「100点」
鏡の中の自分と指さし合って言い放つ。うむ、声もいい。
なるほど、何かおかしいと思っていたら、どうやら朝起きたら女になっていたようだ。33年男として生きてきて、初めての経験だ。人間、生きてみるものだ。
お決まりの展開ならここらで「なんじゃこりゃー」なり「いやねぇよ」なりの一言くらいは出てくるものだが、生憎この私にそれを期待するのはお門違いというものだ。
何しろ私はTSFとTSヒロインが大好きなのだ。しかも傾向分類では同一型なのだ。女になってあれこれされるのが大好きなのだ。むしろここまで来て今更夢オチだったら、起きずに不貞寝するところだ。
さて、女性化に関して最大の問題であった顔については、私が希望する最低限の水準を軽く超え、美少女と言って全く差し支えない造形だ。すごいな、化粧もしてなくてこれとは。
気になる体型は大きい胸と尻にはっきりくびれた腰と、女らしいメリハリがある。胸や尻は張りがあって垂れておらず、脚が若干太めなのは好みが分かれるかもしれないが、私としてはど真ん中ストライクだ。胸のサイズは恐らくDくらいはあるだろう。
髪は色が薄くなって亜麻色になっており、長さはいくらか伸びている。元の髪型からすると一様に伸びただけとは思えないので、誰かカットしてくれたのだろうか。だとすると、髪がそこまで伸びるだけの年月が経過している可能性があり、日付を確認するのが怖い。
髪が伸びた一方でどうやら無駄毛は逆に抜けているようで、手入れが簡単そうなのは素晴らしい。
見れば見るほど都合が良すぎて思わずにやけてしまうわけだが、したり顔ですら可愛いとは何たることだ。
そうしてポーズをつけながら鏡の前でくるくる回っていると、不意に病室のドアが開いた。
山際「おはようございます松下さん、検診のお時間…です?」
響「あ」
見たところ、担当の看護婦さん…今時の言い方をすると、看護師さんのようだ。
こちらとしては見られて恥ずかしい体つきでもないし、ある種の変態性癖の保有者である私としては積極的に見せるのも吝かではないが、とりあえず会話向きの格好ではないのは確かなので、服を着直すことにする。
響「おはようございます。幾つか伺いたいことがあるんですが、まず現在の年月日って確認できますか?」
山際「2010年7月1日ですけれど…あの、何ともないんですか?」
響「ええ、お陰様で絶好調です」
なるほど、2日半寝てたのか。直近の納期は無理ゲーだな。残り時間的にもうアウト確実だけど、連絡くらいは入れないと。
ところで看護師さんは私の普通すぎる対応に面食らったのか、微妙に挙動不審だ。
山際「えーその、念のため、お名前を伺っても宜しいですか?」
響「松下 響ですけど…え、もしかしてこれ他の人の体だったりします?」
山際「は? …あー、いえいえいえ、そんなことはありません。とりあえず先生呼んできますから、そのままお待ちくださいね?」
響「あ、はい」
山際「先生、松下さんが起きましたー!!」
看護師さんは私の返事を聞き終わらないうちに扉を閉めてばたばたと出て行った。
その態度に言いたいことがないわけでもないが、まずは入れ替わりTSじゃなくてよかった。折角女になっても、他人の体だと色々としがらみがあって面倒だからな。
しかし私が起きて普通に喋ってるのに驚いた様子からすると…まあ常識的に考えて、普通の病気でたった3日で性別や外見が変わるわけないしなあ。聞いたこともない奇病に罹っていたとしても不思議じゃない。
■1日目 – 2010年07月01日(木) – 晴天
響「侵食性男性因子喪失症候群、ですか」
二階堂「ええ」
私のオウム返しに対して、この二階堂医院の医院長である二階堂 信長先生が頷く。インテリ眼鏡のイケメンさんだが、信長とはなかなか傾いた名前だ。
しかしなるほど、聞いたことも無い奇病だな。聞いたことは無いが、名前を聞いて凡そどんな病気かは想像できる。
響「もしかして遺伝子からY染色体が欠落するとかそういう?」
二階堂「おや、話が早くて助かりますね。その通り、Y染色体が欠落してミラー構造のXXになった遺伝子を持つ変異細胞が身体全体を侵食する病気なんですよ」
確か男という存在は女性染色体Xというベースに男化パッチのY染色体を加えて成立するものだと聞いたことがある。つまり男が男の象徴たるY因子を失ってXだけになることで女になる病気ということらしい。
二階堂「男性にXX状態の細胞が発生するのはさして珍しくないんですが、その細胞が淘汰されずに侵食が完遂する可能性が非常に低いのです。症状の進行順に発生期、潜伏期、侵食期、転換期、安定期という名称がついていますが、この疾病で安定期に入った、つまり完全に女性化したのは、人類史上であなたが3人目です」
響「人類史上でたったの3人ですか。道理で今まで縁が無かったわけですね」
二階堂「いや、知る人ぞ知るといったものでしてね。TS病なんていう俗称もあるんですよ」
響「また随分とストレートな」
二階堂「更に言うとですね、転換期を迎えると体組織の無理な変化に耐えられず大部分…まあ、数字で言うと9割以上が死に至る疾患でして」
響「…おぉぅ」
二階堂「しかも安定期に入って無事に記憶と身体機能を保持しているのはあなたが初めてなんですよ」
いや、やばい病気かもしれんとは思ったが、TS病なんて親しみやすい俗称がある割に、致死率高すぎだろう。
しかし普通死ぬような病気に耐えるほど体が頑丈だった覚えが全くないんだが?
二階堂「あなたは実に運がいい。救急救命士の応急処置が適切だったこと、一般に知られていないこの疾患に対して知識がある私の病院に運ばれてきたことなど、状況の全てが良い方向に働きました。知らないと症状の進行を食い止めようとして逆に耐えられずに死亡するケースも多いですからね」
響「なるほど…ところで今の顔とか体型、何というかすごく整ってるんですけど、これも偶然ですか?」
助かったのはものすごく運が良かったで納得したものの、それに加えてこの理想の容貌は都合がよすぎる。どんな確率操作だ。
二階堂「良い着眼点です。極端に型崩れしないように補助はしましたけど、基本的には天然ですよ。整形手術の類はやっていません。ただ…」
響「ただ?」
二階堂「この組成変化がある程度当人の意志、思い入れを反映しているのではないか、という仮説がありまして。ほら、普通のトレーニングでもイメージトレーニングを併用するとより理想の体型に近づきやすいというのがあるじゃないですか」
響「それはまた大胆な仮説ですね」
二階堂「既存の二人の症例では、発症以前に思い入れがあった女性に似た姿形になったという記録があります。一人目は別離した恋人に、二人目は亡くなった娘によく似ています」
資料の写真を見てみると、そっくりとは言えないまでも、ぱっと見で間違えそうな程度には似ているようだ。
二階堂「で、実際どうですか。特定の女性にそういった強い愛情や憧れはありましたか」
響「ええその、私は結婚願望というのが薄くて特定の女性に恋焦がれるということが殆どありませんでしたが、やや違った形で心当たりと言えなくもないものが」
二階堂「とおっしゃいますと?」
響「相手に対してではなくて、自分がもし突然女になったら、といったことを具体的に想像するというのは毎日のようにやっていました」
二階堂「なるほど、形は違えども、それも女性に関する具体的で強い願望と言えますね」
話をまとめると、女性化に至ったのは偶然と適切な処置の賜物のようだが、この姿形を形成したことに関しては私の具体的すぎる女性化妄想が招いたものであるらしい。私の妄想力がまさかこんな形で結実する日が来るとは、まったく人生分からないものだ。TSF好きで本当に助かった。
二階堂「そうなると、人格がそのまま残ったのもその願望が自身に向けられたものだったからと考えられなくもないですが…仮説にしても現時点では証拠が不十分ですね。これは忘れていただいて結構です」
響「はあ」
二階堂「では、あとでアンケート用紙を用意しますので、その理想像と現状にどの程度の一致や違いがあるのかについて詳細を教えていただけますか」
響「えー…はい、まあ、いいですよ」
自分の妄想について根掘り葉掘り訊かれることについて抵抗が無いわけじゃないが、それがこの症例の研究に関して恐らく重要なことであろうことは想像に難くない。それに、女性化妄想に関してはもうカルテに書かれているので、抵抗するだけ無駄だろう。
二階堂「さて、安定期に入った以上、ほぼ普通の人間と同様に生活ができますが、注意点が二つあります」
響「はい」
やっぱり何かデメリットがあるらしい。まあ病気だしな。そうそううまい話はない。いや、致死率9割だけでも十分すぎるリスクだが。
二階堂「まず、通常の2倍の食事が必要です」
響「…はい?」
二階堂「ああ、心配には及びませんよ。体重あたりの代謝量が通常の2倍になっているので、摂取量も2倍にしないとむしろ痩せ細ってしまうのです」
響「デスヨネー」
ああびっくりした。そうだよな。良く考えたら必要エネルギー分の食事をするんだよな。折角の美少女をフォアグラのように太らせるとか、どんな拷問かと思った。
二階堂「ただ、胃の容積が増えているわけではないので、単純に2倍の量を食べるのは到底無理でしょう。そのため、省体積でエネルギー量が高い食事にするか、或いは小動物のように食事の回数を増やすかという対処が必要になります。無補給での活動限界時間も常人の半分しかありませんので、十分気を付ける必要があります。これについては、あとで山際君に食事指導を受けてください」
響「承知しました」
気楽に考えると沢山食べても太らないという全国の女性を敵に回しそうな体質だが、2倍という必要摂取量の難度からすると、生物としてはあまり都合のよい話ではなさそうだ。要するに燃費が極めて悪いのだ。
二階堂「その代わり、良いこともあります。通常の2倍の代謝が持続しているわけですから、体機能の活力、回復力が常人をはるかに上回る活性化状態にあります。安定期に入った現在はある程度落ち着いた状態ではありますが、それでも怪我の治りが通常の2倍~10倍程度早いはずです。副次的に、筋肉量あたりの瞬発力も2割~5割程度水増しされているものと思われます」
響「はず、というのは」
二階堂「あなた自身の肉体を実際に傷つけて測定しているわけではありませんからね。今までの乏しい症例観察による経験則に過ぎません。こちらからあなたの身体を傷つけるような実験は一切しませんので、その代わり今後何か怪我をした際にはなるべく速やかに当院に連絡をください。それから体力測定は数日中…そうですね、明日にでもやっていただきましょうか」
響「分かりました」
少なくとも聞く限りにおいて、二階堂先生の研究方針は人道に反していない。状況の悪化を防ぐためにも、無理のない範囲で素直に協力しておいた方がいいだろう。
二階堂「ところで、他に回復や成長に気付いたことはありませんか?」
いや、他にって言われても、ほぼ全く別人状態なんだが。まあ、強いて挙げるならいくつかある。
響「視力があからさまに回復してますね」
二階堂「以前の視力はどのくらいだったんですか?」
響「0.1未満、裸眼では本も読めなかったくらいです」
二階堂「今はどのくらい見えますか?」
響「向こうのテーブルの上の時計の文字が読めます」
二階堂「少なくとも1.0以上はありそうですね。今日の測定の予定に入れておきましょう」
響「そういえばこの髪もでしょうか」
二階堂「そうですね。安定期に入ってから成長が落ち着いていますが、転換期の間に1日程度で22.1cm伸びたことが確認されています。丁度遺伝子情報の変化で髪の色が変わったので測りやすかったですよ。ちなみに「二人目」は転換期に若禿が治ったと報告されています」
響「へえ」
二階堂「あと、歯は見てみましたか?」
響「いえ、あんまり」
二階堂「では見てみましょうか」
響「はい」
手渡された手鏡で口の中、前歯を見てみる。
響「白くて綺麗な歯ですが」
二階堂「それだけですか?」
それだけと言われても、私の歯がこんなに綺麗というだけでも十分異常だ。以前はもう少し濁った色だった。
しかし口を開けて奥を覗くと、すぐにそれ以上の異常に気付いた。
響「…虫歯の治療跡が一つもないんですが?」
私の記憶が正しければ、私の奥歯には5、6箇所は治療の跡があったはずだ。一体どういう治り方だ。
二階堂「はいこれ、何だか分かりますか?」
差し出された小さな樹脂製の袋には、大量の象牙色の欠片が入っている。サイズ、形状からして、人間の歯であることは間違いない。ただ、その特徴に見覚えがある。
響「えー、何故私の歯がここに?」
二階堂「生え替わってしまったんですねー。永久歯が」
響「それは何というか、永久歯という名前に反逆してますね」
二階堂「言われてみればそうですねえ。巧いことをおっしゃる」
何かツボに入ったらしく、二階堂先生が腹を抱えて笑う。
永久歯が生え替わったのにはびっくりだが、口の中にあるのが古いおっさんの歯では相手に悪い気もするし、歯が新品であることに何ら問題はない。
二階堂「恐らく体感出来ているのはそのあたりだと思いますが、要するに転換期に新しい遺伝子の細胞が古い遺伝子による体組織を追い出して新しく作り直したので、そういう通常ありえない回復が発生しているわけです。現在髪の成長が落ち着いていることからもわかります通り、今後の安定期においてはそういった新品交換方式の回復は期待できませんので、あまり過信しないようにしてください」
響「分かりました」
二階堂「それから、回復に関連することでもう一点。もしこのままの状態を維持できれば老衰で死ぬことは恐らくありません」
響「…は?」
二階堂「砕けた言葉で言うと、不老長寿というやつでしょうか。ああ、事故、傷害、病気には気を付けてくださいね。寿命以外では死にますから」
まじか。生涯美少女ってそれどんなパラダイスだ。本当にいいのか。
二階堂「テロメラーゼ酵素が常時活性しているお陰でテロメア短縮が起こらないというのが寿命制限がなくなる根本原理なんですが、これが確認されたのは「二人目」からで、「一人目」は普通に歳をとっていたと記録されています。つまり何らかの原因で活性状態が終わって老衰が始まる可能性はありますので、実際に永久に生きられるかどうかは分かりません。まあ「二人目」は13年間活性状態が続いているので、そう簡単に不活性にならないとは思いますけれども」
響「なるほど」
まとめると、燃費悪化の代わりに並はずれた回復力と暫定的不老長寿か。燃費悪化は不便だとは思うが、やっぱり長所の方がすごい。
二階堂「では2つ目の注意点です。これも身体の活性化に関連したところですが、身体的抵抗力、免疫力が極端に上がっています。お陰でちょっとやそっとで病気にはなりませんが、その反面、いざ病気になったら薬が効きにくいという難点があります。抵抗力が高いからと言って無茶はせず、普通程度には気を付けてください」
響「はい」
二階堂「これに付随することなんですが、ほぼ自然妊娠しない程度の不妊体質になっています。まあこれに関しては単に抵抗力が高すぎるだけですので、妊娠する方法もいくつかあります。聞いておきますか?」
響「是非お願いします」
つまり、ほぼ妊娠しないから生でやり放題、任意で子作りプレイもOKってことか。すごいな。
二階堂「一つは、一時的に薬で抵抗力を弱めることです。免疫抵抗力を軟化させる塗り薬がありますので、これを膣内または子宮のなるべく奥に塗りつけることで、妊娠する可能性が飛躍的に高まります。その代わり、抵抗力が落ちますので、性病には特に注意が必要です」
響「ふむふむ」
二階堂「もう一つは、単純に物量を以て力づくで抵抗を突破することです。具体的には排卵期に子宮を精液で満たし、絶え間なく新しい精液を注ぎ込むようなことがあれば、幾らか高い確率で妊娠するでしょう」
響「先生、もしかして輪姦とか想定してます?」
二階堂「お好きでしょう?」
響「exactly(おっしゃる通りでございます)」
二階堂「ははは、松下さんは正直ですね」
やけに見透かされているのは気になるが、まあ話が早いのはありがたい。
二階堂「さて、体質についての諸注意は以上ですが、経過観察のためにあと1週間検査入院してもらうことになります。大丈夫ですか?」
響「えーまあ、何とか」
今月納期の大半の受注をキャンセルすることになるが、この際致し方あるまい。元々一人仕事でやっているのだから、一度病気したらヤバいということは多くの発注元が理解してくれている。それに一月程度収入が無い月があっても、蓄えで何とかなる。
響「ところでその検査入院というのは、もしかして論文か何かのデータ収集ですか」
二階堂「あーうん、そうそう。この疾病は安定期の症例が非常に少ないので、きっちり論文を発表しておかないと、あとで面倒なことになるんですよ。だから今のうちに観察情報を取れるだけ取っておいた方がトラブルを未然に防ぐことができるわけです。勿論私の監視下にある限りは、非人道的な人体実験を行う予定はありませんのでご安心ください」
響「なるほどー」
なんだかんだでこの病気の患者を無事に性転換させた初めての医者ってことになるんだものな、二階堂先生は。二階堂先生のところに担ぎ込まれて本当にラッキーだった。
ところで今「監視下」って言ったよな。もしかして退院してからもこっそり監視がついたりするんだろうか。
まあこんな誰に狙われるか分からん立場になってしまった以上、誰かに見ていてもらった方が安心だけどな。むしろ監視にかかる費用の方が心配だ。
二階堂「ああ、あとですね。あなたは現在見た目も声も性別も指紋も完全に別人になってしまっていますので、あなたが松下 響さんであるという証明書を私から発行しておきます。公共機関でも通用するものですから、最初に警察署に提出することをお勧めします」
響「あ、それは助かります。是非お願いします」
そうなのだ。私が松下 響であると証明できないと、私が元々持っていた財産や権利の一切が行使できなくなってしまう。それでは社会生活において非常に不便だ。
現在の私が松下 響本人であると証明するにあたって、その証言に二階堂先生以上の適任者はいない。これを公的文書で発行してくれるというのは非常に助かるというものだ。
二階堂「私からのお話は以上ですが、何か質問はありますか?」
響「再度男に戻る可能性はどの程度ありますか?」
二階堂「戻りたいですか?」
響「全くその気はありません」
二階堂「でしょうねえ。まあ、結論を言いますと、ほぼ0と言っていいでしょう。強力な新しい遺伝子をベースとした細胞に駆逐されつつある旧遺伝子勢力がもう一度巻き返す可能性を考えるわけですから、今回の発病より更に低い確率になります。生きているうちにそうなることは万が一にもまず無いと思いますよ」
響「なるほど安心しました。もう一ついいですか?」
二階堂「どうぞ」
響「先生イケメンでいい人っぽいですけど、好きな人とか付き合ってる人はいますか?」
二階堂「いやあ、私、患者の裸や内臓を見慣れすぎたせいか、勃たないんですよ。先月もそのせいで振られてしまいまして」
響「あー、それは申し訳ないことを伺いました」
EDか。なまじいい男だけにそれはきついな。しかし、それをあっさり白状してしまうあたりに大人の余裕を感じる。
二階堂先生の話を聞いた後、すぐに山際看護師による身体測定が実施された。
身長は158.4cm。女としては平均的な背丈だ。元が168.1cmなので、約10cm縮んだ計算になる。骨格レベルで組成が変わっていなければこうはならない。
体重は45.0kg。元が58.1kgなので、13.1kgも減っている。質量保存の法則は勿論健在なので、つまり3日間で少なくとも13kgの皮膚代謝や発汗、排泄を行ったことになる。点滴などで摂取した量を加味すると、実際にはそれ以上の量を排出したのだろう。ギネス級のダイエットと言えなくもないが、冷静に考えると病気以外の何物でもない。
更に、衣類の調達に必要だということで3サイズの採寸もしてもらった。
まず胸についてだが、トップ89cmアンダー63.1cmのGカップという驚くべき結果が出た。トップの高さがあるのでDくらいはあるだろうと思ってはいたが、まさかGとは。いやはや、漫画体型のCとかDっていうのは嘘っぱちだな。幾らかデフォルメ表現で強調されてるだろうとは思ってたけど、想像以上だ。実際に測ったらGカップになるのだ。しかし80cm台でGってあるものなんだな。
更にウエストは50.7cm、ヒップは90.1cmという瓢箪も真っ青のくびれっぷりに魅惑の尻が素晴らしい。世の女性はどうも大きな尻を嫌がるようだが、胸ばかり大きいと逆三角形の男体型シルエットになってしまうので、私としては尻が小さい体型は苦手なのだ。少なくとも胸と同等くらいの大きさが無いと物足りない。それ以上の適正サイズであればなお素晴らしい。そして現状のスタイルは私の理想に近い。
こんな体型はあまりにも出来すぎだとは思うものの、二階堂先生が言う私の願望がこの結果を招いたという仮説を肯定するならば、それほど無理もない気がする。何しろ私が好きなのは実在しない架空のキャラの体型なのだから。
採寸後、続けて食事指導をしてもらった。
二階堂先生の話によると体重あたりの摂取カロリーを2倍にしないといけないらしいので、45kgx25x2=2,250kcal~45kgx30x2=2,700kcalが実際の1日の必要摂取カロリーになる。1食あたりでは750kcal~900kcalが必要というわけだ。
まず、普通の幕の内弁当1食だと500kcal~600kcal程度なのでこれだけでは足りない。
次に、体積あたりのカロリーが高いハンバーガーセットで計算すると、最小構成のノーマルハンバーガーで一つ270kcal、フライドポテトMで450kcal、ドリンクSで90kcal、合計810kcalになる。量の割に十分なカロリーだ。つまりノーマルのハンバーガーセットを3食食べると、これだけで1日の必要カロリーに達する。しかし逆に考えると、普通の45kgの成人女性の必要摂取量の2倍に達しているわけだ。今の私にはありがたいが、今更ながらとんでもないカロリー量だハンバーガーセット。特にフライドポテトMが恐ろしい。聞くところによると、以前の私が好んで食べていたポテトチップも一袋500kcalを超えるのが珍しくないらしい。
しかし実際に毎日ハンバーガーやフライドポテトばかり食べていると、太らなくても栄養が偏り、ビタミンなどが不足する。これは美容や健康維持によくない。肉食中心では体臭も気になるかもしれないので、それは断固として避けたい。
ただまあ、幕の内弁当とハンバーガーセットは単にカロリーの例として挙げられただけで、ハンバーガーセットそのものが推奨されたわけではない。バランスを考えると普通の食事と栄養補助食品を併用する方式が良く、無闇に1食あたりのカロリーを増やすくらいなら間食で補った方がむしろ良いそうだ。積極的におやつタイムを取れると考えると、これはこれでいいかもしれない。
などといった感じの食事指導を受けているわけだが、その間、私の身体には山際さんが組みついている。
測定のために折角服を脱いだのだから、ということで指導がてら身体を拭いてもらっているのだ。
もう自分で風呂に入れるのだから拭いてもらう必要は無いはずなのだが、人の好意は受けておきなさいと軽く窘められてそれに従った形である。どうも単に山際さんがやりたいだけのような気もする。
しかし山際さんは私が昏睡状態の間も世話をしてくれていたらしく、実に扱いに慣れている。女の腕力で軽々と私の体勢を変えて、蒸しタオルで隅々まで拭き清めてくれる。隅々までと言うと何処から何処までだと聞かれそうだが、要するに指の届く範囲で全部だ。食事指導を行いながらこれをこなすというのだから、全く看護のプロは伊達じゃない。
しかし、そんなプロのテクニックを隅々まで受ける私はこの身体に関してプロどころか全くの初心者なので、その心地よい刺激に心穏やかではいられない。単に女の体に慣れない私の感覚が過敏なだけかもしれないが、その気持ちよさにはどうしても性的な意味が混ざってしまう。
私は恐らく性欲が強い方で、気持ちいいのは勿論大好きだが、最低限の社交性は持っているつもりだ。山際さんは看護の仕事を真面目にやってくれているのだから、あまり不真面目な態度は良くない。しかしこれがどうして全然我慢できていないわけだ。
首筋に、腋に、指の間に、臍に、胸に、股間に。山際さんの指が這うたびに震え、まともに発言もできない状態だ。
響「あの、そんなに…ひぁ、丁寧に、しなく、ても」
山際「いえいえ、ご遠慮なさらず。昨日も一昨日も同じことをさせていただきましたから。ほら、ここもちゃんと拭かないとかぶれますからね?」
響「んんっ!?」
肛門を抉られて思わず声を上げてしまう。山際さんの言葉が正しいのなら、昨日も一昨日も同様に肛門に指とタオルを突っ込まれていたはずだ。
この刺激でよく起きなかったなとは思うものの、良く考えてみると、3日間で13kgを超える老廃物を身体から切り離した私が、今朝起きた時点でほぼ全く気にならないレベルの清潔さを保っていたのだから、やはりそれは山際さんのお陰なのだろう。
山際「もうすぐ終わりますから、力を抜いてリラックスしていてください」
響「は…ぃ」
我慢するのはもはや限界だ。すぐ終わるというのなら身を任せて大人しくしている方がいいだろう。
やばい。尻の穴が気持ちいい。
などと思っていた矢先に、病室のドアが勢いよく開かれた。
うん、病室って鍵かかってないよな。
有隅「お邪魔します、お見舞いに…」
響「ぁっ、は………はい?」
今気付いたけどベッドのカーテンが閉まっていない。つまりは私が股を開いて尻の穴をほじられている様子が丸見えだ。
入ってきた背広の男と目が合った。顔が耳まで真っ赤だ。すっかり出来あがっている私も似たような感じかもしれない。
山際「あら、有隅さん?」
有隅「で、出直してきます!」
男は暫く私達の様子を食い入るように見ていたが、名前を呼ばれるとはっとして出て行った。なんか純朴そうな人だな。
山際「ごめんなさいね。私うっかりカーテン閉めてなくて」
響「いえ…今のはどちら様で?」
あんまりびっくりして急に意識がはっきりしてきた。そういえば今のは誰だ。
山際「救急救命士の有隅 慎吾さんですよ」
響「救急…ああ、もしかしてあの時呼んだ救急車の?」
山際「その救急車に乗ってた人です。玄関が開かなくて窓ガラスを壊したから、意識が回復したらお家の状況を直接伝えに来るって言ってたんですよ」
ああ、どっから入ったのかと思ったら、窓ぶっ壊して入ってきたのか。おかげで処置が間に合ったし、玄関扉ほど修繕に手間かからないだろうし、ナイス判断だ。
まあしかし、私はそんな命の恩人に出会い頭になんてものを見せているんだろうな。
山際「はい終わりました」
響「…ありがとうございました」
山際「いえこちらこそ」
いや何がだ、と内心突っ込みながら、ボタンが縦に10個も並んだ入院着を着直す。ボタンがやたら多いのは面倒だが、丈が長くてズボンが無いから仕方ない。また、さっき採寸したばかりなのでまだ下着はつけていない。めくればまたもや丸見えだ。
山際「有隅さん、もういいですよー?」
扉を開けて山際さんが呼びかける。ああ、そうだお礼言わないと。
有隅「し、失礼します! 美麻消防署で救急救命士をやっております有隅と申します!」
当の有隅さんはというと、赤面したまま部屋に入ってきた。改めて良く見てみるとかなり背が高く、190cm前後ありそうだ。山際さんは会釈して入れ替わりに出て行った。
響「わざわざお越しいただきありがとうございます。山際さんから伺いましたけれど、密室状態で倒れていたところを救助していただいたそうで」
有隅「い、いえ、仕事ッスから!」
響「まあ、そうおっしゃらずに」
有隅さんがっちがちやで。なんかもう可愛いな。こちらは却って冷静に話ができる。
響「あと、先ほどお見苦しいところをお見せしましたが、身体を拭いてもらっていただけですので何一つやましいところはありません、と念のため説明させていただきます」
細かいことだが、真っ当な言い分がある限りは、出来る限り速やかに、全力で言い訳するのが私のポリシーだ。些細な誤解もどんな不利益に結びつくかわからない。
先程の光景を思い出した有隅さんが真っ赤に赤面しようとも、私もつられて赤面してしまおうとも、それは関係無いのだ。無いったら無いのだ。
有隅さんの話を聞いてみたところ、救助のために割った窓は既に修繕済みで、玄関の施錠は丁度私のポケットに入っていた鍵を使って何とかしたらしい。その鍵は既に私の所持品入れに返却されていたので、つまり後片付けは全部終わっているということだ。仕事が早い。窓の修理のために少しばかり費用を請求されたが、まあ命に比べれば些細なものだ。
ともあれ、私はあと1週間ほど入院を続けることになっているので、その間、家の施錠がしっかりしているのは非常に助かる。
仕事先には、とりあえず携帯電話から入院中のため仕事が大幅に遅れるという内容のメールを送っておいた。病院だから頻繁にメールチェックできないのと、通話だと声があからさまに違って本人と分かってもらえそうにないのが面倒だ。
しかし、遅れるとはいえ流石に1週間何もしないわけにもいかないので、あとで一旦家に帰ってノートPCを持ってくる予定だ。
響「やー、何から何までお世話になってしまいまして」
有隅「いやそんな、もったいないお言葉です」
相変わらずテンパってる有隅さん。まあ誠実な人なんだろう。
有隅「それでは、今日のところはこれで失礼致します」
響「はい、わざわざお越しいただきありがとうございました」
有隅さんは一礼して扉のところまで歩いて行ったが、そこで立ち止まって振り返った。
有隅「あの…また来ます」
響「はい、是非またお越しくださいましな」
私がひらひらと手を振ると、有隅さんは再度会釈して出て行った。
しかしなるほど、また来るのか。
本来の用事は今日だけで済んでいる筈だし、あれだけあからさまな態度だと、有隅さんが私に何らかの興味を持っていることくらいは分かる。
単なる下心なのか、人としての好意なのかはまだ判然としないが、女として意識されているのは確実と見て良いだろう。
さて、どうしたものか。
いや、女として扱われること自体に問題はないのだ。おかしいと思われるかもしれないが、身体性に基づく異性愛者である私は、現在女の身であって二度と男に戻らない以上、男に好かれることに関して抵抗は無い。むしろ女同士より都合がいいくらいだ。凸と凹のセットでないと満足できないのだ。
まあ、今のこの容姿なら引く手あまただろうとは思っていた。落ち着いたら行動を起こそうと思っていた。しかし状況は意外と早く動き始めたようだ。四の五の言わずにもう具体的に考えておくべきかもしれない。この身体の「使い道」について。
本気かどうかは知らないが、もしそうなら有隅さんも相手として悪くはなさそうだ。善良そうな人柄と、力では抵抗できなさそうな体格の組み合わせが、マゾ気質の私にマッチして実にいい感じだ。それに好意を寄せられるのはシンプルに嬉しい。候補として覚えておこう。
他にも思い当たる候補が何人かいるが…先に確認しておくべきことがあるな。
その後、仕事道具のノートPCを取りに戻るという名目で私は一時帰宅した。
二階堂医院の所在地は隣の市の境界付近で、自宅から徒歩で10分程度のところにあった。普通に毎日通院可能な距離だし、入院中に一時帰宅しようと思えばいつでも帰ることができるのは便利だ。
外から見た感じ、自宅は私が倒れる以前と変わりがない。
松下家 兼 松下制作所本部事務所。
敷地面積100坪、建て面積80坪、木造2階建て。ここら辺の一戸建てでは一番でかい家だ。こんな所に独りで住んでいるので、かなり無駄ではある。
名義は私のものになっているが、勿論私が買ったものではなくて、相続した遺産の一つだ。
「ただいまー…って言っても誰も聞いてないんだが」
玄関の正面は吹き抜け階段。高さのあるスペースに提灯型の和風シャンデリアが目立つ。
ところでこの家、一見豪華なんだが地味に欠陥住宅だ。実はこのシャンデリア、設計上ではあるはずの電球交換用梯子が設置されておらず、この家が建ってから20年もの間、一度もシャンデリアの電球型蛍光灯を交換していない。そのため、近頃では点灯してもあまり明るくない。
他にも一部の床が傾いているとか、夏になると窓が開かないとか、ベランダから下の壁に浸水するとか、色々と欠陥があるのだ。
まあ自分で買ったものでもないし、とりあえず住むのと仕事するのには不便していないので、普段は気にしていない。
突入のために割られた玄関横の窓ガラスは、一見何事もなかったかのようで、良く見ると確かに新品に交換されていた。散乱した破片もきれいに掃除されていて、念のため確認した靴の中にも破片は入っていなかった。
1階の最前面の部屋は現在の仕事部屋になっている。元々両親がささいな製造業をやっていたスペースで、広さは12.5畳。正面には自動ドアと自動シャッター付きだ。シャッターの動作スイッチは内側にしかないので、実はここから鍵を使わずに施錠して外出することができる。鍵を忘れたら大変なことになるので要注意だ。
部屋には現在仕事用のPCやサーバーを置いている他、ソファーがあって応接スペースにもなっている。シャッターの前には2台分の駐車スペースがあって、うちの車は1台だけなので、来客は残り1台分のスペースに車を停めて自動ドアから入ってくることになっている。
とはいえ、実はあまり頻繁には来客が無い。何故なら私が公に松下制作所の宣伝営業を行っていないからだ。
私がやっている松下制作所の主な業務内容は制作業で、コードを記述したり画像を編集したりwebを構築したりするわけだが、流石にIT系の仕事なので、ある程度自分で勉強しないと時流についていけない。それに加えて経理、営業、経営をやるとなるとまあなかなか面倒なもので、今のところ直接受注を殆どせず、知り合いから仕事を貰っているだけにとどめているのだ。制作所の構成員も私一人だけで、他に従業員はいない。受注が無ければ無職と変わりなしという状態だ。この状態が気楽なので、業務を拡大する予定も今のところ無い。給料を支払うと、受注が無い場合の維持費用が一気に増えて資産の目減りが無視できなくなるからだ。
そんな一人制作所に存在するメインPCはというと、一人で全部の仕事をやるという名目で結構珍しい構成になっている。
まずディスプレイが4枚接続されている。30インチが1枚、24インチが3枚だ。しかも目の負担と見やすさを考慮して全部IPSパネルで、ハードウェアキャリブレーション機能まで付いている。実はこれがPC本体よりはるかに費用がかかった。あとになってキャリブレーション機能はsRGB用とAdobeRGB用の色基準になる2台だけで十分だったと気付いたが、いわゆる一つの後の祭りだ。
フルタワーのPC本体には高速CPUと大容量メモリ、業務用を含む2枚の高性能VGAを搭載しているので、3Dモデリング用途にも不自由しない。GIレンダリングも結構高速に演算できる。
インターフェイスは多ボタン無線マウスと無接点静電容量方式のキーボード。キーボードはショートタイプで、別途左側にテンキーを置いている。使用頻度は低いが、一応イラスト制作用のペンタブレットもある。
机は幅180cmのすこぶる頑丈なオーダーメイド品。奥行きも80cmあるので、キーボードを置いたまま書類を広げても大丈夫だ。
この他に、外部公開サーバーと、HDDスロットが5つの内部用ファイルサーバーがある。あとはノートPCが2台、打ち合わせ用のデスクトップPCが1台。
ノートPCは徒歩携行用の軽量級で性能は最低限のものと車両運搬前提の重量級で高性能のものがある。今回持ち出すのは性能優先で重量級のものだ。作業能率向上のため、メインのキーボードとテンキー、マウス、予備電池、LANケーブルも鞄に詰める。重量級ノートは元々メインPCのトラブルに備えた備品でもあるから、3D制作さえ無ければ何とか仕事に使える。ディスプレイ出力端子があるので出来ればサブディスプレイも1台くらい持っていきたいところだが、うちのサブディスプレイは液晶の癖に1台につき重量が10kgもあるのが問題だ。メインディスプレイに至っては20kgだ。病院内で持ち運ぶのに不便するし、何より置くテーブルが無いから持っていくだけ無駄というものだ。
総じてまあ何というか、馬鹿みたいに金をかけたPC環境なわけだが、要するにPC関連用品くらいしか贅沢する気がなかったわけだ、私は。他の嗜好品といえばゲームと漫画くらいだ。車も軽自動車、プレアデス重工製のアール・デュオ一台で十分間に合っている。大体私は用事が無ければ家から一歩も出たくないくらいのインドア派なのだ。元々家屋というのは居住者を守るように作られているのだから、家の中っていうのは安全だ。とても安心する。
しかしこれからは衣類や化粧品の出費があるから、その配分は幾らか考えた方が良さそうだ。また、目的のために外出する機会も増えるだろう。
そうそう、無駄に広い家に一人暮らしと言ったが、両親は既に死別している。どちらも結構な高齢だったから仕方ない。
父は寝食を別とすれば仕事をするか酒を飲むかの2つの状態しか見たことが無く、必然的にあまり会話の機会が無かったので、未だにどんな人だったのかよく分からない。
母は何というか感情むき出しの人物だった。筋を通した話が全く出来ない人で、常に自分が正しい前提でしか話をしないので、およそまともな会話が成立した覚えがない。酒で体を壊して父の方が先に逝ってしまったが、今思うに、父はこんな母と会話したくなかったのではないかと思う。
そんなわけで両親が好きか嫌いかと言えば好きなわけがないのだが、しかし今こうして悠々自適の生活が出来るだけの遺産を残してくれたことに関しては、両親に感謝すべきだろう。
私には飛呂樹という兄がいる。現在存命中の唯一の肉親だ。しかしその兄はこの家には帰ってこない。福岡市内に構えた店舗にそのまま住んでいるので、帰ってくる必要が無いのだ。あちらにも居住スペースはあるし、こちらに帰ってくるのには結構時間がかかるから、店舗に住んだ方が合理的だ。遺産相続でこちらの自宅が私のもの、市内の店舗が兄のものとなっているから、都合も良いのだろう。
そのせいで自宅はほぼ1階部分しか使っておらず、2階は全くの無駄スペースになっている。使っているのはトイレくらいだ。というのも、トイレは1階が和式、2階が洋式になっている。私は和式トイレという奴が苦手で、なるべく使いたくないのだ。
さて、二階堂先生に言われていたこともあって、記憶障害の確認のために自宅や家族の様子をじっくりと思い出してみたが、やはり何一つ引っかかるところが無い。至って平常運転だ。
思い出しながら、必要な荷物は全て鞄に詰め込んだ。準備完了だ。外出予定時刻までにはまだまだ時間が残っている。
予定通りに時間が余ったので、寝室の姿見の前に立っていそいそと服を脱ぎ、下着姿になる。
ブラジャーがまだ無いので胸が丸出しになるが、下は一応女物のショーツを身につけている。いわゆるぱんいち状態だ。
大きめの尻とショーツの組み合わせがなかなか素晴らしい。この顔もボディラインも、到底33歳のものではない。見た目の年齢は20歳弱程度、高校生~大学生くらいというのが相応しいだろう。むしろ年齢を正直に答えると信じてもらえないであろうほどに可愛らしく、魅力的だ。恥ずかしげもなくこんなことを考えている私は大したナルシストだが、認識としては大きく間違っていない筈だ。
ショーツはさっき山際さんに買い出しついでに調達してもらったものだ。ブラジャーも一緒に頼んでいたのだが、Gカップのものはどうやら量販店の衣類売り場には無かったらしい。まあブラは無くてもしばらくは何とかなるだろう。とりあえず用意してもらったショーツは、高級なものではないがデザイン的に安っぽくはなく、変に少女趣味やおばさん趣味でもないので、なかなか気に入っている。そういえば伸び放題の髪を寝ている間にカットしてくれたのも山際さんだったと聞いている。私としてはロングに多少の憧れがあるのは否めないが、実際問題として髪が長すぎると管理が大変なので、女初心者の私にはこのくらいが丁度いい。
そういったところも含めて、山際さんは元男で現在女という私の状況や心理をよく理解して世話をしてくれている。看護のプロは伊達じゃない。
ぱんいち姿をひとしきり眺めた後、これを脱ぎ捨てる。下着姿も素敵だが、やはり全裸には敵わない。この襲ってくれと言わんばかりの無防備感が何とも言えない。それだけで興奮してしまう。
では張り切って始めようではないか。私の新たな身体の特性検証を。
まずは鏡に向かって口を開けてみる。女の顔にしては口が若干大きめのような気がするが、これはこれでちんちんを咥えやすそうなのでOKだ。
あまり気持ちよくはなさそうだが、女になったからには口淫、いわゆるフェラチオやイラマチオという行為にも興味がある。元男としてはあんなもの咥えるのは嫌だという嫌悪感が無いわけではないが、私は身体性ベースの異性愛者なので、使える穴は積極的に使っていきたいという欲求の方が強い。また、フェラチオ程度の普通の性行為が出来ないようでは、性の権化たる私の沽券に関わる。
実は想像力をより豊かにするために以前精液を舐めてみたことがあるのだが、精液というのは勿論美味しくは無いものの、少し我慢すれば飲めない味でもないようなのだ。具体的には鼻水を濃縮したような、塩味が主体のしょっぱにがい味だった。膣内の酸性を中和する塩基性の苦みというわけだ。流石にあれをコップ一杯飲めと言われたら躊躇するが、一度や二度の射精量であれば飲むのは案外容易いのではなかろうか。
ところで、開けた口に何を突っ込むかという問題だが、丁度いいことに冷凍庫にアイスミルクバーがあった。溶けるまでの時間が限られるが、これを陰茎に見立てることにしよう。
アイスバーを歯を立てないように口の中へいざなう。フェラチオというのはまず歯を立てないのは基本として、そこからどうすれば気持ち良くさせられるのかを積極的に考えなくてはならない。使えるのは手、唇、舌、口腔、喉、それから表情だ。される側からすると唇で強く吸いついた方が気持ちいいのかもしれないが、やはりそれを最優先にすると頬が窪んで口先が尖り、ひょっとこ顔になるのが避けられない。うん、今やってみて軽く絶望した。淫靡な表情は望むところだが、面白顔になってしまうのは絶対に駄目だ。ともあれ、先に独りで試してみて良かった。かくなる上は、唇の吸いつきはそこそこにして、他の要素により多くのリソースを割いた方が良いだろう。私は面白顔を晒すくらいなら喉を使う方を選ぶ。
アイスバーで喉の奥を突っついてみると、多少の嘔吐感が込み上げてくるものの、何とか我慢できるレベルだ。もう少し奥へ行けるだろうか、と試してみるものの、抵抗が激しくなかなか奥へ入らない。苦戦しているうちに、口の端から溶けたアイスが垂れてきた。これはこれでありのような気もする。こう、精液的な白濁を唇から垂らして上目遣いで…表情が今一つだな。いや、妙案を思いついた。フェラチオしながら空いた手で自慰をすれば、もっと悩ましげな表情になるに違いない。
生憎もうアイスが溶けてしまって、喉の使い方のコツが掴めなかったが、まあこれについてはぶっつけ本番だとしても相手に突っ込んで犯してもらえばいいだけなので、何とかなるだろう。フェラチオじゃなくてイラマチオになってしまうけれども、そもそも私は女の立場としては何かするよりされる方が好きなのだ。
顎まで垂れたアイスを指で掬って舐め、アイス棒をゴミ箱に投げ入れると、次の狙いを定める。
次は胸だ。乳だ。乳房だ。いわゆるおっぱいだ。この膨らみを両手で下から掬い上げ、遠慮なく鷲掴みにする。
掴んだ方からすると、女の手では手に余るサイズ、恐らく男の手なら丁度いいくらいだろう。掴まれた方の感覚は、これはおよそ予想通りで、即効性の刺激ではないが、甘い感覚に気分が高まっていく感じがする。
揉む、握る、引っ張る、つつく、こねる、絞り上げる。
適度な刺激だ。力加減さえ間違わなければシンプルに気持ちがいい。揉んで良し揉まれて良しとはこのことか。元男の身としては、これを誰はばかることなく揉み放題というだけでも破格の幸運だ。とても幸せな気分だ。
よし、次の確認だ。乳腺はどこだ。
乳房を掴み上げ、乳首を顔の前に持ってきて観察してみる。
以前調べたところによると、医療行為の一種で乳管内視鏡検査というものがあり、検査の際に乳腺に0.7mm程度の管を通すらしい。だとすると、乳首には少なくともシャープペンシルの芯が通る程度の穴があいているはずなのだ。
響「これか…?」
よく観察した結果、乳首の中央あたりにそれらしい部位が認められたので、指で触れてみる。
響「んぅ…!」
ダイレクトな刺激に、思わぬ声が出る。先程からの周囲への刺激だけで、乳首は既に勃ってしまっている。流石、女の乳首はあらゆる意味で実用性がある。おっぱい様は偉大なのだ。
先端を探ってみると、何となく窪んでいるのはわかるものの、穴の径が1mm以下だと流石に指で簡単に拡げられるものではない。
穴が存在する以上、拡げさえすればファンタジーセックスの代名詞とも言われるニプルファック、いわゆる乳腺セックスが可能になると思うのだが、この穴を実用可能なサイズまで拡げるのは確かに難しそうだ。
一方で私は乳首ピアスというものにとても惹かれるのだが、見た目はいいとして、実用的に乳腺拡張と両立しがたいのが悩みどころだ。頑張って乳腺を拡げられたとしても、ピアスが邪魔で挿入できないのでは意味がない。また、普通に授乳に使用する場合にもピアスが邪魔で母乳の出が悪くなるのではまずい。何か両立が可能な革新的方策は無いものか、今後の課題としよう。
まあ、指ではどうにもならないことだし、適切な道具も持ち合わせが無いので、とりあえず乳腺拡張やピアッシングはペンディングだ。先に乳首の感度を確認してみよう。
勃起乳首を両手の人差し指と中指でつまみ、ひねり、引っ張り、押しつぶし、好きなようにいじり倒す。同時に他の指で乳房自体を揉みつぶす。
響「あっ…はあ…ァん…」
気持ちいい。すごく気持ちいい。気持ち良すぎて変な声出てる。この時点で既にちんちんいじるのと同等以上の気持ちよさになっている。自分でいじってこの気持ちよさなら、他の人に好きなようにしてもらったらどんなに気持ちいいのだろう。
想像した途端、股間から何かが溢れる感覚があった。
内腿をすり合わせてみると、何らかの分泌液で濡れているのが分かる。小水ではなさそうだ。なるほど、直接触らなくても濡れるんだな。
多分さっき山際さんに体中触られた時も同じようになってたと思うのだが、触られた順番を覚えていないので、この現象については今やっと確認できた。
というか山際さんは私が気持ち良くなって股間が濡れていたのを勿論分かっていて、濡れては拭かれ、拭かれては濡れての繰り返しだったので、どうしようもなかった。
まあいい、今はおっぱいだ。乳首いじりがちんちんいじりより気持ちいいのなら、恐らくこの刺激だけでイけるはずだ。
乳房の根元から搾乳するような動きを加えて、更に乳首を刺激する。刺激が身体の芯まで浸透して、甘い声が漏れる。
響「んっ…あっ…あんっ」
身体が芯から熱くなる。頭が熱に浮かされて朦朧としてくる。股間から溢れる液体の量も増えている。
フィードバック制御の要領で女の身体の反応に従い的確に責めると、ほぼ期待分の結果が得られる。しかしこれではまだ絶頂には遠い気がする。ならばどうするか、と考えた時、奇妙な確信に至った。
それまで慎重に触っていた乳房を強く握りしめ、乳首をつねって乱暴にいじめてみる。
響「い、んあっ! …あ、は…あっああん!」
鏡の中のおっぱいがいやらしい形に歪むのが分かる。そして私の顔はというと、快楽に蕩けて実に悩ましげな表情をたたえている。やはりこれだ。女の身体に男の欲望を詰め込んだのが今の私、松下 響という存在だ。大人しく女の流儀で自慰をする必要は無い。男の感性で女の身体をやりたいように嬲ってやればいい。そうしてやることで、滅茶苦茶に嬲られたいと願っている私の女の身体が満足するのだ。
響「あっ、ああん! おっぱい、滅茶苦茶にされて、す、すごい、よぉ! これ、い、ん、ああああああああん!」
胸の頂の気持ちいいボタンから執拗に送り込まれる快楽が閾値を超え、絶頂に達する。
あまりの刺激に膝が震えて足の力が抜け、たまらずベッドに倒れ込んで仰向けに寝転がる。
いける。この身体は胸だけでもイける。
世の中にはオーガズムを経験したことが無い女性も多いと聞くが、それと比べておっぱいだけでも絶頂に達することができる私の身体の感度は十分に高いと見て間違いないだろう。まあ、私が自慰に慣れているせいもあるかもしれないが。
絶頂の余韻を愉しむべく、おっぱいをこねまわしてみる。
響「んっ…いい…」
気持ちいい。絶頂の瞬間には及ばないものの、まだまだ気持ちいい。流石は女の身体、男と違って絶頂の長さが段違いだ。
暫くそれを堪能した後、引き続き女性器の状態を目視確認するため、枕を引き寄せて視界を確保し、大股を開いた股間を鏡に向けてみる。
鏡越しとはいえ、初めて見る女性器に緊張する。どうして初めてなのかって、そりゃあ童貞だったからに決まってるだろう。一応恋愛らしきものをしたことはあるが肉体関係には至らず、結局あんな面倒なものは二度と御免だと思ったものだ。まあ、以前と違って今の状態ならそんなに苦労しないと思うが。
鏡の向こう、一番下に見える穴は、肛門だ。元々あるから間違いない。その上にあるのはスリット状の部位で、陰毛も生えてないのでここだけ見ると幼女かと思うくらいだ。勿論尻の方にも毛は生えていなくて、なかなか理想的な状態だ。
この真一文字スリットの一番上に確か陰核、クリトリスというのがある筈なんだが、どうやら見事に皮をかぶっているようだ。女になっても包茎とは因果なものだが、一応先端は見えている。確か女の場合仮性包茎は普通だった筈だ。よし問題ない。ちょっくら剥いてみよ
響「んぐうっ!?」
我ながら素っ頓狂な奇声だと思うものの、あまりのことに、暫く事態を把握できなかった。
少し時間を置いて冷静になってみると、どうやらうっかり陰核亀頭に爪を引っ掛けたらしい。とんでもない刺激が脳天を直撃した。刺激レベルが高すぎて痛いのか気持ちいいのかわからない。衝撃度で言えば、ちんちんをジッパーに挟んだくらいの衝撃だ。爪が引っ掛かっただけなのに。なんてこった。
気を取り直して、慎重に包皮を剥いてみると、可愛らしいサイズのクリトリスが頭を出した。これを撫でる。指の腹で優しく撫でる。確かに気持ちいい。気持ちよさのレベルでいえば過剰なくらいなのだが…なんか違う。気持ちよさの種類がおっぱいとは微妙に違うのだ。
そうだ、これはあれだ、陰茎の先端に神経を圧縮して高濃度にした感じだ。先程ちんちんをジッパーに挟んだような痛みと喩えたが、やはり陰核は男の陰茎に相当する部位だけあって、痛みだけでなく快感もそれっぽい感じなのだ。勿論、慣れ親しんだ種類の刺激であるから、この部位で絶頂に達するイメージは容易に想像できる。ここだけ責めれば容易に絶頂に達することができるだろう。しかし親しみがありすぎることに加え、どうあがいても肉棒を突っ込んでもらえない部位というところが今一つ面白くない。
気を取り直して、陰核から肛門の手前まで真一文字のスリットを形成する無毛の大陰唇を直接触ってみる。案外ぽってりとした肉厚のもののようだ。もりまんというやつだろうか。ふと思いついて、閉じたまま右手で大陰唇全体を掴んで揉みほぐしてみる。
響「あッ…はあ…あはァ…」
何だこれ、気持ちいい。大陰唇を揉みほぐすと、これまでに分泌された液体で、膣前庭あたりの女性部分がぬちゅりぬちゅりと混ぜ返されている。なんていやらしい音だろう。
気に入ったいやらしい自慰行為をしばらく続け、十分にほぐれたところで大陰唇を左右に開いてみると、すっかり蒸し上がった女性器全体が顔を出した。とろとろのほかほかで、濃厚な女の匂いがする。勿論私自身も気持ち良くなって、犬のように舌を垂らして次の刺激を待っている。なんていやらしく、浅ましい顔だろうか。私が男なら後先考えずに襲いかかっていても不思議ではない。
大陰唇の内側から顔を出したものを鏡越しに観察する。小陰唇は濡れそぼって泡をまとっている。どうやら熱心にシェイクしすぎて、いくらか泡立ってしまったようだ。その小陰唇の内側に膣前庭があり、そこに縦に穴が二つ並んでいる。上の方の爪楊枝サイズの穴が尿道で、下の方の指が入りそうな穴が膣穴に違いない。比較対象が無いので本当のところはわからないが、膣穴は結構尻穴に近いところにあり、やや下付きのように見える。後背位、バックスタイルに興味津々な私としては、嬉しいレイアウト構成だ。
尿道や膣穴の周囲にいくつか細かい穴があるようだが、スキーン腺とかバルトリン腺とかそういうあれだろうか。とりあえず尿道より細かい穴は何も突っ込むことが出来ないだろうから、当面気にする必要がなさそうだ。
さて、見たところ女性器全体を濡らしている液体は膣穴から零れ出ている模様だ。恐らく膣分泌液、俗に愛液とかまんじるとかラブジュースとか言われてるやつだろう。胸を触っていただけで外まで零れてしまったほどであるから、私は結構濡れやすい体質らしい。便利なようで何よりだ。
興味本位でそれを指で掬ってみる。粘性があるようだ。味の方は…やはり精液同様に美味しくはないな。塩味主体で、少し酸っぱい感じがする。確か普段の膣内は強酸性で、精液の受け入れ準備のために中性に傾くらしいので、あんまり酸っぱくないということは受け入れ準備が出来ているということだろう。
鏡越しに膣穴の中を観察する。穴の形は星型状、サイズは指が一本通るかどうかというところだろう。
試しに中指を挿入れてみる。星型の張り出しに触れているが、触れられた方にはあまり触られている実感がない。ただ、膜全体が引っ張られることで多少の挿入感がある。
中指を折り返すと、入口の直後から穴の径が大きく広がっているのが分かる。ということは、この入口の直径を狭めている部分が処女膜ということで間違いなさそうだ。
なるほど、私の処女膜は一つ穴の星型ということらしい。33歳で女を始めたのに、今になってご丁寧に処女膜まで作ってくれるとは、もう感動していいのやらどうしていいのやら。
折り返した中指で処女膜の裏側を触ってみる。裏側も触られた感覚がほとんどない。膜の周囲が引っ張られている感覚がある程度だ。まあ処女膜自体には神経が無いらしいし、実際はこんなものだろう。処女膜が破れても血が出ないとか痛くないっていうのは普通にあるらしいし、えろげやえろまんがってフィクションだなー。幻想だなー。ロマンだなー。でも、あれはあれでいいものだ。
それはそれとして、膜の奥に隠れた膣内壁を触ってみる。
響「あ…これいい…」
まだ浅いところを触っているだけなのに、体の芯から熱くなるような刺激だ。新しい、女の快感だ。
膜の裏側の膣壁を指で撫でながら、更に気持ちいいポイントを探す。
指を軽く一周させると、処女膜の裏側、身体の背面側の方には大量の膣分泌液の水溜りが出来ていた。身体を寝かせている以上そうなるのは必然というものだが、それにしてもここから溢れただけであの量だったとは恐れ入る。
中指を限界まで奥に入れてみたが、流石に子宮頸部、いわゆる子宮口、ポルチオには届きそうにない。ゆくゆくは子宮口で絶頂するのが目標の一つなんだが、あまり処女膜に無理をさせたくないので今は諦めるとしよう。
確か前面側の浅い所にもう一つポイントがあったはずだが…。
響「ぅ…あっ」
他と比べて更に強い刺激が得られるポイントを発見。僅かに張り出した部分がある。これが噂のグレフェンベルク・スポットというやつに違いない。略さずに言うとなかなかかっこいい名前だ。
膨らんだ部分を中指の腹でこする。気持ちいい。頭がしびれてくる。
指で一か所こすっただけでこれなら、たくましい肉棒で肉穴全体を蹂躙されるとどんな快感になるのだろう。今からその時が楽しみで仕方がない。
ともあれ、無いものは仕方がないので、引き続き指で刺激を送り続ける。
セックスと言うからには、やはり膣内の刺激で絶頂に達するのを基本としたい。処女膜が邪魔で指一本程度しか使えないのがもどかしいが、処女膜を指や道具で破るのも忍びないので今は我慢する。やっぱり生涯に一度のことだから、生の肉棒で盛大にぶち抜いてもらいたいものだ。
そんなことを考えながら淡々と指で刺激していたのだが、どうやら何も工夫しなくてもこれだけで絶頂に達しそうな気配だ。というのも、鏡の中の肉穴がひくひくと蠢き、顔は今にも達しそうな表情をたたえている。それを改めて認識することで尚更気分が高まる。
響「んっ、うぅ、あっ、は、あぁ、い、イイん、いく、ひとりエッチで、指で、おまんこの、処女膜の裏側いじくりまわして、イくイく、イくぅっ!!」
全身が痙攣してその絶頂を告げる。なんとあっけない。指だけでこの有様では、おちんちんでイかされるのはもっと簡単かもしれない。しかしあっけない割にはその絶頂は噂にたがわぬ威力で、スタンガンでも喰らったかのように身体が言うことを聞かない。
響「ひは…はあ…す、すごい…オーガズムすごい…」
暫く身体を落ち着けると指くらいは動かせるようになり、また同じ箇所をいじると絶頂一歩手前の快感が湧きあがる。
これは危険だ。この身体は多分何度でもイける。
ベッドサイドに置いてある時計を見る。入浴時間を差っ引くと、もうあまり余裕がない。
膣から指を抜いて、尿道の入り口を触ってみる。乳腺などと比べるとはっきりとその入り口が確認できるが、やはりすぐに指が入るほどには拡がらないようだ。試しに小指を挿入してみようとしたが、爪が刺さるばかりで中には入らない。分かってはいたが、尿道セックスもハードルが高いな。
次はクレヴァスの終端に位置する肛門。またの名を尻穴、ケツ穴、菊座、菊門、またはアヌスだ。アヌスよりアナルと言った方が語感が良く、通りがいいような気もするが、名詞形はあくまでアヌス、或いはアヌシュだ。ただしケツアナルという造語は語感が面白いので、例外的にOKとしたい。卑語としてはケツマンコという呼び方もあるが、この名称は性器として完全熟成した尻穴に対して使いたい。初心者丸出しの私の尻穴では、まだまだケツマンコと称するに値しないということだ。頑張ってゆくゆくは立派なケツマンコに育てたい。
さて、尻穴の使用に際してまず気をつけなければならないのは衛生問題だ。
私は出来ればいつでも全部の肉穴を使用可能な状態でスタンバイしておきたいのだが、口腔や膣穴はともかく、尻穴の使用にはどうしたって直腸洗浄という前準備がいる。残念ながら美少女でも出るものは出るということを先程自分で確認して多少のショックを受けているのだが、そもそも食べたものが排泄プロセスを経ずにどこかに消えてしまったら人間じゃない。これがあるべき姿なのだ。
これから少々の間、汚い話が続くと思う。ここで一つ誤解されたくないのは、私はスカトロ行為についてはむしろ苦手だということだ。だからこそ、行為中に絶対にそういった非常事態にならないように確実に対処しておきたいのだ。この努力、お分かりいただけるだろうか。
尻穴使用の衛生問題を真面目に考えると、そもそもアナルセックスをしないか、或いはコンドームの着用が推奨されるところだが、希望としては出来れば生でしたい。しかし使用直前になって念入りに洗浄を行うのでは長時間待たせるために、飽きられるかもしくは待っていられずに突っ込まれるといった望ましくない事態が想定される。理想的には常に使用可能なように前もって腸内洗浄をしておきたいのだが、これをあまり頻繁にやるのも本来の排出機能が弱まる危険があるために推奨できないらしい。ということは、結局のところ性行為の可能性があるタイミングを読んで予めやっておくしかない。
また、先だって目星をつけておいた洗浄器具を使用する場合、直腸洗浄1サイクルで注入・排出併せて最短10分程度、それを2サイクル以上やって更に追加で10分程度は全部出し切るためにトイレに籠らなくてはならないので、合計すると1回の直腸洗浄は最短で30分はかかる。器具の準備と使用後の洗浄、乾燥の手間を含めると、実際はそれ以上だ。つまり、時間的にも毎日何度もやっていられない。まあ幸い出すものを全部出してしまえば丸1日以上は直腸を空にしておけることであるし、1日に2回洗浄を行う必要はまずないだろう。頻繁かつ確実に性行為が予想される場合でも、1日に1回洗浄しておけばいいわけだ。入院中は恐らく洗浄しても使用する機会が無いと思うが、なるべく早めに洗浄器具を調達し、一回試して洗浄工程を把握しておいた方がよいだろう。
ちなみに洗浄器具は一式で6千円程度で、洗浄液にはぬるま湯、生理食塩水、コーヒーなどと色々なものがあるようだが、コーヒーは民間療法すぎてあまりに胡散臭いので、ここは近所の美麻温泉で安価販売されている「飲める温泉水」を使おうと思う。参考までに、洗浄や殺菌というとアルコール洗浄のイメージが強いが、腸はアルコールをものすごい勢いで吸収してしまうのでそれは基本的に無しだ。無事でも酔っぱらってまともに行動ができなくなるし、最悪の場合急性アルコール中毒で死ぬケースもある。アルコール以外でも、雑菌を減らすために下手に薬品を使って殺菌しようとしても内臓を傷つけるリスクが増すばかりなので、結局のところ大量の清潔な水で何度も洗い流して希釈するのが最も確実で有効な手段だったりするわけだ。
尻穴の使用で衛生面の次に考慮するのは、ぬめりについてだ。
尻の穴には基本的に入口をぬめらせる機能が無い。或いはケツマンコと称されるほどの完全熟成状態ならば、もしかすると腸液でぬめらせるなどという離れ業が使えるのかもしれないが、私の尻穴は初心者もいいところなので何らかの外部要因に頼らざるを得ない。
外部要因としては、既に身体が興奮状態にあるのならば膣分泌液が使える。そうでなければ唾液で代用できるが、これは乾くのが意外と早いという欠点がある。完全に身体の外から持ってくる物では、ローションを使うのが一般的だ。ローションはこういった性行為をつつがなくこなすために作られたものであるから、効果は抜群の筈だ。ローションが無ければ実は代用でバナナが使えなくもない。実の部分を少しちぎって指先で潰し、尻の穴に塗りたくるのだ。まあとりあえず今は膣分泌液が大量に出ているので、これを塗りつけて使うことにする。
ところで、アナルセックス前にいちいちこれらを塗りつけて準備するのが面倒くさいと思った時にふと思い付いたのだが、直腸洗浄後についでに肛門の内側に一定量のローションを仕込んでおけば一石二鳥ではないだろうか。これを仕込んでおけば、使用直前に排泄の要領でローションを押し出すだけで準備完了になるわけだ。こんな問題に限ってあっさり解決方法が閃く私の頭はちょっとどうかしていると思うのだが、兎も角私は直腸洗浄にこの工程を入れておこうと思う。なお、ローションは匂いつきのものではなく、無香料もしくは消臭タイプのものにする予定だ。これは、尻から苺の匂いがしてもちょっとなあ、という単なる私の趣味だ。
少々熟慮が過ぎたような気もするが、アブノーマルセックスに用いる肉穴の中では口腔の次あたりというメジャーな地位を占めるこの穴の実態調査が本日最後の確認作業となる。
現在の衛生状態については、先程ウォシュレットの最強圧力で念入りに水洗しておいたから、水圧で届いた範囲についてはまず大丈夫だろう。
肛門を鏡に映し、まず両手で周囲の肉を引っ張って拡げてみる。多少は拡がったものの、案の定奥まで見えるほどにはならない。
次に、膣口から溢れだしている分泌液を手で掬って、菊のように閉じた括約筋に塗りつける。そのまま淫液まみれの右中指を挿入。
響「挿入って…きた…」
特に抵抗も無く、指一本がぬるりと挿入出来た。中指を奥まで入れると、第1関節を曲げて肛門の裏側を探ることが出来る。裏側も触られている感触は確かにあるが、快感としては肛門そのものの方が特に強く感じる。やはりこれも胸、膣、陰核とは違った種類の気持ちよさだ。
指一本を動かしてみた感じ、まだいけそうな感じがする。
続いて左の中指を挿入して見る。多少抵抗が強くなったものの、右中指同様に入れることが出来た。
両中指で肛門を押し開いてみると、指の間に少しだけ隙間が出来たが、やはり奥まで見えるほどではない。今度何か透明なものを挿入してライトアップ観察してみたいものだ。
一旦左中指を抜いて、代わりに右人差し指を挿入してみる。これはすんなり入ったので、立て続けに右薬指を挿入してみる。流石に圧迫感が強く、指全体が入らない。既に挿入していた2本の指をやや後退させることで、私の尻穴は漸く薬指を受け入れた。小指はもう入りそうにない。
とりあえず現状の限界は指3本弱というところのようだ。これだけ入れば普通のサイズの陰茎は受け入れられるはずだ。初心者にしては悪くない。
指3本を蠢かせると、むずむずとした感触が私の尻を襲う。くすぐったい快感。これも悪くはないが、どちらかというと挿入感、肛門全体が押し拡げられる感触の方に惹かれる。
奥まで入らないのがもどかしいが、指3本を束ねて抽送運動を開始する。ぎりぎりのところまでねじ込んで、入口付近まで後退させる。この排泄感、なかなかいい感じだ。
しかし仰向けのままではアナルセックスの気分が出ないので、寝返りを打って尻を上に向ける。うつ伏せになったことで、何かの匂いに気付いた。
匂いの元は自分の身体ではなく、枕だった。男の匂いがする。数日前までの、男だった自分の匂いだ。
枕に鼻を押し付けて強く息を吸い込むと、慣れすぎて無臭も同然だった筈の自分の匂いに女の身体が反応した。これはなんというか…たまらない。
枕なのだから、男の匂いとはいえ頭や首筋の匂いに過ぎないはずだ。それでも、自分の身体が今発している女の匂いと混ざって、男に抱かれているような錯覚に囚われる。
男に抱かれている。初めて、しかもアナルセックスで。処女のまま男の肉棒に尻の穴を貫かれている。
そうイメージした途端、私の尻の穴が欲しがっているのが分かった。
心臓の鼓動が激しいビートを刻み、それに応じて尻の穴も蠢いているのが感じられた。
欲求のままに、感じたままの言葉を吐き出す。
響「あっ…い、いいよ、もっといじめて、私のお尻の穴、滅茶苦茶に犯して」
その言葉を契機に、更に勢いを増した抽送が私の不浄の穴を襲う。私は枕に突っ伏したまま、自ら腰を振ってそれに応える。
響「あっ、あっ、あっ、ひぅ、ん、んんっ」
もはや口から出るのは言葉ではなく、感じるままの息遣いだけだ。
だらしなく舌を出し、涎も垂らして、ただ尻の穴に与えられる快楽に酔い痴れている。その痴態に理性の入る余地は無い。
イきたい。尻の穴を滅茶苦茶に犯されて、はしたなくイってしまいたい。
響「はっ、うん、ふぅ、お、おほォ、ん、んんーーーーーーーーーーーっ!!」
びくんと腰が跳ねる。来た、あの痙攣だ。尻を高く突き上げ、背筋を限界まで反ってその衝撃を受け止める。初めての試みでありながら、私は尻穴で絶頂することが出来たのだ。
私の尻を容赦なく犯していた抽送は既に止まっている。イメージ上では男の陰茎と見立てていたものだが、結局は私の手だから、他の部分と同じようにコントロールが利かなくなっているのだ。
ところでその私の手に何か液体が降りかかっているのに気付いた。勿論既に膣分泌液まみれにはなっていたが、それとは違う種類のようだ。小水でもなさそうだし、もしかしてこれが都市伝説に聞く潮というやつなのだろうか。
今回の調査で一つ気付いたことがある。それぞれの性感帯で気持ちよさの刺激レベルが違うのは勿論だが、どうやら気持ちよさの種類も少しずつ違う。だから、刺激のレベルで比べると陰核が最上位だとしても、他の部分が要らないということにはならない。オンリーワンだから、やっぱりそれぞれ必要なのだ。もしかすると単に気分的な問題かもしれないが、私は今回そう感じた。
気がつけば体中汗だくになっていた。予定通り、ひとっ風呂浴びてから病室に帰るとしよう。
男時代に男としてのセックスはとうとうしないままなので、比べられないのは少々残念だが、今後は女としてのセックスを存分にやってみたい。やりつくしたい。姦られつくしていきたい。そしてひとかどのビッチになりたい。それが私の、松下 響の第二の人生だ。何故なら私は重度の同一型TSF愛好者なのだから。
病室に荷物を運び込み、一息ついて思案する。
第二の人生計画(セカンドシーズン・プロジェクト)についてだ。
私は快楽主義者なので、人生は楽しんだ者が勝ちだと思っている。そして今後の人生において最大の楽しみとは、性行為に他ならない。
ゆえにこの計画においては、主に今後どのようなセックスライフを送っていくかというのが最大の焦点となる。
相手を適当に一人捕まえるというだけなら、話は簡単だ。誰でもいいならそのうち寄ってくる誰かの求愛にOKすればそれで済む。それも悪くないとは思うが、もう少し冷静に吟味していきたい。
まず目的だが、出来るだけ濃密な性行為を出来るだけ長く楽しみたい。これが最大の目標だ。これを達成するために相手を選定しなければならない。
つまり恋愛は手段なので、私が相手を好きになる必要はあまり無い。別に好きになっても問題はないが、そこは考慮する必要がない。しかし目的からして、その逆はある程度必要だ。出来るだけ私に夢中になってくれた方が濃密に楽しめるだろう。
相手は男か女かといえば、極力男であることが望ましい。女同士が絶対に駄目とは言わないが、挿入や射精が出来ないので行為の幅が狭くなる。ゆえに唯一の相手として選ぶことはしたくない。
相手の外見は、明らかに醜悪でなければこだわる必要はないだろう。むしろ自分が女性受けしないと思っている程度の男の方が、私に一途に入れこんでくれる可能性が高いので都合がいい。美形すぎて女に囲まれているような男や、女と見れば目移りするような軽薄男は時間の無駄なので相手にしない。既婚者や彼女持ちもこの点で除外だ。引きずるような面倒はなるべく避けたい。
性格はというと、実はこれが結構重要だ。傾向はサディストでもマゾヒストでも構わないが、話の通じない相手とは付き合えない。あまり贅沢は言いたくないが、なるべく論理的な話が出来る相手が望ましい。最低限、交渉の余地が無ければならない。
陰茎のサイズは、あまりにちっちゃいのは切なくなるが、まあ普通以上ならOKだろう。普通を上回る場合、太いのはありがたいが長すぎるのはありがたくない。根元まで入れることができず、密着感が足りなくなるからだ。
相手の体格にはそれほどこだわりはない。大柄のたくましい男に抱かれるのもいいし、見た目ショタっ子でも可愛ければOKだ。
巧さについてはなるべく巧い方がありがたいが、これは試行錯誤で何とかなるだろう。
性欲は強ければ強いほど望ましい。1発やって終わりでは私が満足できるはずがない。理想を言えば、一日に最低1時間、休日なら半日程度は性行為をしたい。しかし実際問題として、これを満たせない成人男性は結構多いのではないかと思う。その場合、あくまで当事者全員の同意を得た上でという条件がつくが、多人数と同時に関係を持つケースも考慮に入れるべきだろう。浮気だとか痴情のもつれだとかいう問題には私は関わり合いたくないので、こっそりという方向性はNGだ。
また、私の性行為のカバー範囲は比較的広い方であると認識しているので、ノーマルにこだわりすぎる堅物は避けていきたい。アナルセックス程度の初級変態行為を嫌がるような男ならこっちから願い下げだ。
次に、私自身について。
現在の私は少なくとも外見上において美少女と形容して差し支えない存在だ。自分で言うと信憑性が疑わしいが、世間の美的基準から大きく離れてないないと思う。言葉の定義に準拠するならば成人している時点で美少女ではないし、美しさより可愛らしさが前面に出ているので美女とも言い難い。しかし生憎これを一語で簡潔に言い表せる言葉を私は知らないので、少々回りくどいが「美少女的容姿」であると表現している。
一方で数日前まで、私が何の変哲もない33歳男性であったのも事実だ。男であった頃の外見はどこを取っても普通で、不細工でもないし美形でもない、異性に避けられることも無ければ寄ってくることも無い、そういうものだった。恋愛経験は全く無いわけではないが、性交の経験は恥ずかしながら無い。その方面の技術についてはほぼ全くの初心者と言っていいだろう。ただまあ、女とつがいになるにはある程度女心がわからなければならないが、男とつがいになるには男心が分かればよく、元男の私としてはある程度気心が知れているようなものなので、一つのアドバンテージと言える。それに加えて今の見た目があるので大概の男は騙し放題かもしれないが、人に恨まれると気分が悪いので、仁義に反する行為は極力しないことにする。
実際にサンプリング調査したわけではないので正確なことは言えないが、性行為に対する欲求は強い方だと自認している。今のところ公共の場でそういったことはしていないが、許容範囲的には一種の変態だと言って差し支えない。性癖については身体ベースの異性愛者で同一型のTSF愛好者であり、性行為の範囲としては残虐行為や行き過ぎた不衛生行為以外は大概の変態行為を積極的にやっていきたいと思っている。多くの場合においてこれは女性側がやりたがらないために実現しないのだが、そういった女性側の価値観を持っていない私にとっては全く問題がない。
かように性欲が強い私であるから、自分で1週間は大人しく入院することに決めたので我慢しているが、そのしがらみが無ければ一刻も早く誰かとセックスをしたい。或いは自分の身体をおかずにして妄想自慰に耽りたい。この病室というのは本当にそういう行為に向いていない。まあ、どうしても我慢できなくなった場合は外出許可を取ればいいので大丈夫だろう。
私は元々TSFが趣味なので、自分がTSした場合の想定演習は腐るほどやりこんでいる。想定演習とはいっても結局は仮想の性行為が目的なわけだが、状況があまりに不自然だとその行為に没頭できないので、勢い状況設定にもこだわってしまう。そのための準備は性行為に直接関係する女体の知識だけにとどまらず、生活面、社会面にも及んでいる。
人間というのは身体一つで完結するものではなく、生きていく上で必ず社会性というものが必要になる。そこで問題になるのが戸籍だ。外見が大きく変化した以上、以前の自分と同一人物であるという証明をどうにかしなくてはならない。同一人物であると認められなければ、私財を公に使うことが無理であるのは勿論、最大の問題は国籍がないということなので、居住権が無い。国外退去を求められたところで、海外の国籍も無いので退去先が無い。これは恐ろしいことだ。幸か不幸か、日本には日本国籍を持っていない人間が住める環境というのがあるにはあるのだが、出来ればそういう闇社会に御厄介になりたくはない。
つまりこういった状況においては、何とか周囲の人間に同一人物であることを認めさせていく地道な努力がどうしても必要となる。今回、そこを二階堂先生が公文書という形で解決してくれたのは本当にありがたいのだ。
ただまあ、今回のようにうまくいっていなかったとしても、私の場合は頼るアテが二人ほどいるにはいるのだ。これについてはまた後ほど述べようと思う。
幸いにして現在維持できている私の戸籍だが、性別についてはどうも今後も男のままになりそうだ。
というのも、性転換者の性別を変更申請するための法律、「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」というのがあるのだが、この設定条件が
一 二十歳以上であること。
二 現に婚姻をしていないこと。
三 現に未成年の子がいないこと。
四 生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること。
五 その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えていること。
となっている。つまり今現在の私は、完全に女としての機能を備えていることで却って四番の条件を満たさなくなってしまっているのだ。そもそもこの法律は名前の通り「性同一性障害者が性転換外科手術を行って生殖能力を失う」場合に適用されるのであって、「侵食性男性因子喪失症候群により外科手術なしで性別が変わり、異性の生殖能力をそなえる」というレアケースについては全く考慮されていない。
もしこの法令の条件に適合していれば比較的簡単な手続きで性別の変更が認められるのだが、そうでない以上は話を家庭裁判所に持ち込んで裁判所と争わなくてはならない。今のところ戸籍が男であることで困ることは別段無いので、そこまでして戸籍上の性別を変更する意欲は無いということだ。必要な事由が思いつくとすれば婚姻する場合だが、そもそも私には結婚願望というものが無いので、どうでもいいのだ。ただまあ、もし相手が強く望むのなら、結婚に応じる覚悟はある。どちらにせよ、その必要が出来てから裁判申し立ての用意をしても遅くはないだろう。
ただ、私は家事をあまり真面目にやったことが無い。特に食事に関しては時間がもったいないという理由で出来合いの総菜や外食・出前で済ませてきたので、料理の経験値が0に等しい。これから真面目に勉強すればある程度は出来るようになるかもしれないが、現時点での私のスキル傾向は、主婦に向いているとは到底言えないのだ。
少々横道に逸れたような気もするが、以上を踏まえて、現在アタックしていけそうな候補について考えてみる。
旧友の矢上 将君。彼は候補として外せない大本命だ。先ほど述べた「確実な同一人物証明が出来ない場合に頼れそうな人物」の一人がこの矢上君だ。何故なら彼は私と同じ重度のTSF愛好者で、しかも対面型。つまりTSヒロインが大好物なのだ。TSヒロインになってあれこれされたかった私とTSヒロインにあれこれしたい矢上君の間には現在鉄板の需給関係が成立しているわけだ。しかも私自身、TSFの親友ルートが大好きなのだ。近頃は親友というか旧友なのがあれだが、大した問題ではないだろう。そういうわけで、恐らく会いに行って事情を納得してもらえれば、あとはとんとん拍子で進むのではないかと思われる。一応補足しておくが、私も矢上君もホモやBLは苦手な部類の人間だ。
私の兄、松下 飛呂樹。「確実な同一人物証明が出来ない場合に頼れそうな人物」のもう一人がこの兄だ。身内だから頼るというのは勿論だが、兄は重度のシスコン、妹好きなのだ。自分で言うのもなんだが、私がこうして可愛い妹になってしまった以上、私が身体を許しさえすれば兄は躊躇わずに突き進むだろう。…話題に全然関係ないが、この「身体を許す」という女性サイド特有の表現はなんだか来るものがあるな。ゾクゾクする。そういえば兄さんは確か兄妹に限りアナルセックスにこだわっていたはずだが、普通のセックスは…まあ、お願いすれば聞いてくれるだろう。シスコンだから。なお、近親相姦の禁忌問題については、私にとってはむしろ御褒美だ。
救急救命士の有隅 慎吾さん。知り合ったばかりなのでまだ詳しいところはわからないが、体格ががっしりしていて体力があり、性格も純朴で問題なさそうだ。女として何らかの興味を持たれていることはほぼ確実であり、こちらが行動を起こせばまず問題なくゲットできそうだ。こちらから迫る場合も、命を救ってもらった恩返しなど、いくらでも理由はつけられる。ただ性癖がよく分かっておらず、私の変態性癖について来られるかどうかが不安なので、何にしろもう少し詳しく見てから判断した方がいいだろう。
eisenblitzのMetalicaクランのクランマスター、Master48さん。通称マスター。確か本名は四谷 八段だ。青森在住で、初めて会った時には筋肉質で2m越えの巨体に大層びびったもんだが、眼差しは優しく、性格は紳士そのものだ。性癖は自他共に認めるおっぱいマスターで、メガネスキーで、ケモ好き、調教好きだったはず。何で知ってるのかというと、普段気さくにエロゲの話をしていたりするからだ。住居が遠いのが難点だが、その手腕には非常に興味がある。
あとは旧友にもう一人、浜中 篤というのがいるが、あいつは乗ってくるかどうか微妙だ。無類の女子高生好きだった筈だが、見た目はともかく私は女子高生じゃないからな。一応カウントだけはしておこう。ところで矢上、浜中、松下の3人で苗字から上中下トリオとか呼ばれていて、丁度背丈もこの順番なので覚えやすいと専らの評判だった。いや、私だって平均と比べて極端に小さいわけじゃなかったのだ。他の二人がでかいのだ。まあ女となった今としては、少しくらい小さい方が可愛らしくて都合が良いわけだが。念のため補足しておくと、私自身は長身の女傑のようなタイプも好きだ。しかし世間的に受けが良くない気がするので、ちやほやされたい私としてはそれでは都合がよくないのだ。
そういえば主治医の二階堂 信長先生はなかなか話せるいい男なんだが…EDなんだよな。少々めんどくさそうだが、ED克服の手伝いを名目に接近するのもありかもしれない。
それ以外は、適当にぶらついて男を引っ掛けるとか、合コンに出席するとか、そういう話になりそうだ。まあ多分、それでもゲットするのは難しくないと高をくくってるわけだが。
hibiki2s《というわけで、今日から33歳美少女になりましたので改めて宜しくお願いします。フレンドリーにひびきたんと呼んでも宜しいのですよ?》
Mesopota《キャーひびきたーん!…とか言わねえから! 残念!》
Tommyghil《じゃあ31歳ょぅι゛ょのとみーぎるたんも宜しく》
Tango《新手のロールプレイキタコレ》
Master48《ボクハヒビキタンヲシンジルヨ》
DJCQ《おォっといきなりの四面楚歌、hibikiさんが今まさに絶体絶命だァー!》
夜になって3日ぶりにIRC#Metalicaに入室したところ、いつもの冗談だと思われたらしく、案の定誰一人信じてはくれなかった。自分で美少女とか言ってる私も大概だが、美少女戦士だって自称なんだから別にいいだろう。
IRCというのはいわゆるインターネット・リレー・チャットで、多人数で一つのチャンネルに集まってプライベート会話をするのに適したシステムだ。#MetalicaというのがそのIRCチャンネルの一つで、MEGAのロボットTPS、eisenblitzのプレイヤークランの一つであるMetalicaクランのメンバーがいつもたむろしている。今日はたまたま常連がみんな集まっていて、報告するのに丁度良かった。
ここの面子は普段からチャット会話している連中で、OFF会で実際に会ったこともあるので、私がSF設定考証大好きなことも知れている。侵食性男性因子喪失症候群という病気でこうなったことは既に説明したが、「相変わらずの妄想力ですね」程度にしか認識されていない。
eisenblitzというのは大雑把に言うと「ロボットバトルアメフト」とも言うべき多人数対戦ゲームである。生身ではなく各々武装したロボットを使用するためアメフトと同じルールではないが、敵を倒すのが主目的ではなく敵の本拠地に侵攻してポイントを取り合うのが目的という意味では一般的なTPSよりアメフトに近く、スポーツライクなものがある。
ここでメンバーを各々のeisenblitzでの主な役回りを含めて簡単に紹介しておく。
hibiki2s : 到達マッチングレベル21、火力支援メインのマルチロール。機体は全用途におけるスピードと攻撃力に特化していて、装甲は最低の一歩手前。好きな武器はガトリング。アメフトで言うところのタイトエンドに当たるだろうか。本名は松下 響、いわゆるこの私である。IRCでの名前は当初hibikiにしようと思っていたが、サーバー上で使用済みだったのでhibiki2に、それも使用済みだったので結局hibiki2sになった。
Master48 : 到達マッチングレベル28、装甲・攻撃力特化。Metalicaクランのクランマスターであり、このIRCチャンネルのマスター。通称マスター。本名は四谷 八段。eisenblitzでは特に近距離戦闘での無双ぶりに定評があり、メインで使う武器がパイルバンカーというあり得ない装備なのだが、本人の体格を知っているとその一撃必殺ぶりにはわりかし納得せざるを得ないところがある。アメフトで言うところのライン、センター役をこなしている。
Tango : 到達マッチングレベル20、火力支援と偵察支援を兼任。特に戦線維持に定評がある。アメフトで言うところのラインマンだ。本名は霧島 友朗。ノリが軽く、かなりのコスプレ好き。
Mesopota : 到達マッチングレベル23、拠点侵攻特化。敵陣に侵攻して本拠地に打撃を与え、チームのポイントを稼ぐという重要な役であり、そのための技巧に長けている。アメフトで言うところのランニングバックだ。私も拠点侵攻装備は揃えているので状況に応じてお供することも多い。機体スピード自体はほぼ同じか私の方がわずかに速いくらいなのだが、Mesopotaさんは流石に専門だけあり、操作難度の高い侵攻ルートを平気で通過していくので、私が途中でついていけなくなることがある。その場合は私が囮になってMesopotaさんが突っ込むという役割分担になる。元々職業柄、守りが堅いマップが苦手というところはあるのだが、普通の侵攻型と違って守りが堅いマップでも構わず攻め続けるのでそういう場合は個人ポイントを稼げず、最悪レベル18まで落ちることがある。本名は久留宮 孝則。語調は強いのだが悪意はなく、サドっ気が強いというかツッコミ役。実際は結構気さくな人だ。
DJCQ : 到達マッチングレベル20、偵察支援メイン。堅実な索敵と連絡に定評がある。アメフトで言うところのクォーターバックやセーフティに近い。本名山田川 太三郎。DJを名乗るだけあり、本人は一見チャラ男のようななりをしていて、口数も多いのだが、撮影や解説が好きで、どうやらハメ撮りの類も好きらしい。
Tommyghil : 到達マッチングレベル23、狙撃と拠点侵攻を兼任。狙撃メインだけあって射撃精度に定評がある。アメフトでは丁度いいポジションが無いが、敵の行動を阻止するという意味でラインバッカーに近いだろうか。本名大野木 仁美。Metalicaレギュラー陣唯一の既婚者で、嫁さんゲットも一発必中だったとか何とか。性癖は詳しいことは分からないが、着衣性交が好きなようだ。
以上の6人がMetalicaの常連、いわゆるIRC#Metalicaメンバーである。eisenblitzは10対10なのでこれだけでは4人足りないが、IRCに参加していないクランメンバーや参加希望の野良プレイヤーを足してチームを構成するのが通例となっている。
eisenblitzの通常戦はマッチングレベル帯ごとに戦場を振り分けられるため、クラン戦以外ではみんな野良プレイとなる。マッチングレベルは1から始まって現在30まで存在し、戦場振り分け条件や、性能に関与しないアイテムの取得条件に利用されている。レベルにより自機の性能が変わることは一切なく、むしろプレイヤー自身の戦績をレベルとして評価したものであると言える。現在30まで存在するというのは、プレイヤーが到達したことがあるのが最高で30ということで、延々とスコアを稼いで勝ち続ければ理論上はもっと上のレベルに到達することができる。しかしレベル21以上の最高マッチング帯はただでさえ強豪ひしめくレベル帯の上、それまで以上にLP審査基準が厳しくなるため、今のところ31以上に到達できたプレイヤーがいないのである。
ちなみにこのマッチングレベルは、レベルポイント(LP)というものの蓄積で上下するようになっている。味方チームに貢献するほどLPが加算され、逆に足を引っ張ればLPが減算される。高レベルになるほどLPが減りやすく、レベルを上げるのが困難になる。これが顕著なのがレベル1からレベル10の初心者レベル帯で、何をしていてもLPが加算されるため、エスカレーター方式で自動的に11まで上がる。そこから真面目に勝つ気でプレイしていれば誰でも18程度までは上がると言われている。しかしここからレベル上昇が難しくなり、20と21の境目を超えるには不断の努力か才能が必要、26以上はその両方を併せ持つ戦略兵器と言われる。Metalicaでレベル26以上に到達しているのはマスターただ一人で、やはりずば抜けた強さを誇る。クラン全体としては強力なセンター役であるマスターを軸にしたライン戦主体のチームであると言えるが、拠点侵攻に特化しているMesopotaさんの突破能力も結構高く、戦況に応じて私やTommyghilさんが突入サポートを行うので、攻撃力も低くはない。
なお、各メンバーの紹介では「到達マッチングレベル」と書いているが、これは過去最高記録の表記である。例えば到達マッチングレベル21である私は過去最高記録が21だが、普段は19~20をうろうろしている。
最後に、先日までの私を含め、顔見知りの常連メンバー6人は全員男である。
hibiki2s《まあ信じてもらえないのは予想の範囲内ですとも。とりあえず今から写真撮りますから、数字8桁で指定ください》
Mesopota《22947362》
Tango《12482539で》
hibiki2s《じゃあ先着のめそぽさんの方を採用で》
DJCQ《よろー》
予め用意していた名刺の空きスペースに番号を書いて、これを左手に持つ。女であることを強調するのと、多少のサービスも兼ねて胸の谷間がはっきり見える程度に入院服のボタンを外して準備完了。テーブルの上のデジカメのシャッターを切る。PCに転送。見たところ、映りには問題が無いが、露光が若干足りてない。これをRAW現像編集して適切なガンマに調整、PNGにしてサーバーにアップロード。
hibiki2s《ハイコレ http://h2s.roheisen.net/xxx/xxx/xxx.png》
Mesopota《何の冗談かと思ったら彼女自慢ですかァァァァン? しかもリアル美少女ってどういうことなの。ていうかおっぱいでかくねえ!?》
Tango《マスター、ひびきたんがいじめるの! 可愛らしい巨乳彼女を武器にしてぼくらの心の傷を抉るの! 助けてマスター!》
Master48《助けてあげたいのは山々ですが、あまりの美巨乳に流石の私も致命傷です》
Tommyghil《メディーーーーック!》
hibiki2s《可愛い? 可愛い? 気のせいじゃなかったよやったー!》
Mesopota《畜生、勝ち組だからって調子に乗んなよマルチロール!》
DJCQ《病院で口説いて彼女ゲットとか、その発想は無かったっすわー。さあ気になる彼女さんの名前は次の行!↓》
hibiki2s《だから松下 響ですってば。>名前》
Mesopota《TSネタはもうわかった。いいからそのおっぱいを独り占めしないで我々同志にも紹介するんだ》
Tommyghil《この際もう本人でも何でもいいから、思い切ってめくっていただけませんかと》
hibiki2s《まあ、ぶっちゃけ見せびらかしに来たんですけどね》
Mesopota《爆発せよ!》
Tango《爆発せよ!》
DJCQ《何という連帯感w》
Master48《ではおっぱいをダブルで所望します》
Tango《流石はマスター、他人の彼女に対しても躊躇いがないぜw》
DJCQ《そこにしびれるあこがれるゥ!》
hibiki2s《おっぱいダブルお待ちー http://h2s.roheisen.net/xxx/xxx/xxx.png》
Tommyghil《!?》
Mesopota《でけえ…!!》
Tango《おッぱァァァァァい!!》
DJCQ《エロ可愛いにもほどがあるでしょうひびきたん(仮)》
hibiki2s《ご希望に添えましたかマスター?》
Master48《89のGと見ました! 今私は感動している》
hibiki2s《目視計測お見事ですマスター。ご満足いただけたようで何よりです》
Tango《G!?》
Mesopota《A,B,C,D,E,F,G…だと…!?》
DJCQ《GはGreatのG…ひびきたんグレート…そういうことか…!》
Tommyghil《89でG…有りうるのか…!?》
Master48《トップバストとアンダーバストの差が26cmほどあるので、Gカップですね。胸囲自体は珍しい大きさではありませんが、アンダーバストからウエストがかなり細いために、このサイズにして驚異的なカップが実現されています》
DJCQ《マスター必殺のおっぱいソムリエ技能が炸裂だァ!》
Mesopota《落ち着け…落ち着け…素数を数えるんだ…!》
Tango《しかしまあ、あれですね、自慢のためとはいえ、彼女さんの半裸を公衆送信するひびきたん(旧)の鬼畜っぷりも大したものですね》
Tommyghil《真面目な話、hibikiさんってたまに強烈に馬鹿なことするけど、一応良識あるから、彼女にこんな真似させるとは思えないんですけどねー》
Tango《でもあの人ビッチ大好きですよね。見たところ本人がノリノリでやってるようだし、そう考えると無理もないのでは》
DJCQ《エロ可愛くてノリもいい最高の彼女をゲットして人生の運を全て使い果たしたひびきたん(旧)に果たして明日はあるのか、いやない》
Mesopota《反語かよw》
Tommyghil《反語w》
hibiki2s《あの人っていうか本人ですよー。あとビッチは褒め言葉ですありがとう。でも普通の女の人に言ったらひっぱたかれるから気をつけるんだゾ?》
Mesopota《淫乱!》
DJCQ《変態!》
Tommyghil《ビッチ!》
Tango《ナイスビッチ!》
Master48《モホロビチッチ!》
hibiki2s《ごっつぁんです! でもいくら褒めても今日はここまでですからね?》
Mesopota《ェー》
hibiki2s《ェーじゃない。病室は鍵かかってないから危ないんですよ。はいネタばらし http://h2s.roheisen.net/xxx/xxx/xxx.png》
Tango《え、続きの写真かと思ったら何この証明書》
見せてみたのは二階堂先生に発行してもらった同一人物証明書だ。形態変化前後の写真がカラーで掲載されている他、二階堂医院の連絡先も書いてある。
hibiki2s《こんなこともあろうかと、この病院で発行してもらいました。Macropediaで病名調べてみるといいかもですよ》
Master48《実は先程からその記事を見てました http://xxx.macropedia.xxx/xxx》
Mesopota《何、ネタばらしってそっちの方向で?》
Tommyghil《え、ひびきたん(旧)が作った想像上の病名じゃないん?》
DJCQ《いやいやご冗談を》
hibiki2s《私は最初から冗談なんて言ってませんよ?》
Mesopota《正気かよ》
Master48《わかりました、ひびきたん(旧)=ひびきたん(G)であることをこの私が認定します》
Tango《G!?》
Mesopota《ひびきたん(G)!》
Tommyghil《(G)w》
DJCQ《マスターお墨付き(G)きたあ!》
hibiki2s《改めて宜しくお願いいたしますマスター》
Tango《いやいや、その病気で変化したとしても、何でそんな可愛らしい姿形に?》
hibiki2s《えーそれが、先生に聞いたところによるとですね》
Tommyghil《ふむふむ?》
hibiki2s《発病前に強く思い描いていた女性の形状に近づく傾向があるそうなんですが、私の場合単体完結のTSが好きなため、特定の女性ではなく架空の美少女的容姿を理想としていたので》
Master48《つまりTSF好きが高じて理想のTSに至った、と》
hibiki2s《TSF好きをこじらせたとも言いますね》
DJCQ《ひびきたん(G)のTSF力がマジパネェ》
Tango《提案します!》
Mesopota《なんだなんだ》
Master48《言ってみたまえ中佐》
Tango《衣装送るからコスプレ写真下さい>ひびきたん(G)》
Tommyghil《天才だ…天才がいるぞ》
hibiki2s《それなら、9日に退院するから、10日以降にうちに届くようにしていただけたらリクエストに応じますよ。送付先はさっきの名刺の所在地で》
Mesopota《やるのかよwww》
Tommyghil《ひびきたん(G)▲》
Tango《服のサイズは?》
hibiki2s《身長158.4cm、3サイズは上から89cm、50.7cm、90.1cm。胸のサイズはアンダーバスト63.1cmのGカップ。靴のサイズは23.5cm。今日測ったんで間違いないですよ》
Tommyghil《何その人形体型。 うちの奥さん泣きますよ?》
Master48《とみーさんの奥様だって十分細身なのに、ナントイウコトダ》
Mesopota《胸だけじゃなく尻もでかいのか…惹かれるな》
Tango《じゃあまずは基本セットのセーラー服、体操服、スクール水着、ヒモ水着、チア服、巫女服、ナース服、エプロン、メイド服、バニースーツ、猫耳スーツをサイズ合わせて一式送りますんでよろしく》
DJCQ《タンゴさんの「まずは」出た! これは本気ですぞー》
hibiki2s《了解、到着日時が分かったら連絡ください》
よし、Tangoさんなら衣装提供してくれると読んだのが大当たりだ。
Master48《ところで皆様、再度申し上げますが今年の親睦会の時期が迫っております》
DJCQ《あー、その話題途中でしたね》
Tango《ひびきたん(G)の登場ですっかり忘れていたのであった》
Master48《折角ですので福岡で開催しようかと》
Mesopota《あれマスター、さっき東京開催って》
Master48《臨機応変です》
Tango《みんなでひびきたん(G)となかよしこよししようというわけですねマスター》
hibiki2s《MJDSK》
Mesopota《ひびきたん(G)となかよしこよし…惹かれるな》
Tango《おらもおらもー》
DJCQ《東京在住としては予想外の出費ですが、なかよしのためにはやむなしでしょう》
Tommyghil《まあうちは奈良なんでどっちでも距離変わりませんし》
Master48《hibikiさんいかがです?》
hibiki2s《そうですねー》
ここで一つ補足しておくと、Metalica通例の隠語で「なかよし」というのは本来の仲良しから派生してキャッキャウフフ→イチャイチャ→ペッティング→セックスまでに及ぶ広範囲の意味を持つ。つまり、「みんなでなかよしこよし」というのは単純にお近づきになりたいという意味であるかもしれないし、乱交や輪姦のことかもしれない。文脈からして、少なくともTangoさん、Mesopotaさん、DJCQさんは何らかの意図があるように見えるが、皆様何とも乗り気でいらっしゃる。Tommyghilさんは既婚の筈だけど、どうするんだろうな。
hibiki2s《私のために開催地変更してもらうのに反対なんてしませんよ。あ、でも観光スポットとか全然知りませんからね》
Tango《ひびきたん(G)OKキター》
Mesopota《ヒャッハー!》
DJCQ《イイヤッホオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオウ!!(ガタッ)》
hibiki2s《うわ、テンション高くてうぜぇ》
Master48《はい、満場一致で可決となりました。今年の#Metalica親睦会及び総合火力演習は7/17(土)に福岡で開催といたします》
明らかに3人だけテンション高いんだものな。奴らときたら、やる気満々だ。まあいいさ、かかってくるがよいよ。
ただ、みんな住んでるところが別々でここから遠いからな…私はほぼ毎日相手してくれないと嫌だから遠距離恋愛なんかするつもりが無いし、結果的にやり逃げという形になるのは明白だ。
また、期日が2週間後だし、それまでに私が他の相手を見つけてしまう可能性も十分にある。その都合で相手できなさそうなら、誘いを断ろう。暗にそう言われただけで、セックスする約束をしたわけじゃないし、みんなある程度の良識はあるので引き下がるはずだ。
そういえば開催地変更を提案した当のマスターはどっちのつもりなんだろうか。
■2日目 – 2010年07月02日(金) – 晴天
今日は市民体育館に来ている。昨日指示された体力測定のためだ。流石に平日の市民体育館は人が少ない。
今日の服装はシンプルなTシャツにハーフパンツ姿。シャツは丈が若干だぶついている。屋内用シューズは中学時代のものが履けた。靴に名前が書いてあるのが少々恥ずかしいが、今回限りなので我慢することにする。
測定の手伝いには山際さんがついてきてくれている。看護師姿は流石に目立ちすぎるので、今日は私服だ。万が一の体調悪化に備えての用心も兼ねてだそうだ。二階堂医院側としては貴重な症例の患者を保護したいとかデータをより正確に取りたいとかいう意図もあるのだろうが、まあこういったフォローは普通に助かる。
測定はもうあらかた終わっていて、その結果はというと、体重が10kg以上減っているのに筋力については以前と変わらないレベルであるというものだった。なるほど、筋肉量あたりの瞬発力が2割~5割程度上がっているという二階堂先生の推測は当たりのようだ。まあ、以前と変わらないとは言っても元々インドア派の私なので、成人女子平均を大きく超えてはいるものの、成人男子平均と比べるとまだ劣る。しかし体重が減ったお陰で俊敏性が上がり、その方面のスコアは男子平均記録を幾らか超えているのだった。例えば屋外で測定した50m走では、最高7.20秒という結果が出た。元々の私は足が遅い方で、最高記録が7.75秒だったので、これよりは大分速くなっている。参考までに男子19歳平均は7.45秒、女子19歳平均は9.12秒だ。普通の女子って男子よりあからさまに足遅いのな。
この50m走については、新品の靴を3種類用意してそれぞれ1回ずつの測定を行った。結果は軽量シューズで7.20秒、重量シューズで7.32秒、ヒールが高い靴で7.50秒となった。何故こんな念入りに測定しているのかというと、どんな靴を履いていればどの程度のスピードが出るのかを護身のために予め知っておきたかったからだ。
私が最も懸念していたハイヒール時の速度は、予想に反して成人男子平均に若干劣る程度だった。というのも、全力で走る場合には踵を殆ど接地しないので、余程の高角度でない限りはヒールの存在は関係ないようなのだ。むしろハイヒールにありがちな爪先が細くなる形状の靴だと爪先の負担が大きくなるために長距離走れないのが問題になることが分かった。どちらかというとヒールそのものより爪先の形状に気をつけた方がいいようだ。また、踵を接地せずに走ることが前提になるため、爪先の底が曲がらない厚底の靴については、タイムを計るまでもなく論外だ。
次に重量シューズだが、今回用意したものは実は安全靴だ。主に工事現場などで用いられる、釘を踏んでも爪先に資材を落としても大丈夫な鉄板入りの靴。メジャーな安全靴はみんな革靴のような外見で面白くないのだが、今回使用しているものは安全靴の癖にシューズのような外見というところが気に入って、以前から特に意味もなくこれと同じ種類のものを使用しているのだった。というわけで以前はそのつもりは無かったが、これが護身用に使えるのではないかと思い付いたので、使用時のダッシュ速度を測定してみたのだ。
測定の結果としては重さのせいで普通のシューズより少々遅くなったが、7.32秒ならまだ成人男子平均を超えているし、走行時に尖ったものを踏んでも大丈夫というメリットもあるので十分実用可能だろう。
魅力的外見であるということは、つまり襲われるという事態も想定しなければならない。場合によってはそれを受け入れるという選択肢も勿論あるのだが、それはそれとして自力で回避するという選択の自由度も持っておきたい。そうするには捕まらないように走って逃げるのが一番簡単だ。幸いにして成人男子平均以上の素早さはあるようで一安心だが、それでも半分近くの相手は自分より足が速いはずだ。そこで、敢えて反撃に転じるという第二の手段を備えておこうということだ。流石に複数相手に通じるとは思えないが、相手がただのシューズと見誤って油断していれば一人くらいは撃退できるかもしれない。
ちなみにスタンガン装備というのも一応検討したが、ああいった道具を使うと相手に「武器使用OK」という認識が出来てしまい、防衛に失敗した場合により一層酷い目に遭う可能性が高い。そのため、なるべく相手に武器と認識されるようなものは使いたくない。見知らぬ男に犯されるだけならぎりぎり我慢できなくもないが、それに暴力行為が加わるような最悪の事態は何としても避けたいということだ。
ところで勿論予測していた問題ではあるのだが、今回の時点で未だにブラジャーを入手できておらず、胸が揺れて少々走りづらかった。適正サイズのものを入手して着用すればもう少しばかりタイムが向上するかもしれない。
揺れると言えば、平日なので大した人数はいなかったが、私の揺れ乳が周囲の注目を集めているのは明らかだった。しかも7月初旬の晴天の日に何度も全力疾走しているのだから、当然シャツは汗で身体に貼り付いていた。張り付いたシャツは胸の形を露わにするのは勿論、ノーブラだから肌が透けて見えてしまっていた。普通の女性であれば羞恥心で平静ではいられない状況かもしれないが、私は敢えて気付かないふりをして無防備にそれを晒していた。運動中であったから、幾らか顔が赤くなっても不自然とも思われないだろう。男の身であったならこんなことをしようなどとは露ほども思わないものだが、見せるに値する女の身体を有する今では、性的な目で見られるということが愉快で仕方がない。優越感で満たされる。そして、見られる快感で乳首が勃起してしまっているのも、恐らく丸見えだろう。
ともあれ、予定の測定スケジュールは完遂したことであるし、身体能力の傾向、見られる快感、そして周囲から見てもやはり魅力的であることが確認できたので、少々名残惜しいものの今日はここいらで大人しく撤退することにするのだった。
■3日目 – 2010年07月03日(土) – 曇り
今日は朝から勉強をしている。化粧や服飾ファッションについての勉強だ。
化粧については山際さんにメイクセットを借りて試行錯誤した結果、殆どする必要が無いという結論に至った。そもそも化粧というのは自分を出来るだけ綺麗に見せるために顔の造形に補正をかける作業であるから、不自然なほどに整った形状の上に肌も若々しいという現在の私の顔は補正する意味が無く、無理に化粧をすればするほどケバくなるだけだということが判明したのだ。まあ本職のメイクアーティストが手をかければそうでもないのかもしれないが、少なくとも私の素人メイクでは無理だ。よって、基本ノーメイクで問題はなく、メイクする場合でも肌の肌理を整えて口紅をつける程度の薄化粧で良いという結論に至った。変な流行のメイクを追っかける必要がなさそうで何よりだ。
化粧はそれで済んでよかったのだが、今しがた述べたように私は一過性の流行を追いかける労力を嫌うので、その影響で今まで服のファッションというのも全くチェックしてこなかった。仕事で外出する場合は背広を着ていればセンスなど関係無いので、業務上の問題にもならなかった。TSイメージトレーニングの一環として婦人服の構造を勉強したことはあるが、実際のファッションについてはどうせ時期ごとに変わるだろうという考えで碌に調べていない。つまり私にとっては服飾方面の方がより手ごわいということになる。
服は実際に店舗に行って試着してみるのが一番手っ取り早いとは思うのだが、まず入院中の限られた外出時間で品揃えの良い服飾店に行っても選ぶ時間を碌に取れないので、実際に行くのは退院後になる。また、店員さんは基本的にどんな服でも売ることが至上目的の筈なので、予備知識0で行った場合何を掴まされても文句が言えない。それに、予算を聞かれた場合に的確な数字を出せないと足許を見られる可能性が高い。そんなわけで最低限の予習としてファッション関係の情報を調べているのだが、これがなかなか頭が痛い。
調べれば調べるほど、モテカワだとか愛されだとかスイーツだとか、最先端の浮ついた語句が多数目に入ってきて眩暈がする。客層を的確に捉えてどんなに教養のない人間にも流行らせるというその言語センスはすごいのだが、やはりこれに従ったところでまともな結果が得られる気がしない。
かといってオタ知識の定番衣装といえばもうコスプレの領域なので、街頭宣伝の仕事でもないのにそんなものを着て外を出歩くのが間違いであることは私にだって分かる。たまに街頭で見かけるとはいえ、ゴシックロリータとかも無しだろう。
いっそ和服などの旧来のものが安定していて良さそうではあるのだが、今の私は出来れば体型が浮き出るような服の方がいいので、希望条件に一致しない。
結局のところ、自分で服をきちんと選んで着こなすしかなさそうだ。それには時間がかかりそうなので一旦ペンディングしておいて、まずは必要なものを一通り見ておこう。
ファッションといえばあのハンドバッグというのも面倒の一つだ。女の生活では身だしなみの一環として携帯用のメイクセット、生理用品、その他もろもろを持ち歩くのがほぼ必須になるのだが、普通の婦人服のポケットにそれを全部詰め込むのは若干無理があるので、手ぶらで長時間外出することができない。かといって大きなバッグを持ち歩くのも意味がないので、結局ハンドバッグという形に収束しているようなのだ。男で適正サイズの鞄を探した結果ハンドバッグを利用する例は勿論珍しくないが、その必然性の差からハンドバッグに対する価値観は男女間で大きく異なるように感じられる。男からすると何で女が高いバッグを欲しがるのか不思議だが、常に携行せざるを得ない必需品であるならば、高い携帯電話を欲しがるのと似たようなものとして納得できなくもない。というわけで、私も早めに見繕っておいた方がよさそうだ。とりあえず私としては使いやすく頑丈で防犯性が高ければそれでいいので、無駄に高くてケバいブランド品は候補から除外したい。
ブラのサイズが問題になっていた下着は、メーカーのページを見てみたところアンダーバスト62.5のGカップというのがオーダー一覧にあったので、若干のサイズ調整ができるものが手に入れば問題がなさそうだ。ただオーダーメイドで納品に1週間はかかるようなので、今のうちに1週間程度着回せる数を注文しておくことにする。普通の下着はそれで十分だろう。それはそれとして、色々調べてみると、要所が半透明仕様のえっちな下着とか、全く隠していない下着もどきとか、色々と出てきて面白い。需要があまりないのか、面積が少ないくせに値段が更に高いのがネックだが、納期もかかるしこの際ついでに買っておこう。
更にそこから飛躍して、大人のおもちゃも色々と見て回る。私に必須のローションや直腸洗浄器具は勿論、定番ではローター、バイブレータ、ディルド、アナルパール、アナル尻尾、電気マッサージ器、膣鏡、拘束ベルト、目隠し、猿轡などがある。定番でもオナホールやラブドールは男専用なので用がなさそうだが、最近の100万円クラスの高級ラブドールの造形美はすごいなと素直に感心する。
更にキワモノを見ていくと、段階的に肉穴を拡張していくための拡張風船、専用下着に固定して電動ピストンし続けるディルド、棒や指、陰茎などの先端に装着して膣内や直腸内をリアルタイム撮影する無線通信・照明・集音機能つき超小型CCDカメラ、パイプを子宮口に突っ込んで精液を注ぎ込む妊娠補助具なんてものもあったりして、なかなか楽しい。特にこの妊娠補助具が傑作で、コンパクトながらやたら機能が充実しており、やろうと思えば処女妊娠や疑似妊娠、或いはその合わせ技が実現できる仕組みだ。考えた奴は天才じゃないだろうか。でも需要が無くて売れないと思うので、メーカーがつぶれないうちに買っておこう。
などと考えていたら、部屋のドアをノックする音が聞こえた。
手早くブラウザのタブを閉じてダミーのeisenblitzのユーザー専用ページを開く。
響「はいどうぞー」
有隅「こんにちは、有隅です」
響「おや、こんにちは有隅さん」
一昨日あんなの目撃したから慎重になってるんだな。それにしてもまめに来る人だ。
有隅「お忙しいところお邪魔して申し訳ありません」
響「いえ、そうでもないですよ。調べものしてただけですし」
ダミーで開いたeisenblitzのユーザー専用ページを見せる。とはいえ、ファッション調査の前にeisenblitzの情報も確認していたので、嘘ではない。
有隅「あれ、これeisenblitzの?」
響「ご存じなんですか?」
有隅「ええ、結構やりこんでまして。これでもロボットゲームは好きなんですよ」
響「そうなんですか。宜しければパイロットネーム教えていただけますか?」
有隅「braveRSQです」
響「b,r,a,v,e,R,S,Q…ですか?」
有隅「そうそう、それです」
検索フォームにタイプしながら確認する。勇者レスキューか…本職救急救命士の有隅さんらしい名前だが、この勇ましい名前は過去に見たことある気がする。
検索を実行すると公開ユーザー情報が提示される。現在レベル19、トータルプレイ時間は私の1/4ほどで、ポジションは支援・偵察メインのようだ。勝率は50%ラインをキープしている。マッチングレベルは高くないが、真面目にやっているように見受けられる。
響「ゲームでまでレスキューしてるんですか有隅さん。本職にもほどがあるでしょう」
有隅「いや、好きでやってる仕事なもんで、救助して回るのが楽しいんですよ」
響「多分私もレスキューしてもらったことありますよ。この名前見たことありません?」
自分のユーザー情報ページを見せてみる。パイロットネームは「hibiki」だ。
有隅「あー、見たことありますよ。これ松下さんだったんですか。1回の対戦で戦場のあちこちをかけずり回ってましたよね」
響「足りないところを補うためのマルチロールですから。この間は敵拠点で蜂の巣にされたところを叩き起こしてもらって助かりました」
有隅「いえ、こちらこそ勝たせていただきまして。しかしこれピーキーなアセンブルですね」
共通の話題が出来たせいか、有隅さんの喋りが前回に比べて流暢だ。私も喋りやすくて助かる。
響「お分かりいただけますか。全ポジションの装備で火力とスピードを追求した結果、装甲が犠牲になっているという状態なんですが」
有隅「戦闘辛くないですか?」
響「本職と火力の押し合いになると、結構辛いですね」
どのくらい辛いかと言うと、以前、新品状態の自機で耐久残り2割のマスターに襲いかかって返り討ちにあったこともある。マスターが強すぎるせいもあるが、あれは泣けた。
そんなわけでどちらかというと本拠地侵攻に向いているアセンブルなのだが、それに限らず全ての装備で一定以上のスピードと火力をキープできるため、これを気に入って使っている。
響「ところで今日はどんなご用で?」
有隅「ああ、いえその…あれ、メイク変えました?」
ん、一旦話題逸らした? 話しにくい用件だろうか。
響「ああ、これですか。変えたというか、今まで化粧というものをしたことが無かったので、初心者なりに試行錯誤してみたらこうなりました。どこかおかしいでしょうか」
有隅「いやいや全く問題ないですよ! というかノーメイクですら十分以上にお綺麗ですよ!」
響「あはは、ありがとうございます」
有隅「で、その、用件なんですけれども」
響「はい」
有隅「ご、ご連絡先を教えていただきたく」
…ははーん?
響「あーその、携帯の番号とかメールアドレスですか?」
有隅「はい! 大変不躾なお願いとは思うのですが、その、お願いしたく」
響「これでいいですか?」
名刺の裏にプライベートの連絡先を書いて渡す。携帯電話はプライベートと仕事用で分けてないので、名刺の番号に丸囲みをつけただけだ。
有隅「え」
響「いやここ病室なんで、携帯の電源入れることができなくて。メールアドレスはPC用のですから、今はこちらの方が通じやすいと…どうかしました?」
有隅「あ! …いえ、そんな簡単に教えていただけるとは思ってませんでしたので」
あー、普通の美人だともっとガード堅いんだろうな。でも私はそういうのじゃないからな。
響「いやいや、有隅さんが身構えすぎなんですよ。電話は退院するまで取れませんから、あとで留守電にお名前入れておいて下さいね」
有隅「ありがとうございます、今日中に必ず連絡します!」
響「どういたしまして」
なんか感謝されてるけど、こっちとしては何もしなくても有隅さんが攻略フラグ立ててくれるので好都合だったりするわけだ。
それから暫く雑談をした後、有隅さんは帰って行ったのだが、それから数分でもうメールが飛んできた。しかも時候の挨拶から書いてある。律儀というか積極的というか、まあこういう人は嫌いではない。
■4日目 – 2010年07月04日(日) – 曇り
今日は待ちに待ったTSF新作ゲームの発売日…なのだが。
依然入院中であるため、まず荷物を受け取ることができない。
よしんば受け取れたとして、鍵の無い病室にいなければならないわけなので、容易にプレイすることができない。
ただまあ、現在TSFゲームをやるよりももっと刺激的な事態に陥っているのは喜ばしいことなので、ゲームを我慢するくらいはお安い御用だ。
昨日探しまわった大人の玩具については、大した値段ではないものについては根こそぎ買い漁った。超小型CCDカメラだけは値段が30万を超えていたので、今後必要を感じた場合に検討しようと思う。
昨日注文した下着や大人の玩具は、退院の次の日に到着予定だ。
Tangoさんが連絡があって、コスプレ衣装もサイズ合わせが終わったので退院翌日に予定通り届くらしい。楽しみだ。
■5日目 – 2010年07月05日(月) – 晴天
今日は気分が悪い。おなかが痛い。股間からの断続的出血に悩まされている。
というのも、どうやら生理が始まってしまったようなのだ。先日女になったばかりなので33歳で初めてということになるのだが、これも初潮と呼んでよいものだろうか。
ともあれ、私の身体は本当に妊娠する準備ができてしまっているようだ。
幸いここは病院なので生理用品は簡単に手に入る。生理の時の処置の仕方も丁寧に教えてもらえたので、今回は入院していてラッキーだったかもしれない。
しかし、毎月3日程度、要するに人生の1/10程度の時間をこの状態で過ごすのかと思うと少々気分が重い。女とは不便なものだ。
ただまあ、私のこの症状は程度的には比較的軽いものであるらしく、生理が重い女性でも何とか日常生活を送っていることを考えると、慣れれば何とかなるのかもしれない。
なので今日は敢えて普段通りに仕事をこなすこととした。腹痛に見舞われながら納期間際の仕事をこなしたことくらいはあるので、まあ何とかなるだろう。
…と、当初は思っていたのだが、現在、生理とは全く別の問題で仕事が中断されている。
俊紀「ば、ばかな、きさましんだはずではー!? ウギャアー! ゴゴゴゴゴゴ ふっ、わるいな、このおれさまは…ふじみなのよ! ドドン!」
何を隠そう、今、私の膝の上では今日知り合ったばかりの少年が週刊少年アクセルを音読している。とても仕事ができる状態ではない。
どうしてこうなったのかと言えば、若干説明が長くなるのだが、まず今日は月曜日である。そして私は毎週月曜日に週刊少年アクセルを購読することにしている。私は漫画が好きなので色々と読むのだが、このアクセルは子供の頃から読み続けていて、かれこれ23年くらいになる。33歳にもなって少年漫画か、と言われそうな気もするが、私自身はともかく、少年漫画を馬鹿にしてはいけない。少年漫画というのはとにかく面白さを追求しているだけあって、読みごたえがあるのだ。既に成人である私は成年漫画も勿論読むが、あちらは性的実用が第一の目的とされるものであるからして、同じ漫画と言っても用途が違う。中には表現の自由度を生かした本当に面白い成年漫画もあるにはあるが、そういうのは稀だ。青年漫画はその中間の半端なところにあるので、少年漫画や成年漫画と比べて読む漫画が少ない。少女漫画はその独特の雰囲気が苦手なのであまり読まないが、ごく稀に面白いのを見つけたら読むことがある。幼年漫画は流石にもう読む気は無い。
それで、その週刊少年アクセルだが、生理痛で外に買いに行くのが面倒なのでどうしようかと思っていたら、幸いなことに院内の売店で売っているのを見つけたのだ。
ただ、昼過ぎに私が購入したのが最後の一冊で、その直後に買い求めに来た松葉杖の少年がすこぶる残念そうな顔をしていた。その様子があんまり不憫だったので、貸してやることにしたのだ。基本的に健康体の私に比べ、足が不自由な少年が病院の外まで雑誌を買いに行くのは困難だろう。まあ、私もどうせ昼休み中に読み終わるのは無理だ。売り切れに配慮して昼間のうちに買いに来たが、基本的には私は仕事が終わってから読めればいいのだ。
それで、読み終わったら返しに来るように言っておいたのだが…部屋番号で伝えた病室の位置が分からないということでそのまま私の病室についてきて以降、少年は自分の病室に帰らず、そのまま居ついてしまっている。しかもだ。この少年、無遠慮に私のベッドに潜り込んできて、私の膝の上に座って私の自慢の巨乳を枕代わりにして漫画を読むのだ。何と贅沢な子供だ。
私は子供が嫌いではないが、相手をした経験が殆どないので、一般的に子供がこういうことをしたがるのかどうかがよく分からない。小学校低学年程度で性的欲求があるのかどうかも今一つ分からない。
まあそこまではいいとしよう。しかし、その直後に発せられた言葉は、私が予想だにしないものだった。
俊紀「おねえちゃんいそがしいみたいだから、ぼくがかわりによんであげるね!」
あー、そういうつもりなんだ。善意で私に読み聞かせてくれるつもりなんだなこの子は。子供の行動は予測がつかないにも程がある。しかし、普通に漫画を楽しみたい私としては、仕事中に台詞や効果音だけ聞かされるのは却って苦痛だ。かといって、この子は恐らく漫画を貸してあげたお礼をしようとしてくれているので、その義理堅さを切って捨てるのも気が引ける。ならば、私の返答はこうだ。
響「うん、ありがとう。でも私は絵も見たいから、一緒に読もうか?」
俊紀「いいの?」
響「急ぎの仕事じゃないから大丈夫」
俊紀「わかった!」
実にいい笑顔だった。よく分からんが、子供をあやすとはこういうことなのだろうか。癒される。
そんなこんなで、少年が音読するペースで一緒に週刊少年アクセルを読んでいるわけだ。少年漫画には基本的に全ての漢字にルビが振ってあるので、小学校低学年程度でも読めないということはない。うむ、これが本当の少年漫画というわけだな。やかましわ。
そんな調子で2時間程度でアクセルを読み終わったのだが、少年はそれでもまだ帰る気が無いらしく、次はゴウライガーを一緒に見たいという要求が突きつけられた。これには少々面食らった。ゴウライガーというのは正確には紅蓮合体ゴウライガーというロボットアニメで、熱血全開のキャラと小気味いい台詞回しが強みのTVシリーズ作品だ。初公開は3年前で、確か今再放送をしているはずだ。問題は子供には少々内容が難しいはずということで、この小さな子がゴウライガーを好きで見ているというのにびっくりしたのだ。
響「ゴウライガー好きなの?」
俊紀「すきー」
響「好きな必殺技は?」
俊紀「ゴウライインパクト!」
響「よし見よう。どこまで見た?」
一度閉じていたPCを開いて、パスワードを入力してログイン、ブックマークから動画配信サイトを開いてゴウライガーのページへ。
俊紀「だいごうらいだんができたところ」
響「よし、次は『第7話 友よ、あの丘の死線を超えろ!』からだな?」
俊紀「これ! これこれー!」
響「わかったわかった、見たいのは分かったから画面をつつくのはやめなさい」
そうして一緒に7話から12話までを見て、13話の佳境に差し掛かったあたりで、院内放送で何度も同じ名前が呼ばれているのに気づいた。シジョウトシキ君、シジョウトシキ君と。先程からゴウライガーに夢中で全く気にしていない様子だが、もしかしてこの子のことだろうか。考えてみれば私はまだこの子の名前を聞いていない。
響「ところでシジョウトシキ君」
俊紀「なあに?」
ああやっぱりかこの野郎。勝手に私の病室に遊びに来てるから、院内で所在が分からなくなってるんだな。
響「さっきから呼ばれてるぞー。看護師さんが探してるって」
俊紀「まだとちゅうだもんずだだだだーんがっきーん」
響「そうか分かった」
言うことを聞く様子が無いので、有無を言わせずノートPCを閉じて取り上げる。トシキはそれでも諦めずに私の体をよじ登ってPCを奪還しようとする。その途中で容赦なく私の胸を掴んだりするのだが、一向に構う様子が無い。本当にこの子は漫画やアニメが大好きだな。お姉さん、君のそういうとこ嫌いじゃないぞ?
俊紀「かえしてー! つづきみるのー!」
響「言うこと聞かない子には見せてあげません」
俊紀「おわっちゃうー」
響「大丈夫、今見てたところから続き見られるから」
俊紀「ほんとう?」
響「本当本当。前のだって見られたろ? いいから行くぞほら」
俊紀「はーい」
やっと言うことを聞く気になってくれたのはいいが、トシキは右足にギプスをしているため、素早い移動ができない。かといってナースコールを使うほど緊急事態でもない。丁度私に抱きついている形なので、このまま運んでしまうことにした。
響「よし首に掴まれー」
首に手を回させて、右手でトシキの尻を支え、左手で松葉杖を持つ。この体勢からベッドのスプリングを反動にして立ち上がるのに成功。よし、この重さなら何とかなる。
俊紀「えへへー」
トシキは私にだっこされてご満悦の模様だ。
何かなー。やっぱり懐かれてんのかなあ、これ。これまでの様子からして、エロガキってことはないよなあ。おなかに当たってるちんちんは勃ってないし。
そんなことを考えつつ、トシキに手を使わせて落としてはまずいので、スライド式の扉を自らの片足で蹴り開け、ナースステーションへ。
ナースステーションで丁度山際さんを発見したので、トシキを預けることにする。
響「山際さーん」
山際「あら、松下さん…あ、その子」
響「この子、私の病室に遊びに来てたんですけど、さっき名前聞いて」
孝太郎「俊紀イィィ!」
俊紀「あ、パパ」
響「え?」
トシキが見ている方向を振り返ると、サラリーマン風の男がすごい勢いで駆け寄ってきていた。あれが父親のようだ。
孝太郎「心配したぞ俊紀ィ!」
響「わひゃあ!?」
すぐにトシキを手渡そうと思っていたのに、その隙も与えられず、トシキパパは私ごとトシキに抱きついた。
私は女の身で男に抱きすくめられるのは初めてだが、まさかこんな状況でこうなるとは予想だにしなかった。
孝太郎「俊紀が無事で父さん嬉しいぞォ!」
山際「四條さん、四條さん!? ブレイク、ブレイク!」
俊紀「あははーくすぐったいー」
周囲の制止を聞かず、トシキパパはトシキに頬ずりしている。目的のものに猪突猛進してその過程を顧みないこの様子。間違いなくトシキの父親だ。えーとなんだ、親馬鹿なのか?
孝太郎「ええ、先程はお嬢さんにとんだ失礼を。私、こういう者です」
暫くして落ち着いたトシキパパが、片手でトシキを抱えたまま、器用に片手で名刺を取り出して私に差し出した。
響「あ、これはご丁寧にありがとうございます。高島興産企画部、四條 孝太郎さん…ですか」
孝太郎「はい、そしてこちらが自慢の息子の俊紀です」
俊紀「じまんのとしきです」
ああ、自慢の息子なんだ。いや、勿論悪くはないと思うけどな? 兎も角、孝太郎さんが未だかつて遭遇経験が無いレベルの親馬鹿であることは良く分かった。
響「申し遅れました。私、こういう者です」
丁度胸ポケットにこの間IRCで使った名刺が入っていたので、お返しに出してみた。その名刺に、孝太郎さんは面食らっているようだった。まあ私の見た目は高校生か大学生くらいだものな。まさか名刺持ってるとは思うまい。
孝太郎「松下制作所代表の松下 響さん、ですか」
響「ええ、一人でやってる仕事ですけどね」
俊紀「ひびきおねえちゃん?」
響「良く言えましたえらいぞー」
俊紀「えへへー」
頭を撫でるといい笑顔を返してくれる。全く可愛いなこの子は。
孝太郎「今日は何やら俊紀の相手をしていただいていたそうで、ご迷惑を」
響「そんなことはないですよ」
孝太郎「私、嫁さんを寝取…離婚してからというもの、この俊紀だけが生き甲斐なものでして」
響「…へえ」
今、寝取られたと言いかかったのが聞こえてしまったのだが、まあ聞かれたくないようだし、流すことにしよう。
孝太郎「でも、俊紀が女の人に懐くなんて嫁さん以外で初めてなんですよ。本当に良くしていただいたようで感謝しています」
響「いえ、大したことはしていませんよ」
はて、この子、初対面で膝の上に乗ってくるくらいだからすごく人懐っこいのかと思ってたけど、そうでもないのか?
俊紀「あのねー、まんがのおねえちゃんなの」
孝太郎「漫画のお姉ちゃん?」
俊紀「まんがもアニメもすごいしってるの。ゴウライガーもみせてもらったよ」
孝太郎「そうなんですか?」
響「ええ、どちらかというとトシキ君がゴウライガー好きなのがびっくりなんですが」
なるほどなー、そういうことか。少年漫画やロボットアニメに詳しくて話し相手になれる女の人って、比率的に多くないかもしれないな。だから気に入られたのか。
孝太郎「そうですかー。お姉ちゃんに遊んでもらえてよかったなー俊紀」
俊紀「うんー! それにね、それにねー。ひびきおねえちゃん、きれいでおっぱいもおっきいのー。だっこしてもらうとママみたいなのー」
孝太郎「こ、こら俊紀。失礼じゃないか」
響「あははーありがとうなー」
俊紀「どういたしましてー」
しっかり見るとこ見てやんの。男の子だなー。
まあそんな感じで今日は四條親子と親睦を深めて過ごしたのだった。
初めての生理で気が重かったのだが、随分気が紛れて助かった。
■6日目 – 2010年07月06日(火) – 曇り
今日も生理。
そして今日も俊紀が私の病室に遊びに来ているが、私は流石に毎日遊んでいるわけにはいかないので、俊紀には一人で映像鑑賞をしてもらうことにした。
さて、一日耐えて多少慣れたと言えなくもないが、やはり気分が悪いものは悪い。こういう時は、うっかり人に当たらないように気をつけなければいけない。
こんなときにK&Kパワーズから相談が来た仕事がほぼ丸投げ状態で、どうしてくれようかと思ったが、今現在自分があまり冷静でないことを考慮して、敢えて普段よりやんわりと対応をしておいた。
K&Kパワーズというのはwebコンサルタント業務に特化した社長と奥さんだけの小さな会社で、私の松下制作所はそこからよく仕事を回してもらっている。要するに下請け業務をやっているのだが、あちらは営業に特化していてこちらは制作に特化しているので、そこそこ良い互助関係になっていると思う。確認を怠るとたまに恐ろしい案件が回ってくることもあって油断できないのだが、普段から仕事をもらっていることに加え、入院のごたごたで間に合わなかった案件の帳尻をどうにかしてくれた件に関しては借りもあるし、多少の我慢をしておいて損はない。
社長も奥さんも基本的にはいい人だし、性別が変わってからまだ顔を見せていないので、今度改めて挨拶に行ってみようと思う。
■7日目 – 2010年07月07日(水) – 晴天
今日も生理痛がしんどい。
とはいえ、昨日より多少はましになってきた気もするし、恐らく長くて明日までだ。頑張ろう。
今日は制作作業に加えて、仕事関連で契約更新手続きの発注をした。内容はフォントライセンスの年間契約だ。
松下制作所では現在スティルバー・デザインの全225書体を制作に使用している。勿論全て商用利用が可能なもので、1書体あたりの永久ライセンスの値段が平均2万程度であることを考えると全部買い揃えた場合に約450万円の出費になる。勿論そんな予算は無いので、年間契約3万円という形で費用を支払っている。この形式であれば、1年間限定ではあるものの、スティルバー・デザインの全フォントを使い放題で、全部買った場合と比べても150年使い続けてようやく同額なので、非常にリーズナブルだ。しかも販売ラインナップに追加された新フォントも随時年間契約セットに追加される。
この契約更新手続きを発注したのが福岡市内にある電鬼堂という店で、これはうちの兄、松下 飛呂樹が経営しているPCパーツショップだ。電鬼堂ではPCソフトも販売しているので、注文すればフォントライセンス契約書も用意してくれる。松下制作所の主要備品であるPC関連製品は、手に入る限りこの電鬼堂経由で仕入れている。身内割引で値段が安いことと、サポートが十分であることが主な理由だ。
ちなみにこの電鬼堂の社員は副店長の百富さんだけで、他にアルバイトを数人雇っているのだが、たまにシフトの折り合いがつかず人数が足りなくなることがあり、お願いされて私が駆り出されることがある。このお手伝いでは臨時アルバイト扱いなので時給は自分の仕事に比べて半分もないのだが、普段備品を安く仕入れてくれるのでお互い様といったところだろう。
ところでその兄が未だに一度も見舞いに来ないどころか連絡すらないのだが、うちの兄は弟が倒れても連絡一つよこさないような薄情者ではない。恐らくは私が救助されたときに家に誰もいなかったため、連絡が届いていないものと思われる。
なのでいっそのこと、いきなり店を訪問してびっくりさせてやろうかと思っている。あのシスコン兄さんが今の私を見てどんな顔をするのか、今から楽しみで仕方がない。
■8日目 – 2010年07月08日(木) – 曇り
生理痛が止まった。今日は曇り空さえ晴れやかに見える。
とりあえず昨日までの3日間で生理痛が我慢できないものではないということが分かった。ただ、我慢は出来るのだが多少情緒不安定になることは確かなので、大きなミスを避けるためになるべく人と直接関わる業務をしないようにスケジュールを調整することにした。
昨日まで生理痛で外出を控えていたが、調子が戻ったのでそろそろ警察署に届けを出しておくことにした。
警察署の他に市役所でも何か届ける必要があるのではないかと検討したが、指紋や写真が必要なものが特に無いようなので、とりあえず今は行く必要が無さそうだ。本格的に用事があるとすれば、戸籍上の性別を変える時だ。
とりあえず警察署の受付で二階堂先生から貰った同一人物証明書と免許証、それから証明写真を出して写真の変更を要請すると、意外とあっさり受理してもらえた。証明写真は他に撮りに行くのが面倒なので、デジカメの撮影データから自分でRAW現像したのを自宅のインクジェット複合プリンタで写真用紙にプリントアウトした。証明写真ではあまり表情豊かにできないのがつまらないが、まあ十分な出来だと思う。受理後、病院に連絡を入れて内容を確認している模様だ。その様子を眺めながらロビーで30分ほど待っていたら、すんなりと新しい免許証を発行してもらえた。出来あがった免許証の見栄えは最高だが、この写真で1977年生まれの男と書いてあるのは何とも珍奇だ。今後身分証明書を求められるたびに変な顔をされそうではあるが、まあそのくらいの面倒は覚悟している。
夜、山際さんが申し訳なさそうな顔で私に頼みごとをしにきた。俊紀の件だ。
言われてみて、昨日今日は孝太郎さんが残業で見舞いに来られなかったということを思い出した。
どういうことかと言えば、俊紀は基本的に毎日見舞いに来る孝太郎さんが風呂に入れているのだが、そうでない場合、俊紀は看護師さんに風呂に入れてもらったり身体を拭いてもらったりするのを断固拒否するのだ。それでどうしても言うことを聞かないので説得してほしいという頼みごとなのだった。
響「お前なー、風呂くらい入れよ。くっさい男の子は嫌われるぞ?」
俊紀「わかったー」
響「もうわかったの?」
はて、看護師さんに対しては徹底抗戦したと聞いたが、やけに素直だ。一体どうした?
俊紀「ひびきおねえちゃんといっしょなら、おふろはいる」
響「…えー」
条件付きかよ。
振り返って山際さんの方を見てみると、看護師一同が無言で頷いていた。致し方なしか。
響「仕方ない、今日だけだからな?」
俊紀「うんー」
全く、いい笑顔見せやがんなこの野郎。まさかこのためにゴネたんじゃないだろうな?
担当の看護師さんに俊紀のギプスの簡易防水処置をしてもらって、俊紀を浴室へ運ぶ。
二階堂医院の入院患者用浴室は基本的に一人用ではあるが、介護入浴が想定されているため、二人程度は悠々と入ることが出来る広さになっている。
脱衣室で俊紀の身体を支えて服を脱がせる。股の間から可愛らしい子供ちんこが顔を出す。はいこんばんはー。
そのまま抱え上げて浴室に運び、風呂椅子にシャワーをかけながら温度を確認。大丈夫なようなので椅子に俊紀を座らせる。ギプスをしている右脚は浸水しないように足掛け台に置く。
響「お湯かけるぞー」
俊紀「はーい」
俊紀の頭にシャワーをかけ、次にギプス以外の全身にくまなくお湯をかけてすすぐ。
頭にシャンプーをかけて髪を洗ってやり、洗い終わったら髪を漬け置き状態にしてそのまま身体を石鹸つきスポンジで洗ってやる。腕、脚、背中、おなか、そして股間。俊紀の子供ちんちんは相変わらずのポークビッツ状態だ。
身体まで洗い終わったらもう一度頭からシャワーをかけて泡を流す。よし、綺麗になった。
それで浴槽に入れてやろうと思ったのだが、はたと困った。
これどうやって支えてやればいいんだろう?
浴槽の傾斜から見て右側が枕になってるようなので、俊紀の頭を右に持ってくると右脚はこちらから見て私の左手奥側になる。これを支えながら、溺れないように右腕で頭を支えるのだろうか。そしてその姿勢のまま浴槽の隣で膝をついて何分か耐えるのだろうか。うわ、めんどくさい。今更ながらめんどくさい。
俊紀「ねえねえ」
響「ん?」
俊紀「いっしょにはいろ」
響「んー…そうだな、そうするか」
よく考えてみれば自分が先に浴槽に入ってその上に俊紀を乗せれば体勢として無理がない。今回はこのプランで行くとしよう。
響「ちょっと待っててな」
俊紀「わーいおねえちゃんとおふろー」
俊紀を座らせたまま待たせて、脱衣所で入院服を脱ぎ捨てる。10個のボタンを全部外すのは面倒だが、ワンピース状になっているので一番上のボタンだけ外して頭から脱いでしまえば手早く脱げる。あとはショーツを脱いで、これでもう全裸だ。
その様子を俊紀は興味津々といった様子で眺めている。視線の先は生おっぱいだ。このおっぱい星人め。でもちんちん勃ってないんだよなー。いちいちちんちんの反応を気にする私の心が汚れてるだけなのか?
響「はいお待たせー。風呂入るぞ」
俊紀「うん」
響「…どこを触っているのかな?」
俊紀「おっぱいー」
まず椅子から浴槽前に移動させようと向かい合って抱え上げようとしたら、両手でおっぱいを掴まれた。しかし手のサイズが小さいので全体を包み切れていない。
響「君はそんなにおっぱいが好きか?」
俊紀「すきー」
響「そうかそうか。でも少しは遠慮しような?」
俊紀「やわらかーいやわらかーい」
響「そして人の目を見て話をしような?」
俊紀「ぷにぷにー」
その所業を咎めても、俊紀はおっぱいに夢中で全く話を聞いていないようだ。
響「こら俊紀、いい加減に…あはァ!?」
突然の衝撃に身体がのけぞる。何かと思ったら、俊紀が乳首に噛みついたのだ。
響「チョップ!」
俊紀の延髄へ手刀を一撃。たまらず俊紀が口を離す。
俊紀「いたい」
響「私の方がもっと痛い。乳首は敏感だから、いきなりそんなに強く噛んじゃいけません」
俊紀「わかったー」
わかったと言いつつ迷いなくまた乳首に吸いつく俊紀。今度は適度な甘噛みなので気持ちいい。確かに私は強く噛んじゃいけないと言っただけで、噛んではいけないとは言っていない。賢いのかもしれないなこの子は。
響「や、は、駄目だっ、て、吸っちゃ」
俊紀「おねえちゃん、んちゅ、ママのあじがするー」
響「いや、そん、な、はァ、はずない、って、おっぱい、ぅん、出ないから」
俊紀「ちゅる、ママもね、じゅるじゅる、おっぱい、れなかったよー」
響「え?」
何、ママも出なかった?
…ということはだ。
腕を伸ばして俊紀の股間を触ってみる。相変わらずのフニャチンだ。
俊紀「じゅる…なに?」
響「何でもない」
なるほど分かった、そういうことか。
一つ大きな勘違いをしていたが、この子は男の子だからおっぱいが好きなんじゃない。もっと前の段階で、乳離れをしていないのだ。それなのに両親が離婚してママがいなくなってしまったから、おっぱいを吸いたくてたまらないのだ。どうやら私に懐いたのは単に趣味が合うからというだけでなく、おっぱいの甘え心地がいいというのも重要な要素だったようだ。
全く、私はこんな母性本能もへったくれもない奴だっていうのにな。
響「あァもう…仕方ないな、今日だけ、だぞ。甘えるのは、ンっ」
俊紀「ちゅば、んちゅ…えへへー、おねえちゃんらいしゅきー。ちゅっ、ちゅっ、ちゅるるる」
響「あっ、んっ、いいっ」
もうこの際、俊紀を説得するのはすっぱり諦めて、甘えたいように甘えさせてやることにする。
俊紀にそのつもりは無いだろうが、既に検証したように私の身体は性的刺激に敏感なので、こうやって乳首を吸われるだけで身体が絶頂の準備を始めてしまっている。
響「あっ、いっ、いふぅっ!」
大きな快感の波に、肩が大きく痙攣する。
子供に乳首を責められて、簡単に絶頂に達してしまった。いや、もしかするとこの子は乳離れが遅いだけあって乳首をしゃぶり慣れていて、実は結構巧いのかもしれない。
俊紀「…いたかった?」
響「大丈夫…気持ち良かっただけだから。好きなだけ甘えていいよ」
心配そうな眼差しを向ける俊紀の頭を撫でて、もう一方の腕で抱き寄せる。
俊紀「えへへー」
その後、俊紀は小一時間ほどおっぱいをしゃぶりつくして疲れたのか満足したのか、うとうとと眠ってしまった。
しゃぶられている間、私の方がいわゆる「ちんちん欲しい衝動」に悩まされるのではないかというのが当初不安だったが、おっぱいだけでもイける敏感体質が幸いして、挿入なしでもある程度満足することができた。怪我の功名だが、これに気付けたのは良いことだ。
私は眠りこけた俊紀を腕に抱いてゆっくり湯に浸かってから、後片付けをして風呂場を後にした。風呂の順番が最後だったのは幸いだった。
多少汗をかいたものの、私は俊紀より先に風呂に入っていたので、もう一度体を洗うことはせずにすすぎだけで済ませた。
■9日目 – 2010年07月09日(金) – 晴天
今日は待ちに待った退院日だ。
1週間の入念な入院検査の結果、日常生活に支障なしということで当面1箇月は週に1度の通院、それ以降は月に1度の通院をすることになった。
今日で退院ということで俊紀に挨拶をしに行ったら、何も言わずにしがみついてきた。そのまま家までくっついてきそうな勢いだ。既に連絡先も教えているし、会えないわけじゃないと何度もなだめて、漸く離してくれた。シャツが鼻水だらけになってしまったので、結局出る前にまた着替えた。仲良くなったのはいいが、ちょっと懐かれすぎたかもしれない。
俊紀はあと2週間くらいは入院している予定らしい。守れない約束はなるべくしない主義なので敢えて言わなかったが、どうせ週に1回は通院することになるので、気が向いたらそのついでに顔を見せても良いのではないかと思う。
退院手続き後、多少の寄り道をして午前10時半ごろに帰宅した。
入院用品を車から降ろして一息。明日から色々と物品が届く予定だが、その前に時間帯指定で本日配送予定のものがあって、車から荷降ろししていたときにそれが丁度届いた。しかも配達のお兄さんが厚意でこっちの荷降ろしを手伝ってくれて、私が一言お礼を言っただけでデレデレの顔で帰って行った。うむ、美人は得だな。しかし配送員さんは知らないのだ。彼がデレデレしていた女はいつもの住人の冴えない男と同一人物で、しかも彼が届けた荷物はローションと直腸洗浄器具なのだ。
そうそう、洗浄液として使用する予定の「飲める温泉水」は、帰り道に美麻温泉街に寄り道して20リットルほど買ってきた。熱心にこの商品の説明をしてくれたあの販売員さんも、まさか私がこれを尻で飲むとは思うまい。
そして初の腸内洗浄に挑戦となるわけだ。
洗浄器具を接続して洗浄水バッグに温泉水を入れ、一通りセットアップしたらトイレに入る。洗浄の際に必ず廃水が発生するので、場所は重要だ。
本洗浄前にウォシュレットで肛門付近を軽く洗浄する。便意は無いので出すものはとりあえず無し。
それから洗浄器具のパイプの先端を肛門に挿入。この状態でバッグの中身が無くなるまで待つ。
バッグの中身が空になったらパイプを抜いて、おなかをマッサージしながら廃水を出し切る。S字結腸より奥に溜まっているものがある場合は、このプロセスで一緒に排出される。なかなかの解放感だ。
もう一度洗浄水バッグに温泉水を入れ、同じように2順目、3順目、4順目をこなす。通常は2順程度でよさそうだが、初めてだから念入りにやっておく。
4順目が終わってもまだ水分が腸内に残っているので、9割方出し切るまで10分ほど待つ。残りは腸内で吸収されるはずだ。
水分を出し切った後、肛門周りを念入りに拭いてトイレでのプロセスは完了。寝室に移動してベッドに寝転がる。あとはローションの仕込みだ。
丸いキャップをねじって外し、チューブの口を肛門に直付けして中身を注入する。
力を入れ過ぎたのか、結構大量に入ってしまった。
折角だからこの際、ローションを出す練習もしておこう。
うつ伏せになっておなかに力を入れ、排泄の要領でローションを排出する。
すると、これもまた予想以上に勢いよく飛び出してしまった。失敗だ。これはこれで気持ちいいが、目的は尻の穴の滑りを良くすることであって、ローションを射出することではない。
ただ、問題が分かっていれば対処は簡単だ。本番では尻の穴の前に手をかざして出せばいい。勢い余っても手に付着するだけなので、ローションを無駄にしなくて済む。
もう一度少量のローションを慎重に注入し、穴の周りに付着したローションを拭きとってショーツを穿く。鏡に映してみたところ、特に外見上不審な点は無い。大丈夫そうだ。
さて、明日は荷物の受け取りがあるので出来れば今日中に外出の用事を幾つか片づけておきたい。
とりあえず真っ先に行くところは既に決まっているので、外出準備をしよう。
西九州電鉄 美麻駅。家から徒歩10分程度のところにある最寄駅だ。特急が停まり、福岡市内まで15分程度で行くことが出来るので便利だ。
私のいでたちは至ってシンプルで、普段のTシャツに普段のジーンズ、普段のシューズ風安全靴、普段のBergman(ベルクマン)という構成だ。下着以外は男の頃と全く変わらないのだが、見た目には胸が主張がすごい。ただでさえノーブラなのに、Bergmanの首掛けストラップで谷間が食い込んで、凹凸がより一層強調されている。ホームにこうして立っているだけで、明らかに視線を集めているのが分かる。まあこれはこれで十分に魅力的なのだろうが、それはそれとして、女になったからにはパンツだけでなくスカートというやつを穿いてみたい。だから今から婦人服というやつを買いに行くのだ。併せて、ハンドバッグや化粧品も調達する予定だ。時間配分的に、まず化粧品を買いに行くことになるだろう。
ホームで並んで待っていたら、目当ての特急電車が入ってきた。車両が目の前に来たところで気付いたが、これは女性専用車両だ。全く考えていなかったので躊躇したが、今は女だからこれに乗っても問題ないわけだ。よし、乗ってみようじゃないか。
乗ってみて気付いたが、一車両全部女っていうのは何とも息苦しい。何も間違ってないのに何故か場違いな感じがする。
痴漢の危険が無いというのは良いことだが、どうなんだろうなこれは。痴漢に遭う可能性がどの程度あるのか今一つ分からないし、百合好みの恥女の危険までは除去できないわけだ。そういえば恥女ってしょっぴけるのか?
ともあれ、あまりきょろきょろと見まわすと挙動不審なので、Bergmanのヘッドフォンを耳に突っ込んで、暫く外の景色でも眺めることにした。
BergmanというのはSONIC製のMP3プレイヤーで、私が使っているのは2006年発売のNB-S706Fというタイプだ。4年も前のモデルのため、取り扱いには少々癖があるのだが、最大の長所はそのデザインで、流線型のメタル・アクリル・液晶の組み合わせが他のどのMP3プレイヤーと比べても抜群に素晴らしい。デザインと統合されたインターフェイスも良く出来ていて、選曲と再生だけなら本体を見ずに操作できる。近頃のごてごてした大画面付きプレイヤーには真似の出来ない芸当だ。音も少なくとも私のような素人にとっては十分以上に満足なレベルで、特に付属のカナル型ヘッドフォンはノイズキャンセル機能付きなので、電車の中でも普通に音楽が聴けるのが便利だ。小型で余計な機能が付いていないので、バッテリーが連続30時間以上もつのも助かる。
1曲目はGalaxyのアルバム「the Rock of Galaxy」から「the Rock」。「the Rock of Galaxy」は何年前だったか、私が生まれて初めて買ったCDなのだが、Galaxyのボーカル兼ギターである駒澤 京四郎さんのパワー溢れる歌声は、今聞いてもやはり良いものだ。心の奥の弦をダイレクトに震わせてくれる。
大好きな駒澤ボイスに癒されて息苦しさも忘れた頃、電車が終点に到着した。そこからバスに乗り継いで隅由のキャメルタウン伯方へ赴く。
キャメルタウン伯方というのは、福岡市内で最大の規模を誇るショッピングモールだ。そんなものが地価高めの福岡市伯方区内にあるのがびっくりだが、ここはどちらかというと平面の広さより高さで床面積を稼いでいる。例えば本館は地上10階まである。そして大小さまざまな建造物が渡り廊下で繋がっている。構造が複雑なので、はっきり言って迷う。
私は少々方向音痴の気があるので、目的の店の位置をフロアガイドで入念にチェックする。
地図は複雑だが、幸いなことに化粧品店や服飾店はファッション館に集中しているようだ。
適当に決め打ちで入った化粧品店では案の定色々なものを勧められたが、買うものは当初からある程度決まっていて、予定通りに粗悪ではない程度にシンプルなものを購入した。家に置くものと携帯用を1セットずつだ。とりあえずこれで十分だろう。大体、ここに至るまで私はノーメイクなのだ。全く持っていないのは問題だが、必死こいて化粧をする必要が無いことは実証済みなのだ。
ハンドバッグは服飾店でも結構取り扱いがあるようだが、バッグ専門店がいくつかあるようなので一応店先を覗いてみた。
店先に並んでいる商品がまず高い。馬鹿みたいに高い。バッグ一つに50万とか何だそれ。試しに店員さんを呼んで、どのあたりに50万の価値があるのかを聞いてみたところ、造りがしっかりしているのは勿論のこと、人気のブランドの中でも売れ筋の商品で、何より芸能人の誰かと全く同じモデルなんだとか。
うん、要らんわ。バッグに50万も払うくらいだったら、廃スペックPCを一台調達する。或いは誰かと同じモデルと言うなら、駒澤 京四郎モデルのギターを買う。弾けないから飾るしかないけどな。
改めて店内を見回ってみると、十万以上の高級バッグしか置いていないようだ。これは見るだけ無益だ。他を当たろう。
さて、本番の服飾店、いわゆるブティックだ。
戸渡「いらっしゃいませ」
店に入るなり聞こえてきた店員さんの落ち着いた挨拶に対して、軽く目礼を返してみる。
一巡してブティックの店先を冷やかした結果、このEsprit(エスプリ)という店で服を見繕うことにした。Espritとは確かフランス語で「気が利いている」とかそんな意味だった筈だ。
このファッション館のブティックは全て個別の密閉型スペースを持っていて、そこには「これがうちのお洒落だ」と言わんばかりの瀟洒空間が広がっている。ファッションを専門に扱う店の主張として恐らく正しい姿なのだと思うが、その空間に充満する女子力オーラが私はどうにも苦手だ。その中にあって、ここのEspritは比較的許容できる落ち着いた感じの店舗で、馴染みやすい。更に、高級店のような気取った感じもない。実際の値段も高級店と比べると普通のようだ。そのあたりがこの店に決めた理由だ。また、店に入るなり店員さんがにじり寄ってこないのもポイントが高い。
服選びに際して、自分で全部コーディネートするとおかしなことになるのは目に見えている。かといって、全部店員さんに選んでもらうのでは主体性がなさすぎるし、店員さんも困るだろう。よって、今回はその中間の戦略を取りたいと思う。
ボトムスのコーナーを見て回り、特にこれだと思ったスカートに目星をつけて、店員さんを呼んでみる。
響「すいませーん」
戸渡「はい、ご用でしょうか」
響「これに合いそうなトップスってどんなのがあるか教えていただけますか? トップスというか、この際一式揃えたいんですけど」
戸渡「畏まりました。見繕って参りますので、少々お待ち下さいませ」
よし、何とかなりそうだ。中間の戦略というのはつまり、一点自分の好みで選んで、それを起点にしたアセンブルをプロの店員さんに組んでもらうということだ。これなら主体性とバランスがある程度両立するはずだ。
戸渡「以上38点で343,875円になります。現金払いで宜しゅうございますか?」
響「はい、現金一括で」
勧めてもらったセットが結構気に入ったので、調子に乗ってあれもこれもとフォーマル・カジュアル併せて1週間程度は着回し可能な上下、それに合うソックスや靴、下着、ハンドバッグなどを選んでもらったところ、案外金額がかさんでしまった。まあ、試着した上でデザインには満足しているし、バッグ一つ50万と比べれば、1週間分の衣類一式で34万は有意義な買い物の筈だ。何、持ち合わせ? 予算35万って言ったらその通りにしてくれたからなんくるないさ。ここはむしろ、予算枠にきっちり過不足なくねじ込んできた店員さんの手腕を褒めるべきだと思うね。1着選んだ水着も併せて予算内に収めることが出来たし。また、1種類だけとはいえ私に合うサイズのブラの在庫があったのもナイスで、お陰で予定よりやや早くノーブラ状態を脱することが出来た。
そんなわけで、この店員さんはかなり出来る人だと思ったので、名刺交換を要求してみた。そしたら店員さんというか、店長さんだったよ。戸渡 千尋さんというらしい。また来るかどうかは分からないが、覚えておこう。
戸渡「松下様、3万円以上お買い上げの場合は無料配送サービスがございます。如何致しましょう」
響「じゃあ、一着着て帰るのでそれ以外を送っていただけますか?」
戸渡「畏まりました。お届けは明日で宜しゅうございますか?」
響「はい。ついでに今着てるもの一式とこの据え置き用の化粧品セットも送っていただけるとありがたいんですが。有料でもいいんで」
戸渡「いえ、沢山お買い上げいただきましたし、そのくらいでしたら無料で対応いたしますよ」
響「それは助かります」
流石、戸渡さんは話が分かる。なんというか、店も戸渡さんもこの気の利きようと気取らない上品さがいいね。華美でなく派手でなく、息苦しくもなく、適度な感じが。多分私がこの店を選んだのは、そのあたりのさじ加減の快適さが原因だろう。
戸渡「お買い上げいただきありがとうございました」
響「どーもー」
丁寧にお辞儀をする戸渡さんに手を振り、買ったばかりの服を翻して、ハンドバッグを肩にかけて歩く。歩調に合わせてメタル&アクリル構造のBergmanが首元で揺れる。
私の歩き方はあまりお上品ではないと思うが、幸い元々ガニ股ではないので、さほど不自然ではないはずだ。靴は爪先が柔軟なものを選んでもらったから、万が一の時に走れないということも無いだろう。
戸渡さんの協力もあって、着こなしは現状で必要十分のレベルに達したと言えよう。しかも自分で選んだスカートだ。無駄なくらいに心が弾む。ふふん、どうよこの女っぷり。
心なしか、周囲の注目度が増したような気がする。気のせいかもしれないが、これは楽しい。
なるほど、女というのは適度にお洒落をして歩くだけでも楽しいのだ。良い発見をした。まあ、「だけ」と言いつつ出費はかなりのものだったが。
さて、続いて次の予定をこなしたいところだが、携帯電話で確認すると時刻は15時過ぎのようだ。少々おなかがすいたので、隣のフードエリアに来てみた。
多数の飲食店が軒を連ねていて、がっつり食べられるレストランもあれば、軽く済ませる喫茶店風の店もある。この時間では喫茶店の方がいいだろう。喫茶店の違いは正直良く分からんので、手近なところのショウウィンドウを覗いて、ケーキやパフェが美味そうなところに入った。店の名前はpetite fleur(プチ・フルール)。petiteは兎も角fleurのあたりの意味を知らなかったが、メニューの解説によると「小さな花」という意味らしい。どうでもいいけど、お洒落系の店の名前ってフランス語多いよな。まあそれを言うとロボットの名前には濁音バッキバキのドイツ語が多いんだが。
問題は注文内容、カロリーコントロールだ。間食を合わせて1日4食とした場合、1食の適量は562.5~675kcalになるわけだが、この店はメニューにカロリーが記載されていない。しかし案ずることは無い。山際さんの食事指導のお陰で、ある程度のカロリー予測が出来るようになっているのだ。
一般的なところではマドレーヌが約100kcal、ショートケーキが約250kcal、普通サイズのパフェで400kcal程度の筈だ。久しぶりにパフェというやつを食べてみたかったので、ストロベリーパフェとカフェ・オ・レを注文してみた。500kcalに届くかどうかになるが、間食だから問題ない。カロリーをなるべく抑えようと考える普通の女性と違って、必要量に届くかどうかを考えているあたり、我ながら特殊だなあとは思う。
注文した後は、携帯電話をいじりながら配膳を待っている。私が使っている携帯電話は、CASIM(カシム) GeeseOne(ギースワン)シリーズのW42CMというもので、往年のCASIMのスタイリッシュ腕時計GeeseWalk(ギースウォーク)シリーズのデザインラインを汲む機種だ。Bergman NB-S706Fと同じく2006年製なのでこちらも少々古いのだが、最大の売りであるデザインが魅力的で、特に円形の時計窓のあたりがGeeseWalkらしさを醸し出している。また、機能面でも当時からいち早く防水に対応していて、洗濯機に投げ込んでも回収できれば問題なく使えるというタフなつくりになっている。問題は頑丈なボンネット構造の分だけ分厚いことで、近頃の薄型携帯の1.5倍~2倍程度の厚みがある。こんなごつい携帯電話を好んで使っている女は、私以外には滅多にいないだろう。勿論女になったからと言ってデコレーションなど全くしていないし、無粋なストラップもついていない。GeeseOneは素のままが一番だ。
近頃はスマートフォンというのが勢いを増していて、機能的にはスマートフォンに乗り換えた方が便利そうではあるのだが、問題は今使っているW42CMに匹敵するデザインのものが無いことで、GeeseOneシリーズのスマートフォンが出るか、或いはそれ以上のかっこいいスマートフォンが発売されるまでは、機種変更の予定は無い。
さて、携帯をいじって時間をつぶすとは言っても、この古い携帯電話ではTweeterに対応していないし、携帯ゲームも今一つ食指が伸びないので、実はそんなにやることがない。せいぜいeisenblitzのユーザーサイトで情報を確認する程度のものだ。そのため、私の暇つぶしというのは実際には携帯電話をいじることではなく、その画面に集中しているように見せかけて周囲の会話に聞き耳を立てることなのだ。ここの店はあまり騒々しくなく、周囲の会話が割と筒抜けに聞こえてくる。あのコかわいくね?とか、あのおっぱい反則だろうとか、何言ってんだ尻がいいんだろうとか、お前声かけろよとか、馬っ鹿あんなの彼氏持ちに決まってんだろとか。失礼ながら周囲にめぼしい女性はいないと記憶しているので、十中八九私のことだろう。注目されるのは嬉しいが、笑いを堪えるのが大変だ。折角今フリーで新品なのに、残念な連中だ。
御影「ここ、空いてるね?」
響「はい?」
視線を上げると、私の正面に残念じゃない人が座っていた。度胸はともかく、何だこの女に不自由してなさそうな王子様系の美形は。いや、空いてはいるんだけどさ。私は美形には用が無いんだよ。
ウェイター「ストロベリーパフェとカフェ・オ・レお持ちしました」
響「あ、はい、こちらで」
御影「追加でココアとシフォンケーキを」
ウェイター「ココアとシフォンケーキ…ですね、承知しました」
御影「よろしく」
タイミング悪くウェイターさんが割り込んできたせいで、堂々と注文されてしまった。目の前の男がここに居座る大義名分が出来てしまったということだ。
響「それで、どちら様でしょうか」
御影「太宰 御影28歳。フランクに御影って呼んでね、可愛らしいお嬢さん」
響「はあ」
御影「で、君の名前は?」
すげえな。要求が端的すぎる。美形は色々省いてここまでゴリ押しできるものなのか。
響「松下 響です」
御影「響ちゃんか。いい名前だ」
響「どうも」
でもあんまり言いふらすなよ。周りの連中、すっげえ聞いてるから。
御影「それで響ちゃん、今付き合ってる人いる?」
響「特にいません」
本当に端的な人だなあと思いつつ、最低限の受け答えでパフェを口に運び続ける。うん、悪くない。でも気分は今一つだ。
御影「そりゃ良かった、僕もいないんだ」
響「今現在いないだけじゃないんですか?」
御影「手厳しいね、まあその通りなんだけど」
図星かよリア充め。
舌打ちしたい気分を堪えて、漸くカフェ・オ・レに口をつける。私はブラックコーヒーがあまり好きではない。飲めなくはないが、美味しくないからだ。私がコーヒーの風味を愉しむには、ミルクたっぷりのカフェ・オ・レくらいが丁度いい。今思ったが、そういう意味では精液飲むのもブラックコーヒー飲むのも大して変わらんのじゃなかろうか。
目の前の男は、まさか私が自分をほったらかして精液について考えているなどとは夢にも思わないだろう。ざまあ。
いや、しかしだな。見た目派手さはほぼ互角だから、逆に私が前歴を疑われてもおかしくはない状況なんだが、それについては何も聞かれなかったな。案外素直な奴なのか?
周囲からは、何だとまずった、先に声をかけておけば、などという後悔の声が聞こえてくる。はい残念でした。
御影「よし、僕と付き合おうか。きっとそれがいい」
響「あのですね、勿論そういう要件ではないかと思っていましたけれども」
御影「話が早くて助かるよ」
響「今のやり取りで私が素直に頷くと思っているんですかあなたは」
御影「うん、少なくともノーではないと思ってるよ。君がフリーだと分かった以上、僕がここを譲っても、2番手、3番手が続々と押し寄せてくるだけだから」
響「んな」
なん…だと…!?
ざわついている。チャンス到来の予感に、残念な連中がざわめいている。分かってて言いふらしてたのかこの野郎。
響「回答を保留します。暫くそこにいてください」
御影「了解だよ、これから存分に語り合い、分かりあっていこうじゃないか」
響「真っ平御免です」
ウェイター「シフォンケーキとココアお持ちしました」
御影「ああ、こっち」
何ともはめられた気分だ。
しかしこれって、私が外見的に十分魅力的じゃないと成立しない駆け引きだよな。まさかこんなやり方があるとは思いもしなかった。もしや、恋愛熟練者の技というやつだろうか。
御影さんはココアを一口すすり、器用な手つきでナイフとフォークを使ってシフォンケーキを分解して口へ運ぶ。パフェを適当に掬って食べているだけの私と比べ、食べ方の上品さでは明らかにあちらが上だろう。王族かこの野郎。
御影「しかし意外だね」
響「何がですか」
御影「君は僕にあまり良い印象を持ってないようだ」
響「そりゃあそうでしょうよ」
御影「そうかなあ」
顔が良ければ誰でも何でも許してもらえると思うなよ、と口から出かかったが、寸前で止めた。
よくよく考えてみれば、そんなことは近頃急激に容姿が向上していい気になっている私が言えたことではない。それを忘れてしまっては私も同じ穴の狢だ。
もう少し冷静になろう。少々いけ好かないアプローチだったので反射的に拒絶してしまったが、客観的に目の前の対象を評価してみよう。
まず見た目は文句が無いだろう。普通の女だったらアクセサリーの代わりに彼氏自慢が出来るような存在に違いない。今の私となら美男美女カップルになるのだろう。
性格は…遠慮が無さすぎるのが問題だが、嘘つきのようには見えない。計算高い腹黒さが少々鬱陶しいが、それはお互い様で、むしろ私よりは素直かもしれない。問題はこの良すぎる容姿で一人の女をずっと愛せるのか、という点だ。どこかのエロゲの主人公のように多数の女の一人にされてしまっては、私に割り当てられる時間がどうしても減る。それでは駄目だ。聞く限りでは女を侍らせているような様子は無いが、そこはきちんと確認しなければいけないポイントだ。
逆に言うと現状分かっている問題はそのくらいのもので、良く考えてみれば、これだけ顔がいいのなら女を侍らせるような男じゃないのか、という先入観で私が決めつけてかかっていただけで、もしかすると誠実な人かもしれない。ダメモトでも訊いてみた方がいいだろう。
響「じゃあ私も一つ伺います。あなたは一人の女で満足できる人ですか?」
御影「勿論だとも。僕は君と添い遂げるために生まれてきたと思っている」
響「そんな浮ついた言葉を淀みなく言える男を信じろと?」
御影「ははは、君は僕のことを誤解しているよ」
響「どのあたりを?」
御影「このあたりかな」
そう言って御影さんは、私の手を取って自らの胸元へといざなった。
まさか心臓の鼓動でも聞かせるつもりかと思っていたら、そうじゃなかった。
響「あのー…もしかして?」
御影「太宰 御影、28歳乙女です」
ヅカだったあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!
女みたいな美男子かと思っていたら、男みたいな美女だったよ。
今までわざわざ声を低く抑えていたようなので分からなかったが、囁くようなその声は確かに女のものだった。何という演技派だ。
しかし女同士であるならば、結婚相手としては尚更論外だ。
御影「ふふん、騙されてくれたかな? これでも学生時代は演劇部のエースだったんだよ。王子様ーとか呼ばれててね」
響「太宰さんはその、百合とかそういう?」
御影「御影でいいって。僕は単に可愛い女の子が好きなだけなんだけどな」
響「私にはそういう趣味はありませんので、お引き取り下さい」
御影「僕が本気で迫るとみんなそう言うんだよねー。つれないなあ、女同士なのに」
響「女同士だからではないでしょうか」
御影「じゃあ逆に聞くけど、むしろ女同士の何が駄目なのさ。こんなに美しい組み合わせは無いだろう」
響「傍目に良いのは認めますが、女同士だとセックス出来ないじゃないですか」
御影「おやあ、言うねえ響ちゃん。もしかして可愛い顔してやりまくり?」
響「未経験ですが、それ以前に公共の場で話すべき話題ではないと思います」
御影「こんな質問にもちゃんと答えてくれる響ちゃんが好きだよ」
響「どうも」
御影「でもまあ、そうだよね、結婚を前提にお付き合いして下さいって言っても、現実問題として結婚出来ないしね」
響「そうでしょうね」
一般的にはな。
御影「…ふーん?」
響「どうかしましたか」
御影「いや、うちの両親も、そろそろ結婚考えろってうるさいんだ。ねえ響ちゃん、結婚しようよ」
響「お断りします」
御影「出来ないとは言わないんだ?」
ぼそりと呟かれたその言葉に、私は思わず目を見開いた。私のその様子に、御影さんは何らかの確信を得たようだ。
御影「そうだね、ここじゃ話しづらいだろうし、そろそろ出ようか」
響「お気遣い感謝します」
御影「なるほど、ごく最近女の子になったのかー。これは興味深いね」
響「私も罹って初めて知りましたよこんな病気」
御影さんは二階堂先生の例の証明書を熱心に読んでいる。
なるべく人に聞かれないように詳細を話すため、結局のところキャメルタウンを適当にぶらつきながら話すといった形式になった。
まあ聞かれたところで、こんな話を誰が信じるんだといったものではあるが。
響「それで、一体どのあたりで気付きました?」
御影「何に?」
響「私が普通の女じゃないって」
御影「ああ、ちょっとした違和感の積み重ねかな」
響「どこか不自然でしたか」
御影「まず見たところ、服も靴もバッグも全部新品で、随分気合い入れておめかししてるでしょ? それでいて恋人や友達と一緒でもないし、待ち合わせの相手もいないみたいだったから、誘い受けかなと思って声かけたんだけど、この僕にさえ全くなびく気配が無いときた。この時点でちょっと普通じゃないんだよ。勿論、男の趣味が悪いっていう可能性もあるけどね」
響「少々突っ込みたい部分はありますが、大変参考になります」
御影「それに、ハンドバッグの置き方が良くない。あれじゃあ後ろの席から簡単に盗られるよ。それで、そんな基本的なことが出来てないのは何でだろうなーって。いや、単なるおのぼりさんっていう可能性もあったけどさ」
響「良く見てますね」
言われてみればその通りで、一式全て今日買ったばっかりなのだから、慣れている筈がない。女の目から見るとそんなことが分かるのか。恐ろしいな。
御影「ついでに、セックスには興味津々で、男に困っているようにも見えないのに経験がないようだし、女同士というところには普通に受け答えしてたのに女同士だと結婚できないよねって振った時の反応が同意しかねてるようだった。それで全部矛盾なく繋がる仮説を思いついたんだ。君は最近女になったばかりなんじゃないかって」
響「普通は思いついても無かったことにしますよそんなの。私、男の面影とか全くないでしょう」
御影「見事なまでに無いねえ。でも、僕だって女には見えなかっただろう?」
響「まあそうですけど」
御影「それで、戸籍上はまだ男のままなんでしょ?」
響「う…そうですよ」
御影「ほらね、だからやっぱり響ちゃんは僕と結婚出来る唯一の女の子なんじゃないか」
響「『出来る』と『する』は全く意味が違いますからね」
御影「おや、響ちゃん、僕のこと嫌い?」
響「嫌いとは言いませんが」
御影「だったら」
響「ちんちんのついてない人とは結婚出来ません」
御影「そんなに重要かなあ、それ」
響「極めて重要ですよ」
御影「セックスのために?」
響「そうです」
御影「僕は別にそんなの挿入れてほしいとは思わないけどなー」
響「女の身で女を抱こうと考える人が思うわけがないでしょう」
御影「まあ、そりゃあそうなんだけど。逆に、響ちゃんは元男として女の身体に興味ないの?」
響「勿論興味はありますよ。でも、ここに一つ理想の女体があるので間に合ってます」
御影「君も大概ナルシストだね。僕たち良く似てると思わないか」
響「似ていても利害が一致しなかったら意味がないと思います」
御影「つれないねえ。でもそんな言葉で僕の心を折ることは出来ないぞ。むしろ益々君を手に入れたくなってきた」
響「太宰さんのそういう前向きで強引なところ、嫌いじゃないだけに残念ですね」
御影「残念じゃないよ。僕は絶対に諦めない。あと御影と呼んでくれ」
響「どうしてこの性格で男に生まれなかったんですか、勿体無い」
御影「なるほど分かった」
響「何がですか」
御影「今の僕に足りないのはちんちんだけだ。もし僕にちんちんが生えていたら、求婚に応じてくれたということだね?」
響「真面目な顔で何を言い出すんですか」
御影「勿論真剣だ。答えてほしい」
響「はあ、そうですか」
溜息をひとつ。
響「必ずしもYesとは言いませんが、検討はしますよ。でも分かってますか? ちんちんが生えているだけじゃなくて、それで私の性欲を満足させてくれないといけないんですよ。そこまで達成出来て漸くYesなんです」
御影「えっちな子だなあ、響ちゃんは。僕はそういう子、大好きだよ。大事にする。浮気もしない」
よしよしと頭を撫でられる。私の方が年上というのはさっき教えた筈なのだが、全く気にする様子が無い。
響「それは嬉しいことですが、最大の問題はそこじゃありません。私の性欲は恐らく標準的な成人男性1人分のキャパを超えているんです。 もしセックスフレンドなら他の相手と同時に付き合って何とか処理する方法もありますが、結婚というなら一対一の付き合いにならざるを得ないでしょう。この私を一人で相手にするというのが大変なんですよ。だからって私は不倫とか面倒なのは嫌ですからね」
御影「君、無茶な要求をする割に意外と義理堅いところがあるね」
響「私は神経擦り減らすようなどろどろの人間関係を築きたくないだけです」
御影「それで、他に僕が改善すべき点はあるかい?」
響「他にって…別に無いですよ。私は別に太宰さんの性格や外見に文句があるわけじゃないんですから」
御影「それは嬉しいね、頑張り甲斐がある」
響「一体何を頑張る気ですか」
御影「水面下の努力は自慢しない主義でね」
響「一応釘を刺しておきますけど、本物の生ちんちん以外の代用は認めませんからね。射精もできないと駄目です」
御影「分かっているとも、君のちんちんにかける情熱は」
響「そう言われるとあまり嬉しくないですね」
御影「まあ、それはそれとしてどうだい、これから一緒にラブホテルでも」
響「あの、今の話聞いてましたか太宰さん?」
御影「いやいや大丈夫、逆に考えてみなよ。僕はちんちんついてないから、絶対に処女膜は破らないよ。ほら、気持ち良くしてあげるからちょっとこの御影さんに身を任せてみなさい、ね?」
などと言いつつ、御影さんは私に抱きついて身体をまさぐる。しかも公衆の面前でだ。
響「ちょ、露骨なセクハラ、を、んン、しないで、くださいよ」
御影「うんうん、ちゃんと女の子の身体になってるね。大丈夫、響ちゃんが嫌がることはしないよ。だからしようよ、ねえ、返事聞かせて」
響「い、嫌だと、言ったら?」
御影「言わせない」
響「んっ、んンー!?」
いきなり唇で口を塞がれた。しかも舌を入れられた。同時に舌を吸い出され、私の舌が御影さんの口に、御影さんの舌が私の口に入って根元から絡み合う。
まずい、これは思考が停まる。
御影「んちゅる…好きだよ響。本気なんだ。君しかいない。愛してる。…ちゅううっ」
響「れる、ず、ずるいです、よ、は、んちゅう」
御影「分かってる。でも止まらない。君も強引なのは好きだろう?」
言ってくれるじゃないか。しかし出来れば女は殴りたくない。
響「と、時と場合に、よりますよ。それより…約束、守ってくれる、んン、でしょうね」
御影「勿論だ。君の身体は綺麗なままにする。約束だ」
響「…だったら、好きにすればいい、ですよ」
御影「よし、じゃあ行きましょうか姫」
響「姫って…え、あの、ええ!? お、降ろしてください!」
漸くセクハラをやめたかと思ったら、手慣れた感じでお姫様だっこされてしまった。これは恥ずかしい。
御影「照れるな照れるなー。大体、膝がくがくで歩けもしないだろう?」
響「写真! 写真撮られてる!」
見た目美男美女カップルというだけでも目立つのに、それがお姫様だっこで悠々と歩いているものだから、それを目撃した人たちが次々に携帯電話を取り出して写真を撮り始めたのだ。実際は百合カップルだけどな。
御影「写真が嫌だったらしっかり抱きついてるといいよ」
響「うぅ…」
この人は何でそんな平然としてるんだ。まさか慣れてるのかお姫様だっこに。ああ、元演劇部の王子様だから慣れてるのか。
しかしこの街頭撮影責めはまだ序の口で、結局その後私はお姫様だっこでラブホテルに連れ込まれるところまで道行く人々に注目されてしまうのだった。
それにすら動じない御影さんは、いくら何でも場馴れしすぎだろう。
そういったいきさつで、抵抗むなしく近場のラブホテルに連れ込まれた。
いい加減もう身体は動くようになっていたので降ろしていいと言ったのだが、御影さんは有無を言わせずベッドの上まで運んでくれた。男役(タチ)の意地だろうか。
実は私はラブホというところに初めて来た。部屋には噂に聞く回転ベッドというやつがあるのだろうかと思っていたが、案外普通のダブルベッドだった。ベッドの上に寝かされて、風呂はどうするのかと思ったら速攻で脱がされた。
響「いきなりですか」
御影「うん、響が可愛いから我慢できない」
慣れた手つきで靴下まで残さず脱がされる。しかも脱がしながらキスをしたり胸を触ったりするあたり、芸達者だ。まったく女にしておくのが惜しい。いや、女じゃなかったら処女保全の約束なんか守れるはずがないから、今回はやっぱり女で良かったのだろうか。
御影「やっぱりだ。いい女の匂いがする」
響「何言ってるんですか」
御影「愛してるってことさ」
響「今日会ったばっかりですよ」
御影「今日会ったばかりでもうここにいるんだ。時間なんて関係ない」
響「一体どこからそんな台詞が出てくるんです?」
御影「君に夢中の、この胸の奥から」
私の手があのときのように御影さんの胸に触れる。柔らかい。心臓の鼓動が伝わってくる。
私が慈しむような愛撫と甘い言葉に気を取られているうちに、いつの間にか御影さん自身も脱いでいた。無駄なく引き締まった体で、胸は大きくないが、確かに女の体つきだ。
響「女の人だ」
ぽつりとそんな感想が漏れた。
御影「そうだよ響、今から君はその女に抱かれるんだ」
響「緊張します」
御影「大丈夫、僕に任せているといい」
響「お手並み拝見です…ん、うン、ちゅる」
後ろから肩を抱かれ、顎に指を添えられて肩越しに恋人同士のキスをされる。
御影さんの空いた左手は私のおなかを撫でている。これはこれで気持ちいいが、どちらかというと安心するタイプの気持ちよさだ。
おなかから南下して下腹部に到達したかと思えばそこで止まり、北上してみぞおちを越えたかと思えば胸には触れずに止まる。かと思えば今度は脇腹、大腿部、内腿を撫でる。
響「んふ、何ですか、私が初心者だから、手加減、してるん、ですか」
御影「そうでもないよ、ほら」
響「いひゃ!?」
すっかり油断していたら、右手で乳首を摘まれた。
御影「分かる? まだ触ってない左側も膨らんでるの」
彼女の言う通り、私の両乳首は触られていないうちから全開で勃起していた。
響「あれ…なん、で?」
御影「最初に触った時の反応で分かったんだ。響はすごく感じやすい。だから、こう責めるのもいいかなって。気に入ってくれたかな?」
響「わ、悪くないおもてなし…ですね」
御影「お褒めに与り光栄ですよ、姫」
響「だから姫って、んんっ」
再び唇を奪われ、胸を強めに揉みしだかれる。
私の強がりへの切り返しに過ぎないと分かってはいるが、まさかのお姫様プレイ続行に少々うろたえる。しかし、これがどうも思ったほど悪くない。恐らくは御影さんの演技力、雰囲気を作る力のせいだ。そういったメルヘン的憧れがほぼ皆無の私をその気にさせるのだから、大したものだ。
御影さんは両手で私の胸を余すところなく撫でまわし、時に爪を立て、強い反応見られる箇所、触り方を探っていく。
そうして一通り調べ尽くした後、手の動きが何か確信のあるものに変わった。
響「こ、これ…んちゅ、あはァ、すご、んン」
私を後ろから抱き締めて、肩越しにキスをしたまま、両手で乳房を鷲掴みにして、絞るような動きでこれを揉みつつ、指先で乳首を嬲る。
私が何か喋ろうと口を離しても、御影さんの口が追いかけてきて舌を絡められ、また口を塞がれる。両手が胸を掴んでいるから顔を背ければ簡単に脱出できるはずなのだが、そうすると器用に舌を引っ張られて、簡単に元の位置に戻ってしまう。ちょっと何が起こっているのか分からないレベルの技だ。
御影さんは何を言うでもなく一心不乱に私の身体を責め続ける。
響「ん、ふぅ、ン、んちゅ、ンン、ん、ん、ひ、うぅ、んンーっ!!」
さしたる抵抗をする隙もなく、いとも容易く頂へと押し上げられてしまった。いや、抵抗する意味は特に無いのだが、それにしても何も出来ていない。
御影「ンふ、簡単にイっちゃったね、響。かーわいい♪」
身体を器用にひっくり返され、御影さんの胸へ抱き入れられる。今度は向かい合って抱き合い、頭を撫でられる。
御影「好きだよ響、愛してる」
響「…何度も言わなくて、んぅ、いい、ですよ」
御影「駄目だよ、君はまだ僕がどれだけ君を愛しているのか分かっていない」
響「分かったところで、私の返答は変わりません」
御影「どうかな」
実のところ、やはり悪い気はしていない。相手が女というのは勿論残念なのだが、私は今までこんな風に人に愛されたことも、愛したこともない。御影さんの演技力を考えると何処から何処まで信用していいものかというところもあるのに、その言葉を積極的に信じてしまいたくなる。
挿入しなければセックスじゃないとはいえ、軽々しく誘いに乗ったのは失敗だった。
こうして御影さんにまんまと乗せられているのが癪だと思っているのではない。
私はむしろこの人とセックスをしたいと思い始めている。なのに、それは願っても叶わないのだ。決して叶わない希望を持つことほど悲しいことは無い。
御影「じゃ、続きと行こうか」
今度はベッドに仰向けに押し倒される。どうするのかと思ったら、そのまま御影さんは下腹部の方へするすると移動していって、私の両脚を割って大股開きに固定した。
御影さんの頭は今や私の股間の真正面にこんにちわしている。真剣な顔でまじまじと見られている。
御影「響ちゃん、これは何と言うか…見事な無毛おまんこだね」
響「そんなところで急に素に戻らないでください」
御影「いや、最高に似合ってる。可愛いよ」
響「んっ」
御影さんの舌が私の敏感な淫裂を割り開いて舐め上げる。大陰唇の内側、小陰唇の表面も綺麗に舐め上げて、更にその内側に入っていく。膣口に侵入し、更に処女膜をなぞっていく。
御影「れろ、んー、うん、れる、ちゅぷ、うん…なるほど」
響「何を納得してるんですか」
御影「響の処女膜は綺麗な星型だね。五芒星型」
響「どう反応すればいいのか対処に困るんですが」
御影「みんな可愛らしく真っ赤になるよ?」
響「うわ、みんなに言ってるんですか。すごいなこの人」
御影「だから勢いで頭叩かれても大丈夫なように舌をガードしておくんだけどね。響は暴れたりしなくて素直だね。いい子いい子」
響「ただ唖然としてるだけです」
御影「まあいいや、始めるよ」
響「切り替え早…あはっ!」
宣言するや否や、御影さんの口が私の下の口に完全に吸いついた。負圧を維持しながら膣前庭を舐め、膣の入り口で円を描き、処女膜を容赦なく舐めまわす。
処女膜自体は大して気持ちいいわけではないが、処女膜を優しく執拗に舐められているという事実に頭のどこかが興奮を訴えている。
更に御影さんはグラスを傾けるように私の腰をコントロールし、何をするのかと思ったら、既に大量に分泌されている私の愛液を飲み始めた。
響「え、そんな、む、無理しなくても」
御影「うん、おいし」
響「そんなわけないでしょう」
御影「愛する人の愛液を美味しいと言えない奴は女を抱いちゃいけない、と僕は思うわけだ」
響「単なる強がりですか」
御影「いや、本当に愛していれば美味しくなるものだよ。それに、僕くらいになると愛液の味でお互いどのくらい心が通じ合っているかが分かる」
響「そんな馬鹿な」
御影「響は今、僕に惹かれて、セックスしたいと思ってる。いや、程度としては漸く思い始めたところだね。でも、出来ないからもどかしく思ってる」
響「ええ!?」
御影「ほら当たった」
響「あう、あう」
御影さんは楽しそうにくすくすと笑っている。
ええと、何この人、超能力者?
御影「なーんてね」
響「…はい?」
御影「嘘だよー。ネタばらしするとね、響の身体の反応がそんな感じだったんだ。僕の愛撫を嫌がってなくて、おまんこがおちんちん欲しがってるけど、出来なくてもどかしいって」
響「な、なるほど」
理屈は納得したけど、その観察眼怖いわ。これは流石に女の視点云々じゃなくて、御影さんだけだろう?
御影「響ちゃん真っ赤になっちゃってカワイー!」
響「あ、ン、そ、こはぁ!」
今度はクリトリスを執拗に舐め上げられる。流石に性感を高めるためだけにある器官と言われるだけあり、強烈な刺激が脳天を直撃してがくがくと揺さぶる。
響「ひ、いひゃ! ら、だめ、れす、うぅ、あはあ!」
どうすることもできずに悶えていたら、御影さんの舌がぴたりと止まった。
響「とまっ…た…」
御影「なんか違うなあ、ここは嫌がってる?」
響「その、そこは…ちんちんと同じ種類の刺激なので…ちょっと微妙な気分に」
御影「ああ、なるほどねー。わかるわかる」
分かってもらえるのは嬉しいけど、何で分かるんだろうなこの人。不思議だ。
御影「よし、特別に膣内でイかせてあげよう」
言うなり、御影さんは私の身体をひっくり返してうつ伏せにした。膝を立てて、尻を突き出した体勢だ。
この体勢でも、処女膜があるから舌は奥まで届かない。だから指でいじるのかと思ったら、御影さんはおもむろに両手で私の腰を掴んだ。
ぱんっ。
綺麗な破裂音が部屋に響いた。御影さんが私の股間に腰を打ちつけた音だ。
響「え、これ、何…」
何か、挿入ってる…??
膣内が奥まで押し拡げられた感覚に戦慄する。
いやいやそんな馬鹿な。女同士だぞ。何が起きた。
御影「『僕のおちんちん』で響をイかせてあげる。いっぱい気持ち良くなって」
響「え、それって、な、あ、あん、あは、あん、ああ、ああん」
質問の暇を許さない御影さんの怒涛の責めが始まる。わけもわからないまま、私はその快感に翻弄されていく。
何だ、何だこれ。何ぞこれ。御影さん、いつの間にかペニスバンドでも装着してたのか?
今更振り向いても、この体勢では結合部は見えない。
どこだ、どこからだ。
御影さんの股間から送り込まれる快楽が頭の芯を痺れさせて、なかなか考えがまとまらない。
それでもゆっくりと状況を遡って、そこで気付いた。
考えてみれば、状況を最初からほぼ完全にコントロールされていて、御影さんの股間を直視した覚えが全く無い。いつ着けていたとしても、それに私が気付いた筈がない。
でも、何だろう。約束を破られているというのに殆ど嫌な気がしない。一度ふっきれてしまえば割とどうでもいいことだったような気もする。むしろいいじゃないか、御影さんなら。
考えを巡らせている間にも、私の身体は勝手に盛り上がっていく。絶頂は近い。
響「あん、あん、あン、み、御影さん、これ、いい、すご、く、イひ!」
御影「はあ、はあ、やっと、名前で、呼んでくれたね、響」
響「御影さん…御影さん、いく、私、イ、イくう!!」
御影「響っ…!!」
ずぱんっ、という一際大きい破裂音とともに、私は絶頂を迎えた。
それと同時にぐらりと御影さんの身体が傾いで、痙攣している私の背中にゆっくりと倒れ込んできた。
響「うわ、御影さん?」
御影「ごめ、ちょっと…限界」
御影さんはすぐに寝返りを打って私の隣で仰向けになると、私を抱き寄せた。
御影「どう、気持ち良かった?」
響「はい、その…かなり」
御影「良かった、頑張った甲斐があったよ」
響「あの、それと約束破ったことは…気にしてませんから」
御影「あれ、僕、何か約束破った?」
響「…は?」
御影「君の処女膜に傷はつけてないはずだよ」
響「あれ、本当に…ええ、何で? どうして?」
自分の手で確認してみたところ、私の処女膜は健在だ。当初の通り、綺麗な星型の穴だけが空いている。
御影「だってほら、僕ちんちん生えてないし。道具も使ってないよ」
御影さんが指さす彼女の股間には、確かに何も突起物がない。強いて言えば若干大きめのクリトリスがあるくらいだ。
響「益々意味が分からないんですが。確かに何か挿入れられた感触があったのに」
御影「試行錯誤を繰り返して会得した僕の秘奥義さ。一般的には『エアセックス』と言うかもね」
エアセックス…だと…!?
御影「説明してあげよう、エアセックスとは腰の激しい運動により対象の膣内に圧縮空気を送り込み、空気が膣を押し拡げることにより疑似的なセックスとしての感覚を相手に送り込むものである。利用の際には後背位で相手の視界を奪うと疑似セックスとしての効果がより一層」
響「いや分かりました、御影さんのテクニックが常識外れにすごいのは分かりましたから」
エアセックスも極めると女をイかせることが出来るのか、思わず自分の常識を疑うな、これは。
御影「いや、でもねー。これで気持ち良くさせるのは今までも出来たんだけど、ちゃんとイってくれたのは響が初めてなんだよ。感度の高さと好みの傾向、それから下つき気味の膣の開口角度が全部好条件だったから、ぎりぎりいけるんじゃないかって思ったけどね」
響「そうですか」
それにしてもまさか空気でイかされてしまうとはショックだ。御影さんの「僕のおちんちん」宣言でその気になってしまったとはいえ、圧縮空気を固形物と誤認してしまうとは、一体私の身体はどうなっているのだ。恥ずかしい。
しかしまあ、結果として処女膜はそのままだし、何事もなくて良かった…のか?
なんか一人でふっきれたつもりになってたのが馬鹿みたいだ。
御影「それで響に一つお願いがあるんだけどさ」
響「何ですか…あ、そういえば御影さんはまだイってないんじゃ」
御影「いや、1回はイったよ、最後ので。それとは別の話で」
響「はい」
御影さんが表情を引き締めたので、私も真面目に聞くことにする。
御影「来月…いや、今月の終わりまでに、全ての問題を整理して改めて君にプロポーズしたい。それまで僕を待っていてくれないか」
響「それは…あの、問題の整理というのは?」
御影「それはまだ言えない。問題が本当に完全に解決できるのか、現時点では確証が無い。でも僕は君が待っていてさえくれれば乗り越えられると思っている。僕にとっては一大決心なんだ。待ってくれとは言っても、誰ともセックスするななんてことは言わない。僕がプロポーズする時点で他の誰のものにもなっていない、それだけでいい。勿論、期限が過ぎたら忘れてくれていい」
響「む…」
まず、私は御影さんのことが嫌いではない。いや、雰囲気によっては積極的に抱かれたいと思ってしまう程度には好きなのだろう。
だが、プロポーズを受けるかどうかはまた別の問題だ。
御影さんがおよそ常識外れのテクニックを持っているとはいえ、物理的にちんちんが生えていないという事実は覆せない。仮に外科手術で何とかしても、射精などは出来るようにならないはずだ。
一時の想いで気軽に結婚を承諾しても、その後御影さんを失望させるのはやはり嫌だ。
しかし、御影さんは必死だ。たった一つの約束を私と交わすために、無理をして譲歩しているのが分かる。出来れば一度だって私を他の誰かに抱かせたくなどないはずだ。それでもきっとこの人は約束を守るために全力で努力するのだろう。
響「私が御影さんのプロポーズを待ったとしても、その返答がイエスでない可能性もありますよ。それでもいいんですか?」
御影「それで構わない」
響「そうですか」
私の返答は…
▼我慢して月末まで待つ(月末まで日付進行をショートカットする)
▼他の可能性を模索しながら月末まで待つ(条件を呑んでプレイを続ける)
▼そんな隠し事だらけの約束は出来ない(一旦白紙にしてプレイを続ける)
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